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ご拝読ありがとうございます。

感想とか、疑問とかあれば教えてください!

ネタバレでなければお答えします。


というかまず喜びます。

 走る。

 今度は兵達と同じ方向へ。

 驚いた顔をする兵を放って、ソレに向かっていく。


「お戻りください!」

「いけません!」


 制止の声に耳を塞いで、敵を見据える。


「そこのお二方、お供はいかが?」


 聞きなれた声に上を見上げると、留が空を駆けていた。

 進行方向は、同じだ。


「空なんて飛んで、魔力は……心配ないか」

「魔力量多かったな」


 走りながら、笑う。


「走っていった方が体力使うわ」


 運動の苦手な留らしい言葉に、思わず笑みがこぼれる。


「留さんも戦うの?」

「君たちが戦うならば」


 是非もなし。

 そう言って、留は笑う。

 時代劇めいた言葉に、つられて二人も笑った。


「どうせ、ここの人達見捨てて逃げられないんでしょ。なら、一緒に戦うわよ」

「あ、それずるい言い草」

「留さんが一番どうにかしたいって思ってるんじゃないのか?」


 那毬達の言葉に、留はおどけて肩を竦めて見せる。


「図星だな」


 考えてみれば兵として過ごしている留が、同じ兵達の事を思うのは何ら不思議ではない。

 お人よしは、三人だった。


「あー、死ぬ前に留さんともう一回話ができてよかった」

「死ぬ確定で話をするなよ」

「縁起でもない」


 那毬の言葉は、すぐさま誠と留にたしなめられる。

 この戦いで、生きる勝算など、まだ立っていない。

 どちらかと言えば、死ぬ確率の方が高いのかもしれない。

 那毬達はまだ、竜と呼ばれる災厄の強さを知らないのだ。

 けれど。

 黙って自分たちのために兵が死んでいくのを見ていることは、できなかった。

 戦うなら共に戦って生きたかった。

 それで死ぬならそれまで、と。

 決断の瞬間、確かにそう覚悟を決めた。


「死ぬのはごめんよ。生きて、この世界からおさらばするの!」


 覚悟は覚悟として、それは譲れない。

 高らかに、けれど周囲に聞こえないように、留が言う。


「いやでも、話できなかったから、最近」

「まぁ、ねぇ」

「このまま、どっか行っちゃうような気がして、不安だったんだ」

「……そんな事」


 ない。そう言おうとして、それは無責任だと首を振る。


「善処してるわよ」

「嘘でもそんなことないって言ってよー」


 ははは、と笑う。

 完全に、肩の力は抜けた。


「二人とも、準備は良い?」

「え?」


 留が指さす先には、兵達が陣を敷いていた。


「兵を鼓舞する演説とか号令って定番でしょ」


 それは、留にはできないことだ。

 兵達は今、箱と鍵の神子のために命をかけようとしている。

 なら。


「聞け!」


 号令は、那毬と誠が行うべきだ。

 一瞬、兵達は手を止めた。

 声のした方に顔を向け、驚いた顔をする。

 何故ここに、神子達がいるのか。


「恐れるな!」


 構わずに、誠が言う。

 続いて那毬も言葉を続ける。


「私達も共に戦う!最後まで、私達は共にある!」


 その言葉に、兵達が揺れた。

 力のある言葉だった。

 けれど、その言葉に、流されてはいけない。

 彼らは、守るべき者達だ。

 命を賭して、生かすべき者達だ。


「おい、留!」


 下からの声に、留が目線を落とす。


「何やってんだよ!神子様連れて、早く逃げろって!」


 シャズだった。

 那毬達を案じて、シャズは怒っていた。


「お前なら、できるだろ!」


 シャズが言う。

 そう。

 二人を無理矢理引っ張ってこの場から遠ざけることも、説得することもあるいは可能だろう。

 むしろ留にしか、それはできない。

 シャズの言葉は、この場の兵の代弁だ。


「ごめん、シャズ」


 留はシャズに笑いかける。


「それはできない。私は、二人の願いを叶えたいと思ってるから」

「なんだよ、それ」


 泣きそうな声だ。泣きそうな顔だ。


「二人の選択に、私は異を唱えるつもりはないよ」


 留の声は、よく通った。

 だから、シャズ以外の兵達も、その言葉を聞いた。


「これは、二人が望んだことだから。二人が望んで、皆と共にあることを選択したんだ」


 しん、と一瞬静まり返る。

 その場の全員に、迷いがあった。

 神子達の本心だとして、イネス達が許可をしているはずもない。

 だとすれば、これは神子達の独断専行。

 後でどんな影響があるかわからない。

 神子達も、自分自身も。

 思わず保身を考えて、誰もが黙った。

 下を向く。

 地面に答えは書いていなかった。

 時間がなかった。

 竜はもう、すぐそこまで来ている。

 那毬達はじりじりとした焦りを感じていた。

 もう一押しが、必要だった。

 留が小さくため息を吐いた。

 周囲を見渡す。


「ねぇ」


 地面に向けられていた視線が、上へ引っ張られる。

 皆の視線を集めた留は口角をあげて、笑みを作る。


「みんなと一緒に戦いたいって、これ以上の殺し文句ある?」


 そう問いかける。

 沈黙が、長い。


「ない、な」


 誰かが呟いた。


「ない」

「ありがたい言葉だ」


 ざわざわと、ざわめきが広がる。

 皆、二人の神子と共に戦う覚悟ができたようだった。


「ありがとう、皆」


 那毬が言った。

 さぁ、改めて号令だ。


「勝利をこの手に!」

「共に生きよう!」


 二人の言葉に、大きな歓声が上がった。

 竜は、もうすぐここに来る。





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