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竜との戦い

 誰かが唾を呑む。

 兵達は誰一人言葉を発さない。

 ごうごうと吹き荒れる風に、脅威を知る。

 地面に固定していない物資が風に吹き飛ばされそうになっている。

 ただ地面に立つ。

 そのことを意識しなければ、人も飛ばされそうだった。

 ただの羽ばたきで、この風圧だ。

 その羽が移動に使われているだけならば、良い。

 けれどその強靭な羽が、人に向けられたなら。

 風が、牙をむいたなら。


「矢を番えろ」


 隊長が号令を下す。

 ただの弓では届かない。

 弓兵の後ろに魔術兵がつく。


「風よけの加護を」


 魔術兵長の合図に、一斉に詠唱する。

 わずかでもあの竜に届くように、風を切って飛ぶ矢に、魔術を施す。


「しっかり頼むな」

「任せて」


 留も魔術兵として数えられ、端で詠唱をする。

 仮にもケイの弟子だ。

 遅れは取らない自負がある。

 一層強く風が吹いた。

 思わず目を眇める。

 次の瞬間、大きな影が陣を覆った。

 竜が、兵達をめがけて降下してきたのだ。


「まだだ!」


 号令が飛ぶ。


「引き絞れ!」


 弓兵と魔術兵以外が散開する。


「放て!」


 数多の矢が、竜に向かって放たれた。

 的が大きい。

 ほとんどの矢が、竜めがけて飛んでいく。

 しかし。

 固い鱗で覆われた竜に、傷を与えることはなかった。


「散開!」


 弓兵と魔術兵が竜の降下地点から離れる。

 一瞬の差で、竜が地面へ降り立った。


「……デカい」


 今まで相対した魔物より大きく、今まで屠った魔物より凶悪だった。

 縦長の瞳孔に見据えられ、背中に冷たい汗が流れる。

 項垂れる様に地面に顎を乗せ、竜は緩慢に口を開けた。

 咆哮、だろうか。


「っ!逃げろ!」


 その号令に、竜の真正面から左右に逃げた者は助かった。

 真っすぐ距離を取ろうとした者、反応が遅れたものは、次の瞬間消し炭となった。


「っ……」


 竜の口から放たれた炎は、扇形に周囲を焼いた。

 地面からなめる様に這わされた炎は、被害を大きくした。

 炎は、熱は、上に行く。

 竜はそれを知っていて、地面すれすれのところから炎を吐いたのだ。

 下、という逃げ道をなくすために。


「攻撃、開始!」


 周囲を取り囲んだ兵が、武器を手に切りかかっていく。

 大きな筒から、弾を発射する。

 この世界にも、大砲があった。

 放たれた弾は、竜の鱗に触れると弾けた。

 独特のにおいが周囲に漂う。油の匂いだ。


「咲き誇れ、大火!」


 パン、と弾ける音がして、炎の弾が、周囲の魔術兵から放たれる。

 弓兵も火矢を放った。

 ほとんどの火は竜に払われたが、僅かな炎が竜の鱗へとたどり着く。

 油に濡れた竜の身体は、みるみる炎に包まれていく。

 しかし。

 竜に動じた様子はなかった。

 顔の近くの炎を舐め、目を細める。


「まぁ、火を噴くんだから、炎に耐性があってもおかしくないわよね」


 留が苦い顔をする。

 少しでも嫌がってくれれば、まだかわいげがあるというものだ。


「このっ!」


 シャラ、と鎖が竜に巻き付く。

 誠だった。

 鍵の力で、竜を拘束する。

 が。

 竜が身体をくねらせた。

 翼を広げる。

 それだけで、鎖はちぎれて消えた。

 けれど、他とは違う何かを感じたのだろう。

 竜は、術者である誠を、ひたと見据えた。


よろしくです

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