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第2話 アキラ=あきら

 さて、ボンクラーズのリーダーこと紋章術師について。

 敵の弱体を得意とする支援系の魔法職だけど、攻撃魔法は一切覚えないし武器も杖しか装備できなくて、身体能力も低い。


 矛能力に関してはぶっちぎりの全ジョブ最下位だ。

 回復役(ヒーラー)僧侶(クレリック)でもハンマー装備出来たり、わりと殴れる。

 杖くらいしか持てない他の物理攻撃苦手ジョブには、もれなく攻撃魔法があるし。

 なら支援能力が突き抜けてるのかといえば、そうでもない。

 同じ支援系の代表格の吟遊詩人は、味方の強化も敵の弱体もできる。

 しかも吟遊詩人は弓も装備出来て、物理攻撃もそれなり。


 紋章術師は敵の弱体のみで、しかもMPを食う。詩人の呪歌はMPがいらない。

 攻撃能力は最下位。得意の支援は二番手以下。

 ソロ戦闘は最弱だし、PT戦闘でも役割が被る上位互換がいる。

 紋章術師のスペックはこんな感じだ。足りてない感が半端ない。

 納得のジョブ人口最下位。ボンクラーズの筆頭だ。


 入学後すぐのオリエンテーションに、二年の先輩が来ていた。

 そしてジョブ間のヒエラルキーについても軽く教えてくれた。

 俺としては迷うことなく、あえてこのボンクラーズのリーダーをチョイスした。

 俺の手でこいつを魔改造して輝かせてみせるぜ! ってさ。


 やっぱゲームは楽しまないと意味がない。

 自分のプレイスタイルは曲げんぞ!

 本当ならアキラと一緒にこいつをどうやってモノにするか、あーでもないこーでもないって試行錯誤したかったな。


「よくわからないけど、期待していていいってこと?」

「まあ、もうちょっと待ってくれると……」


 レベルはアキラを待つために出来るだけ上げていない。

 が、その分試行錯誤する時間は沢山あった。

 紋章術師の魔改造のメドは、実はもうある程度は立っている。

 いつでも実践段階に移れるっちゃ移れるんだが――


「お好きにどぞどぞ。けどあたしらでミッションクリアして、出番なくなっても知らんよーってコトでよろしく」

「あーうん。攻略は順調なのか?」

「割といい感じじゃん? 今十層中の八層攻略中って感じ」

「他のクラスと比べても、トップ集団には入るくらいの進捗じゃないかしら」


 よかった。だったらもうちょっとアキラを待っててもいいな。

 なんて思っていると、教室の扉が開いて担任の先生がやって来た。


「はいはーい。ゲームバカども、おっはよー」


 めちゃめちゃ軽くてフランクな感じ。恰好は魔法学校の女教師という雰囲気。

 うちの担任の仲田先生だ。まだ今年で二十四歳って言ってた。

 明るい美人のお姉さんって表現がぴったりだ。元々うちの学校の一期生らしい。


「今日もめんどいけどまず勉強――の前にお知らせでーす」


 ほほう、何だろ? 仲田先生はにこにこしながら続ける。


「今日から追加キャラ一名入りまーす。クラス対抗ミッションも佳境に近づいてきちゃってるけど、これからもクラス対抗イベントはあるし、みんな仲良くしてあげてねー。じゃあ青柳さん、入って入ってー。はいみんな拍手っ!」


 ぱちぱちぱちぱち。って事で教室に現れたのは、一言で現すと美少女である。

 サラッサラのロングヘアに、アイドル顔負けの滅茶苦茶可愛らしい顔立ち。

 そして小動物系の可愛らしさに反して、胸が大きいっぽいように見える。

 なんつーか、非の打ち所がないというのはこの事か……


「青柳あきらです。よろしくお願いします」


 現れた美少女は少し緊張気味にそう笑顔を見せた。

 その光景だけなら、何てことない。

 しいていえばなんかほっこりするとかそういう感じだけど――


「えええええぇっ!?」


 その場で俺だけ、びっくりして声を上げてた。

 アオヤギアキラ……ってそれ、俺のフレのアキラのフルネームじゃん!

 まさかアキラ……!? いやそれともすんごい偶然で別人なのか!?


「んー高代君、どしたのかな?」

「あ、いや……知り合いと同じ名前だったんで、びっくりして」

「とか言って、さっそくこの美少女とお近づきになろうとしてるんじゃないのー? 意外と手が早いわねー、君。まあ先生は止めませんけどねー」


 あからさまにニヤニヤしている。教師っていうかその辺のおばちゃんみたいだ。

 教室にくすくす笑いが起きる。くそう、なんか恥ずかしい気がするぜ。


「まあいいでしょ、んじゃ高代君に免じて青柳さんの席は高代君の隣! ちょうど空いてるしはいどうぞ青柳さん」


 促されて青柳さんは俺の隣の席に。

 なんか悪いから謝っといた方がいいか。でもちょっと気まずい。

 けど、俺が何か言う前に向こうからこっちを向いて話しかけてきた。


「あの、高代……蓮くん?」

「? なんで名前知って――ってやっぱ一緒にネトゲやりまくってたフレのアキラ!?」


 俺の返事を聞いて、青柳さんはめちゃくちゃ嬉しそうに笑った。


「わああっ! やっぱレン君だあ! やったああっ! いきなりビンゴ!」


 よっぽど嬉しかったのか、がばっと抱き着かれた。

 家族親族以外の女の子に抱き着かれた経験なんてないから、ゲーム内とはいえすんごいびっくりしてドキドキしたね、正直。


「おおおおっ!? 何その超速展開!? 最近の若い子はスピード感が凄いわね!」


 先生が歓声上げてた。クラス中もびっくりしてざわざわしてる。

 それに気づいて青柳さんが恥ずかしそうに謝ってた。


「あ、ご、ごめんなさい……ずっと一緒にゲームやってたフレだったんです。初めて会ったから嬉しくなっちゃって――」


 っていうか俺、一緒にネトゲやっててアキラが男だって信じて疑ってなかった。

 だってガチムチの獣人男キャラだし、いつも。獣人選べなきゃおっさんだし。

 とはいえ数年来のフレなのに気が付かんとは……


 俺って実は鈍いのか……マジで死ぬほどびっくりなんだが。

 これまでのアキラとのプレイを思い出し――こんな美少女だって知ってれば、それなりの態度ってもんがあったような気がする。


 何ら遠慮なしに、言いたいこと言ってやりたいことに付き合わせてたぞ。

 平静を取り戻した教室で先生が朝のホームルームを進める中で、青柳さんはこっそりこっちを向いて笑いかけてくる。


「ということでわたし、実は女の子でしたっ。びっくりした、蓮くん?」

「ああ。マジで死ぬほど……」

「だよねえ。絶対気づいてないなって思ってたよお」

「ははは。しかし青柳さんが女の子だったとは……」


 って言うと、ちょっとほっぺたをむくれさせて不満げな顔をされた。


「あーそれなんか他人行儀。わたしと蓮くんの仲じゃん、あきらでいいよ?」

「ん? そ、そうか? んじゃあ――あきら」

「うんうん」


 にこにこって小動物系の笑顔。

 ああこういう切り替え早くてテンションがコロコロ変わる感じはアキラっぽいかも。

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