プロローグ
一人称の書き方を訓練したいというのと、
そういや昔ネトゲは散々やったくせにゲーム物の作品書いたことなかったなー
ということで本作品を書いてみることにしました。
単に楽しいだけの話を目指します。
ゲーマーにとっての『こんな学校あったらいいな』を形にできたらいいなと。
それは、中学三年生の秋頃の事だった。
ちょうど進路がどうのこうのと、身の回りが慌ただしくなってくる頃で――
『なあレン、お前高校とかどうすんの?』
モニター上のチャットウィンドウが、そんな文字列を表示した。
発言主は、画面に映っているガチムチの獣人キャラだ。
キャラネームはアキラ。このMMORPGエターナルファンタジー(通称EF)や他のネトゲでずっと一緒にやって来た、親友ともいえるフレンドだった。
『んー。まあ普通に近くで行けそうなところに行く予定』
と俺はチャットを返す。
俺のアバターであるレン(高代蓮だからレン。そのまんま)は、雄大な景色を一望できる高い岩山のてっぺんに座っている最中だった。
アキラは、キャラの見た目に似合わずきれいな風景が大好きだったりする。
このお気に入りの場所によく俺を連れてきては、二人で他愛もない雑談チャットをするのが恒例行事になっていた。
アキラほど絶景マニアでない俺は、話の最中にちょこちょこアイテム合成してスキル上げ内職にはげんだりしている。
今も画面内のレンは合成モーションに入ってます。
『うわ、それつまんねえ』
『え? いや今何気に合成レベル99のクリムゾンハンマー作ろうとしてたぜ? ミスったら結構財布に痛いし、俺ヘコむぞ』
『いや、合成の話じゃない! 進路!』
アキラも俺と同じで中三なんだよな。
『普通に高校行くことに何の問題が?』
『普通の高校はつまらんだろ? 普通はよくないよ普通は』
『そうかぁ? 特に問題ないんだから結構なことなんじゃね?』
『ほらよく言うじゃん「量産機になるな」って! せっかくだから人生楽しまないと!』
『まあ何か広告とかで見るけども……』
ちょっと胡散臭いけどな、あれ。
『で、俺の進路について何か?』
『ああ、うん。俺、世成学園受けようかなと思ってさ。レンも一緒に行かねえ?』
『世成学園? ってああ、ネトゲ学園?』
『そうそう』
その名前は俺も聞いたことがあった。
何でも、学校教育にネトゲを取り入れてるそうな。
しかもただのMMOじゃなくて、最先端技術のVRを組み込んだVRMMOらしい。
授業もそのVRMMOの空間でするらしい。
VRMMOを通じ、よく学びよく遊ぶがコンセプトとか。
何か夢がある感じだわな。
『でもお高いんでしょう?』
『そこは俺たちの関知するところじゃないし。でもさ、学校公認でネトゲやりまくりつつも成績も上がるらしいんだよな。面白そうだから一緒にいこーぜ!』
『まあ興味あるっちゃあるけどなー……』
VRMMOなんて家庭用には出回っていない。
ゲーマーとしては興味を惹かれざるを得ない。
どんな感じかわくわくするのは正直なところだ。
『それに、だ。俺たちってヘビーゲーマーじゃん?』
『そうだな』
『言い換えればネトゲ廃人じゃん? オタクじゃん?』
『まあ世間からはそう見えるかもな』
『そう、そしてまあ一般人からはキモがられるわけじゃん? モテないじゃん?』
『そうかもな。俺あんま気にならんけど。気になる派か?』
親の影響でさ。好きなことをとことん突き詰めろ! ってよく言われてる。
で、ゲームばっかりやってるけど別に怒られないどころか温かく見守ってくれる。
そもそも親父がゲーム会社で働いてるからな。
『普通は気にする。だけどネトゲ学園なら似たような奴が集まるじゃん? 類友だよな』
『ふむ』
『ゲーム好きが集まるんだから、学校のネトゲで英雄になりゃモテるんだよ! すなわちお前でもモテると! 凄くない? それ。世界観の大転換だぞ』
『いや、なぜに自分を棚に上げて俺に限定した?』
実は中の人はイケメンだったりするのか?
いや、フレ歴は長いけどリアルに会ったことは一回もねーし分からんね。
『え? じゃあお前モテるの?』
『いやあ、それはないな』
きっぱり。まあそれだけは断言できる。
多分順当に行ったら、一生を童貞で終えるんだろう。
でもそれってそんなに悪い事か?
今時似たような奴はいっぱいいるだろうに。
好きな事やりまくった結果的にそうなったんなら、別にそれでいいんじゃね?
決してリアルな女の子に興味がないわけではない。
ただ、それが全てなのかって話。そうじゃないでしょうと。
『よし、じゃあ決まりだ。ネトゲ学園一緒に受けよう! な!』
『いや待て、何か今ストーリーが超展開したんですが』
『いーじゃん! 俺まだまだお前とつるんでゲームやりたいんだよ! なーなー行こうぜ行こうぜ!』
ガチムチのおっさんキャラの割に、結構中の人はテンション高めというか、子供っぽいというか――何かにつけて好奇心旺盛なんだよな。
でもまあ、いい奴だし一緒にゲームやってて楽しいのは確かだし……
ここはひとつ、男同士の友情で進路決めるのも悪くはないか!
どうせ何も考えずに近くの高校行こうとしてただけだし。
『……よし決めた! いいぜ、親に話してみるわ』
『おおー! さすがレン、話が分かる!』
そんな事があって、俺の高校の進路は決まった。
ネトゲ学園こと世成学園を受験。んで合格。アキラの方も問題なく合格。
春からまた新しいゲームで一緒にやれるのを楽しみにしてた。
けど――
一緒にやろうと約束していたアキラは、俺の前に現れなかったんだよなー。