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定時連絡

「それで?」


 楽しそうに話を聞くのは、那毬と誠だ。

 定時連絡に訪れた留は、先日の演習の話を二人にしていた。


「それでもなにも、そこでシャズと私は演習終わり」


 上級生から訓練の概要を訊き出そうとしたところで、遠くから観察していた上官が止めに入った。

 その上官の話によると、上級生は上級生で、森での狩り――下級生の捕縛の実技演習をしていたらしい。

 上級生下級生とも、互いを使った演習だったのだ。

 いたるところに張られた罠は、上級生が前日から仕掛けたものだった。


「でも、上官が入ってくるなんて、過保護ね」

「確かに、訓練の一環としてそのまま様子を見るのが普通じゃないか?」

「あぁ……それについてはね……」


 留が頭を搔いた。


「あまりにも拷問方法が……その……」

「あぁ」

「あぁ……」


 言葉を濁した留に、察したように二人は目をそらす。

 敢えて聞くまい、という意志表示だ。


「怒られたよ」

「まぁ、そうだろうな」

「でも正式に、君らの討伐には参加できるよ!」


 今回の演習は、試験でもあった。

 魔族討伐の際に同行する訓練兵の選抜試験。

 留は内々ですでに決まっていたが、試験を通ったことで、誰に後ろ指指されることなく堂々と参加ができる。


「つまりそのシャズ君とかいうのも」

「そ、補給班で同行決定」

「かわいそうに」


 那毬が言った。


「まぁ、安全とは言えないからね」

「まだ情報が揃ってないしな」


 思えば、三人にとって初めての、本物の魔物の討伐だ。

 三人も、まだ何も知らないに等しい。


「この時期の魔物は、比較的簡単に倒せるっていうけど」

「比較が魔王じゃ意味ないわよね」


 なにと比較して倒しやすいというのか、それすらわかっていない。


「いやだぁ」

「いやだー」

「私もー」


 三人は揃って肩を落とす。


「でもまぁ」


 誠が顔をあげた。


「三人そろってっていうのはいいことだな」


 那毬と留が揃って誠を見る。

 誠が笑う。

 つられて那毬と留も笑みを浮かべた。


「そうねぇ」

「まぁ……そうね」


 ふふ、と留の口から笑いが漏れる。

 彼はまるで、漫画の主人公のようだ、と思った。

 真っすぐで、前向きで。


「いいことに思えてきた」


 他人まで前向きな気持ちにさせてくれる。


「油断はするなよ」

「わかってるわよ」


 そう言って、留は腰を上げた。


「そろそろ行くわ」


 時間が迫っていた。

 寮の見回りが来てしまう。


「次は討伐の時ね」

「心強いな」

「期待しないで。本番には弱いのよ」

「いるだけでいいから」

「はいはい」


 つなげたままの門をくぐろうとする。

 門に手をかけたところで、那毬が声をあげた。


「なに?」


 留が振り返る。


「これ、持って行って。多分私達を召喚したときの魔法陣」

「……」


 渡された紙きれを見る。

 複雑な魔法陣が描かれている。

 なるほど、これほど複雑な術式ならば、世界と世界を繋ぐことも可能かもしれない。

 そう、頭の隅で考える。


「いやいやいや」


 留は首を振った。


「え?」


 二人を見る。

 なぜ、そんな大層なものを、二人は持っているのか。

 そしてなぜ、このタイミングで、ついでのように渡されたのか。


「忘れてた」


 わざとらしく、那毬が舌を出す。

 誠もへら、と笑っている。


「おい」



 留の話より、ずっと重要な案件ではないのか。それを、こんな帰りがけに。

「まぁ、とりあえずこっちで解析を進める予定だけど。念のため持ってて。模写したやつだから」

「万が一、取り上げられたときのためにも」

「……文句は今度会ったときね」


 時間がなかった。

 留は文句を呑み込んで、紙を仕舞う。


「こっちでも眺めておくわ」

「よろしく」

「またね」

「また」

「また」


 次会う時は、本物の魔族討伐だ。


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