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第17話 大ボスを少人数縛りで攻略しよう

 アイアン・ジェミニ合宿を三日、それから九層攻略に一日をかけた四日後。

 俺達はとうとう先行組に追いつくことができた。

 たっぷりゲットした『アイアンインゴット』で、仕込み杖の構成材料を『アイアンスタッフ』と『アイアンソード』に置き換え出来た。


 武器のバージョンアップはいつかはやらないといけない儀式だから、レベル上げと同時に出来たのは大きい。すっかり飽きたあきらが、もはや無言でアイアン・ジェミニを殴り倒していたのは少し怖かったが。

 まあ一月遅れが十日くらいで追いつけたのだから、頑張ったほうだ。


 はじめにあきらが『スカイフォール』をゲットしていたのと、俺が単発大ダメージ仕様なのが大きかった。少人数で強めの敵を狩れるのが大きい。

 さて最後の十層だけど、ここは前田さんや矢野さんに聞くところ、マップ中央に結界フィールドがあって、そこにトリニスティ島の大ボスがいる。


 ボスに挑むには、外に配置されてるモンスターを狩って、そのドロップアイテムから結界を中和する『光の鈴』を合成して用意する必要がある。

 先行組は今アイテム集めの最中で、そろそろボスに挑戦できそうだと言っていた。

 アイテム一個でクラス全員バトルに挑めるから、俺達もすぐに先行組の力になれる。


 今日から合流できると、俺とあきらは楽しみにしていたけど――

 朝、ログインするとクラスの雰囲気は異様に暗かった。

 いつもわいわい楽しそうな雰囲気なんだが。どうしたんだ?


「あ、おはよー蓮君」

「おはようあきら。なんか教室の雰囲気がおかしいけど、何だこれ?」

「わたしもわかんない。さっき来たらこんな感じだったよお」

「そうなのか?」


 で、クラスのみんなを見渡していて気がついた。

 簡易ステータスに、みんな衰弱のアイコンがついている。

 これは全ステータスが大幅に減る状態異常だ。


 具体的にはHPMP含め、五分の一になってしまう。

 蘇生魔法で復活した直後などにこの状態になる。

 上級の蘇生魔法には衰弱時間ゼロで復活可能なものもある。

 が、今回はそうではないらしい。


「みんな衰弱だねー。一気に全員ってどういうことかなあ?」


 あきらも首を捻っている。

 そこに、矢野さんがログインしてきた。

 彼女には変なアイコンはついていないようで、普通だった。

 そして俺達と同じように不思議がり、俺に聞いてくる。


「あれ~? ねえ高代ー。これどーいうコト? みんなガチで衰弱してるし」

「いや、俺も何も分からん」

「ふーん? あっことみー来た。ことみー!」


 前田さんには衰弱アイコンがついているみたいだった。


「ああ、おはよう優奈」

「ねえねえことみー。みんな衰弱してんじゃん? 何かあった?」

「ええ。昨日みんなで『光の鈴』のためのアイテム集めをしていたんだけど、その時何か弾みたいなのが飛んできて、それが爆発して煙に巻かれたらみんな衰弱になって……」

「昨日? あたし用事で行けんかったけど……それがまだ治ってないって?」

「ええ。GMコールして先生に聞いてみたら、それが『超重弱化の秘石』ってアイテムだったみたい。衰弱の時間が凄く長いの」

「ほかのクラスからの妨害って感じ? 効果はどんなもん?」

「自然回復に48時間だって」

「48時間!? 何だよそのぶっ飛んだ長さは!?」


 聞いていた俺もびっくりして声を上げてしまった。

 恐ろしい嫌がらせアイテムだな。


「そもそもトリニスティ島までで手に入るアイテムじゃないって先生も言ってたわ。先に進めば解除の方法もあるけど、今の段階じゃ自然回復を待つしかないって」

「ええぇぇ? 誰だしそんなえげつない事やらかすやつ!」

「断定はできないけど……近くにB組のPTがいたわ。もしかしたら――」

「でも前田さん、向こうだってそんなの手に入れられないんだよねえ?」

「もちろん青柳さんの言うとおりのはずだけど、上級生から貰ってやった可能性はあるって……何か不正があったのならGM権限で解除できるけど、調査の結果が出るまではこのままだって。調査にも結構時間はかかるらしいわ」

「ねね、ことみー。でもそれ待ってたら他のクラスが先にボス倒して、ミッションクリアしてそうじゃん? どうするん?」

「みんなが衰弱してるのにボスと戦っても勝ち目はないし。待つしかないと思う」


 みんなが沈んでいるのは、これが分かっているからなんだろう。

 せっかくトップ目指して頑張ってきたのに、これはテンション下がるよな。


「みんなあきらめモード入ってるから、空気がお通夜ワケか。なるー。でもぶっちゃけめっちゃ腹立つんですけど。せっかくいい感じで進んできたっつーのにぃ! きぃー!」

「本当に悔しいわね……私も攻略リーダーを任された以上、何とかみんなが喜べる結果を出したかったわ。ごめんね、優奈」

「いや、ことみーは悪くないっしょ。よく頑張ってたと思うし。よしよし」


 と矢野さんが前田さんの頭を撫でて慰めていた。


「ふふっ。まさか同じ高校になって、こうやって優奈に慰められてるなんてね」

「あ、前から知り合いなんだ?」


 あきらがそこに食いついていた。


「そそ。実はおな中だったりー」

「まあ、中学校の時にはそんなに接点が無かったんだけど」


 委員長タイプとギャルは同じ学校にいても仲良くなったりはせんわな。

 それはそうと、俺から見ても攻略リーダーの前田さんは頑張っていたと思う。

 レベルが遅れている俺を心配してくれたり、攻略本用意してくれたりさ。

 俺としてはそのお礼も兼ねて、ここで困ってるのを何とか助けてあげたい。

 選ばれしネトゲエリートの力、ここで見せずにいつ見せるって事だ。


「「まだ諦めるような時間じゃないっ!」」


 俺とあきらの発言がモロ被りした。

 顔を見合わせて、それからあきらがどうぞってしてくれた。


「まだ俺とあきらと矢野さんは無事だろ。俺達だけでやれるか試してみようぜ!」

「えぇ!? 三人だけで!?」

「少人数縛りと思えばいいだけだろ。俺もあきらも局地戦特化だから、上手くハマれば可能性はある! 試してみる価値はあると思うんだよ」

「特化してるのは蓮くんだけでわたしは普通だと思うけど、右に同じ! せっかくみんな頑張ったのにこれで負けなんて悔しいじゃん、やってみようよ!」

「とりあえず可能性あるか見切るために、一回お試しで戦いたいよな」

「それも右に同じ! 『光の鈴』ってもうあるの?」

「『光の鈴』なら何個か用意できてたんじゃん? ことみー」

「ええ、昨日までで三つ用意できてるわ」

「んーじゃ一個使わせて? あたしら偵察行ってきまっす!」


 おお、矢野さんは乗り気みたいだな。


「ダメジョブマイスターと少人数縛りプレイとか面白そう! ちょっと燃えて来た!」


 その矢野さんのやる気は前田さんにも移ったみたいで――


「そうね。何もしないよりは――じゃあ私も行く。衰弱してるから役に立たないけど」


 というわけで、俺達は授業後十層ボスの偵察に出かけることになった。

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