サバイバル!2
森に入って数時間たった。
日が暮れて、留とシャズはこれ以上進むことをやめた。
野営の準備をして、空腹を訴える身体をなだめながら明日の行動を考える。
「地図」
「暗くて見えないわよ」
灯りは用意していない。
どこから、何が来るかわからない。
炎や煙で何かの注意を引きたくはなかった。
「この森、罠以外はないのか?」
「知らないけど……見たのは罠だけね」
何人か、罠にかかった訓練兵と遭遇した。
どれも命の危険はなさそうな、捕縛の罠ばかりだ。
「彼等、どうなったかしら」
「お前が見捨てていったのに、今更」
罠にかかった訓練兵を、シャズは助けようとした。
それを。留が止めた。
「だって、罠にかかった仲間を餌にその仲間を釣り上げる、なんてよくある話でしょ」
危険には近寄らない。たとえ訓練だとしても。
いや、評価につながる訓練だからこそ。
留はなるべく優秀な成績でいたいのだ。那毬達の側にいるためには、兵としても実力が必要だ。
補給班では足りない。
隣で戦いたいのだ。
守れるように。
「お前、ほんとに同い年かよ」
シャズがそんなことを言う。
「なんで?」
その言葉に平常心で答える。
「普通、そこまで考えねーよ」
「そう?育った環境の違いってやつじゃない?」
住んでいた世界が違うのだし。
そう付け足すと、シャズが身じろいだ。
「……世界が違う、か」
シャズはそれ以上の言葉を紡げなかった。
「この世界と違ってね、月は二つもなかった。でも、夜はここより明るかった」
街灯や家の灯りで照らされた夜は、この世界に比べれば眩しいほどだ。
「月がないのに明るいのか」
「うん。あ、星も少なかったな」
この世界にも、星は広がっている。
元の世界より、ずっとよく見える。
「この世界は、夜空が綺麗ね」
「ふーん」
シャズも空を見る。
天の川はないが、満天の星空に、月が二つ浮かんでいる。
「でも、この寒さはいただけない」
「寒いな」
この世界では秋の口。すでに寒さが身に染みる。
暖房どころか、風をしのぐ壁もない。
多少の危険があっても炎の暖かさにあずかりたいくらいだ。
「……」
「お、おい」
不意に、留がシャズに身を寄せた。
シャズが動揺した声をあげる。
「もうちょっと……」
「え……え!?」
その、瞬間。
「きゃあぁあぁぁっ!」
「うわぁっ!」
近くから叫び声が聞こえた。
「よし、かかった!」
留が飛び跳ねる様に立ち上がる。
「え」
「ほら、罠張ったでしょ」
「あ、あぁ」
安全のためにと確かに周囲に罠を張った。
シャズも設置を手伝っている。
「周囲をうろちょろしててさ。もうちょっとでかかりそうだったんだけど、あの木が邪魔で見えなかったんだよねー」
だから、留はよく見ようとシャズの方に身を寄せた。
それを理解して、シャズは赤くなる。
一瞬でも、心臓がはねた。そんな自分を殴ってやりたい。
「シャズ!上級生よ!」
「え?」
「罠にかかったの、上級生」
この訓練に、他の学年はいなかったはずだ。
つまり。
「仕掛ける側がかかったわ」
留の気分は上々だ。
「これで今回の訓練内容吐かせればいいんじゃない?」
「お前、ほんと……えげつない」
嬉々として罠にかかった上級生を回収しに行く留に、シャズが顔を顰めた。
けれど。
「さんせーだな」
それに毒された自分を、シャズは自覚した。
困ったことに、嫌ではなかった。




