表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
74/92

サバイバル!2

 森に入って数時間たった。

 日が暮れて、留とシャズはこれ以上進むことをやめた。

 野営の準備をして、空腹を訴える身体をなだめながら明日の行動を考える。


「地図」

「暗くて見えないわよ」


 灯りは用意していない。

 どこから、何が来るかわからない。

 炎や煙で何かの注意を引きたくはなかった。


「この森、罠以外はないのか?」

「知らないけど……見たのは罠だけね」


 何人か、罠にかかった訓練兵と遭遇した。

 どれも命の危険はなさそうな、捕縛の罠ばかりだ。


「彼等、どうなったかしら」

「お前が見捨てていったのに、今更」


 罠にかかった訓練兵を、シャズは助けようとした。

 それを。留が止めた。


「だって、罠にかかった仲間を餌にその仲間を釣り上げる、なんてよくある話でしょ」


 危険には近寄らない。たとえ訓練だとしても。

 いや、評価につながる訓練だからこそ。

 留はなるべく優秀な成績でいたいのだ。那毬達の側にいるためには、兵としても実力が必要だ。

 補給班では足りない。

 隣で戦いたいのだ。

 守れるように。


「お前、ほんとに同い年かよ」


 シャズがそんなことを言う。


「なんで?」


 その言葉に平常心で答える。


「普通、そこまで考えねーよ」

「そう?育った環境の違いってやつじゃない?」


 住んでいた世界が違うのだし。

 そう付け足すと、シャズが身じろいだ。


「……世界が違う、か」

 シャズはそれ以上の言葉を紡げなかった。


「この世界と違ってね、月は二つもなかった。でも、夜はここより明るかった」


 街灯や家の灯りで照らされた夜は、この世界に比べれば眩しいほどだ。


「月がないのに明るいのか」

「うん。あ、星も少なかったな」


 この世界にも、星は広がっている。

 元の世界より、ずっとよく見える。


「この世界は、夜空が綺麗ね」

「ふーん」


 シャズも空を見る。

 天の川はないが、満天の星空に、月が二つ浮かんでいる。


「でも、この寒さはいただけない」

「寒いな」


 この世界では秋の口。すでに寒さが身に染みる。

 暖房どころか、風をしのぐ壁もない。

 多少の危険があっても炎の暖かさにあずかりたいくらいだ。


「……」

「お、おい」


 不意に、留がシャズに身を寄せた。

 シャズが動揺した声をあげる。


「もうちょっと……」

「え……え!?」


 その、瞬間。


「きゃあぁあぁぁっ!」

「うわぁっ!」


 近くから叫び声が聞こえた。


「よし、かかった!」


 留が飛び跳ねる様に立ち上がる。


「え」

「ほら、罠張ったでしょ」

「あ、あぁ」


 安全のためにと確かに周囲に罠を張った。

 シャズも設置を手伝っている。


「周囲をうろちょろしててさ。もうちょっとでかかりそうだったんだけど、あの木が邪魔で見えなかったんだよねー」


 だから、留はよく見ようとシャズの方に身を寄せた。

 それを理解して、シャズは赤くなる。

 一瞬でも、心臓がはねた。そんな自分を殴ってやりたい。


「シャズ!上級生よ!」

「え?」

「罠にかかったの、上級生」


 この訓練に、他の学年はいなかったはずだ。

 つまり。


「仕掛ける側がかかったわ」


 留の気分は上々だ。


「これで今回の訓練内容吐かせればいいんじゃない?」

「お前、ほんと……えげつない」


 嬉々として罠にかかった上級生を回収しに行く留に、シャズが顔を顰めた。

 けれど。


「さんせーだな」


 それに毒された自分を、シャズは自覚した。

 困ったことに、嫌ではなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ