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1、お決まりの記憶覚醒

シャルロッテ・フリーレン。氷華のような美貌を持ち、視線が合うだけで男を虜にするという由緒正しきフリーレン候爵家の一人娘だ。才能にも恵まれ、幼い頃から才色兼備と持て囃されたシャルロッテは、自分以外を全て駒として見るような腹黒令嬢へと育ち、主人公の最大の敵として立ちはだかる____はずだった。


「お嬢様!!!」

「……んあ?」


シャルロッテが目覚めたのは自室のベッドの上だった。脇で年配の乳母がシャルロッテを呼んでおり、周りには多くのメイドが忙しなく働いている。


「……ここ、は……」

「もちろん、フリーレン家のお嬢様のお部屋でございます! 良かった……お目覚めになられたのですね……!」


乳母はその瞳に涙を潤ませながらシャルロッテの手を握りおいおいと声を上げる。周りのメイドたちもシャルロッテが起きたのに気がついたのか手を止め歓声を上げたり誰かを呼びに行こうと走り出す者までいた。

しかし、当の本人シャルロッテはそれどころでは無かった。様々な疑問とこの理解し難い状況に、混乱状態だったのだ。


(ど、どうして“私”がシャルロッテと呼ばれている____?!)



何という神の悪戯か、シャルロッテは頭を打った衝撃で前世の記憶を思い出してしまった。記憶にある“私”は20歳の大学生で、最期は不慮の転落事故。思えば早すぎる人生からの退場である。

そして現世……シャルロッテ・フリーレンのことを“私”は知っていた。前世で唯一熱中していた乙女ゲーム『夜色の魔法と彼の薔薇』。魔法の存在する近世風ファンタジー世界の魔法学園で、主人公ことヒロインは攻略対象のイケメンと真実の愛を育む、王道恋愛シミュレーションゲームである。

シャルロッテ・フリーレンはこのゲームに登場するキャラクターだ。メイン攻略対象、第一王子ジュリアン・ドーレス・オルディアの婚約者として。


(……うっわ、間違いねぇな)


その外見とキャラクター設定にそぐわない言葉使いでシャルロッテは思案する。美しく磨かれた手鏡には眉間に似つかわしくない皺を寄せたシャルロッテが映っている。


(よりによってシャルロッテか……)


前世の記憶を思い出したシャルロッテだが、もちろん現世の記憶もきちんと刻まれている。……後々プレイヤーに“ラスボス令嬢”とまで呼ばれる腹黒へ育つシャルロッテだが、幼い頃はまだ純粋だったらしい。純粋に我儘に、甘やかされて育っていた。


さて、そんなシャルロッテはただいま修羅場の真っ只中。つまり……


「良かったわぁぁシャルロッテェ!!」

「お前に何かあったらと、私は、私たちは……!!」


娘を溺愛する両親に抱きしめられ窒息しそうになっていた。

シャルロッテは馬車での移動中に盗賊団の襲撃に遭っていた。護衛していた騎士のお陰で攫われることは無かったが、頭を強く打ち丸二日寝たきりだったのだ。


「お、お父様、お母様……苦しい……」

「今あの憎き盗賊団を殲滅しに騎士団が向かっているからな! 役立たず共め、盗賊団の殲滅が終わり次第護衛した奴らを罰してやる」


父親、フィリップの八つ当たりに近い一言にシャルロッテは焦った。彼女の記憶では護衛の騎士たちは盗賊団に数で負けながらも立派にシャルロッテを守りきってくれていたのだから。


「お父さま、ちがうわ。みんなは私を守ってくれたのよ」


シャルロッテの弁明にフィリップはおろか、控えていたメイドや侍女たちも目をまるくした。我儘放題に振る舞っていたシャルロッテならば、彼の八つ当たりに賛同するだろうと思われていたのだ。

シャルロッテは内心やってしまったと顔を顰めつつ、だが今更言葉は引っ込められない。それに、“私”としての記憶が目覚めてしまったシャルロッテは、以前のように我儘を言えるわけがなかった。


「むしろ、ありがとうって言いたいの。ねぇお母さま。こういう時はありがとうって言うのよね?」


敢えてきょとんとした顔で、不思議そうに母親ルイーゼへ視線を向ける。フィリップやメイドたちと同じように、驚愕で硬直していたルイーゼは目が覚めたようにゆっくり瞬きをした。そして微笑み、シャルロッテの頭を撫でていく。

シャルロッテの外見は母親譲りだ。艶やかな銀髪とサファイアのような澄んだ瞳は、見る者にため息をつかせる。


「そうね、シャルロッテ。彼らが帰ってきたら、一緒にお礼を言いに行きましょうね」

「はい!」


硬直している間に話が進み、母子2人の世界になってしまった雰囲気に、フィリップはオロオロと妻子を見比べ、少し寂しそうに眉を下げるのだった。


趣味で書いてたら結構な量貯まったので投稿しようかなって(出来心)

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