サバイバル!
「これは悪手」
訓練のため、ランダムで相棒が決まった。
相手を見た瞬間、思わず顔を顰めたのは、留だけではなかった。
「なんで俺が……」
留とペアを組まされたシャズは、苦虫をかみつぶしたような顔を隠そうともしなかった。
先日彼に気を付けようと考えていたところだ。
なるべくなら接触は避けたかったのだが。
「くじ運なかったわね」
「うるせぇ」
くじで決まるとなれば、どうしようもない。
「足引っ張るなよ」
「内容によるわ」
訓練内容は明かされていなかった。
だから、事前準備も何もできていない。
だが、支給された装備を見ると、なんとなく想像がつくというものだ。
ナイフと、丈夫そうなロープ、地図。魔術を使うための杖は今回持っていない。
「三日間でこの森を抜け、地図にある目的地まで到達せよ!」
森の前に教官が立ち、訓練内容を話す。
「この森は、知っての通り害獣の巣や、危険な道もある。それらを避け、時に戦い、諸君らが無事目的の塔までたどり着くことを願う」
「サバイバル訓練……」
留は思わず呟いた。
周囲を見るが、三人の教官しかいない。
この教官の人数では全部の組を見ることはできないだろう。
他の兵がすでに森の中で待機しているのか。
それとも最悪命を落とすことも織り込み済みの訓練なのか。
「それでは、始め!」
戸惑った様子の訓練兵達が、森の入り口でたむろする。
一部の訓練兵は、勇んで森へと入っていった。
「おい、行くぞ」
シャズも、どちらかといえば真っ先に森へ入りたい気質の人間だ。
早く、と留を急かす。
「まぁまぁ。すこーし、待とう」
地図を眺めながら、シャズを止める。
「この森、順調にいけば二日で抜けられるのよ。地図上」
そう言って、留は地図を指す。
「だから何だよ。より早く着いた方が、点数高いだろ」
「余分に日数をとってるところを見ると、何か仕掛けてる……と思うんだけど」
日数的に、余裕がありすぎるのだ。
留の言葉に、シャズも少し興味を持ったようだった。
「仕掛ける?」
「罠とかさ。仮にも訓練。ただの散歩ってわけはないでしょ」
ひらひらと地図を振って、笑ったみせた。
「ぎゃぁぁあぁ!」
背後の森で、叫び声が響いた。
声から察するに、訓練兵の声だろう。
「ほら、ね」
「……」
シャズが苦い顔をした。
まだ森に入っていなかった訓練兵達がどよめき始める。
「ほら、さっさと行け」
教官が森の中へと訓練兵を誘導する。
「どうするんだよ」
シャズが耳打ちする。
仕方なしに、森へと足を踏み入れた。
「まぁ、他の訓練兵をカナリヤにして……」
「カナリヤ?」
「あぁ、この世界にはいないわね。他の訓練兵の様子を探りながら、森を進むのがいいと思う」
「囮か」
「他の兵は斥候。私達が本体」
「鬼だな」
そう言ってのける留から、シャズが嫌そうな顔をして距離をとった。
「教官が?」
とぼけて留が言う。
「お前がだよ!」
シャズの声が、森に響いた。




