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38、ツーフェイスの苦悩


(復讐……か)


マティスフィアの言葉を反芻しながらシャルロッテは寝台を寝転がる。

お騒がせな王宮主従組が馬車に乗って帰ったあと、シャルロッテは半ば担がれるようにして帰宅した。すぐに湯浴みへ連れていかれしっかり身体を温められたあと、私室へ放り込まれれば疲れからかすぐに寝落ちてしまった。

目を覚ましたころにはもう日は落ちきり月が高く上っていた。家族や侍女たちが疲れて眠っていたシャルロッテを気遣って起こさないでくれたのだろう。

妙な時間に寝てしまうと夜中に寝付けなくなる。とはいえシャルロッテが起きたとわかればエメを筆頭に使用人たちが続々と起き出してしまうだろう。朝から晩まで働いている彼らの夜まで、奪いたくはない。


そういう訳で、私室から出ずに暇な夜を過ごしているわけだ。前世の世界と違い、ここは照明が軒並み贅沢品。侯爵令嬢であるシャルロッテの部屋にはもちろん燭台があるが、何もしないのに使うのは気が引けた。

寝台を降り、バルコニーへと繋がる窓を開く。まだ少し肌寒い夜風を感じながら空に輝く満月を見上げた。癪に障るほど綺麗な月だ。神話によれば月は全てを見通しているという。そんな与太を信じてしまいそうなほど完璧な満月だった。


(母を殺した者共への復讐……マティルダ妃の死は、暗殺だった?)


マティスフィアの言葉を信じるのであれば、王が最も愛した側室は暗殺されたことになる。もちろん「殺した」というのは比喩で、例えば流行病の処置が遅かっただとか、後宮内で虐めがあったのだとか、様々な理由が考えられる。だがマティスフィアは明確に「者共」と言った。つまり複数人、そしてマティスフィアが王になることで復讐となりうる人々……。


(そんなの、ドーレス公爵家しか思いつかない)


乙女ゲームで、あれほどマティスフィアがジュリアンたちを敵視していた理由がそれだろう。最愛の母を殺した一族に連なる者であり、その事を知らずにのうのうと過ごしている存在への憎悪は計り知れない。なるほど、悪役らしい動機ではないか。引っかかる所がないわけではないが、筋は通る。


(前世の時から謎だったマティスフィア様の動機……私ならその真偽を探れるだろうか)


あまりの身勝手さにシャルロッテは自嘲の笑みを浮かべた。なんという贔屓、なんという裏切り。ジュリアンの婚約者でありながら第二王子に加担しようとしているのだ。国や侯爵家への影響も考えずに。

自分の望みのまま行動する様はまさに自分勝手な悪役令嬢そのものではないか。


(……お父様とお母様、クロードにまで迷惑をかける。侯爵令嬢シャルロッテは、感情で動くことは許されない)


そう、侯爵令嬢である限りは____。


(…………)


マティスフィアへの手紙に今日の満月の事を書こう。変わらぬ調子で言葉を綴ろう。せめて、シャルルは何も変わらず友であり続けよう。いつだって自分は味方であると____そう伝えることくらいは許されると、思いたかった。


ここで一度、幼少期編は一区切りとなります。


最近更新が滞っていたのもあり、ぼちぼち更新頻度を減らそうと思っています……。とりあえず来週は更新しますので、どうぞよろしくお願いいたします。<(_ _)>

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