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すれ違う思い

「私も同行するわよ、王都」


 それは久々の再会だった。

 那毬が部屋に戻ると、そこに留がいた。


「あ、そう……」


 留を認識するより先にそう宣言され、那毬は頭を整理しつつそれだけを答えた。


「それまで命があれば」


 何度か聞いた言葉だった。


「それ、よく言うね」

「保障がないからね」


 留は那毬の方を見ずに答えた。

 ここ最近、討伐の任務も増えたが、暗殺の任務も若干増えていた。

 相手がなぜ死ななければならなかったのかも知らずに、留は命令をこなしていた。

 そこで嫌というほど命の軽さを知った。

 命が尊い。

 そんな言葉が、何の救いにもならない世界だと、知った。

 だから、留自身も。

 きっとあっけなく死ぬのだろう。

 この世界にきて、くどいほど思い知った。

 目的があろうがなかろうが。

 待っている人がいようがいまいが。

 死ぬときは、死ぬ。

 殺される。

 だから、軽々しく大丈夫だとは言えなかった。


「王都へ行ったら、召喚陣のある部屋に行けると良いのだけれど」


 何か言いたげな那毬に構わず、留が言った。

 その言葉に、那毬も頷く。

 ふともう一人の不在に思い当たった。


「あ、誠さん呼んでこようか」

「いや、良い。ちょっとしか居られないし」


 誠は隣の部屋だ。

 留は時間が惜しいようだった。

 もうすぐ夕食の時間だ。

 誰かが呼びに来るのかもしれない。


「お香も、王都で焚かれているか確認をしないと。兵舎には焚かれてない。って、前も言ったっけ?」

「言ってない」

「蔵書も比べ物にならないだろうし、元の世界に戻れる方法探し、はかどると良いけど」

「人の目も増えるわ」

「そうよねー」


 まいったなぁ、そう言って、留が笑う。


「どれだけ栄えているのか。もともと田舎育ちだしねぇ、私達」

「そうね」

「この世界の知らない事、また新たに知るチャンスができたわ」


 だから。

 そう言って、言葉を続けようとする留を、首を振って拒絶する。

 月が、那毬を照らす。

 留は、闇の中にいた。


「なんで」


 那毬が震える声で言う。


「なんで、そんな……他人事みたいに」


 遺言みたいに。


「……私を殺したい勢力が、王都へ行く前に片を付けたいと考えているようなの」


 暗殺をする中で、得た情報だった。

 留を殺したい勢力の暗殺を、留が行う。

 馬鹿みたいな話だった。


「まぁだから、一応ね」


 王都へ行くとなれば、留を殺すチャンスは増えるだろう。

 人の往来も増え、移動で無防備になるときも増えるかもしれない。

 殺したい者たちにとっては、殺しやすい環境だ。


「殺されるよりは逃亡を選ぶけど、どちらにせよ、やすやすと会えなくなりそうだから」


 やってほしいことを伝えておこうと思って。

 暗い中でもわかる。

 口端を少し上げて、留は笑った。


「ま、とりあえず。明日からハインケル邸に向かって隊が来るから。3日後にはここで合流よ。その時また話しましょ」


 そう言うと、留は門を開いた。


「またね」

「……また」


 振り返りもせずに門の向こうに留が消え、門も霞んで消えていった。

 留は、知らない。

 だから、離れることを平然と話していける。

 願わくば、と那毬は思う。

 彼女を害するすべてを倒し、叶わぬなら共に逃げて。

 最期まで、共に生きたい。

 そのための危険も苦労も、望むところとすら思っている。

 そう思っているのに。

 留は冷静に、離れた後のことを考えている。


「……ままならないものね」


 以心伝心とは、いかないものだ。



話が進まない。

けどきっと、もうすぐイベントが起きるはず!

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