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見つけたもの

 しばらく静かな時が過ぎた。

 留がザインと共に訓練兵寮に戻った後、魔物の襲来もなく、訓練に明け暮れる毎日を過ごす。

 月に一回留が訪れ、情報交換をしていた。

 この日、丁度時間が空いたため、那毬は一人で図書室に来ていた。

 この図書室には、読み切れないほどの本があった。

 何を読むか、と背表紙をなぞっていく。

 たまには息抜きをしたい。

 この世界にも娯楽小説があった。本棚の一角に納められたそれらを吟味する。

 気になった題名の本を抜き出して、ぱらぱらとめくる。

 棚に戻すと、隣の本を抜き出す。

 暫くそうして、本を選んでいると、捲ったページに紙が挟まれていることに気づいた。

 栞だろうか。

 ページをそのままに、紙を見る。

 魔法陣が描かれていた。

 誰かが魔法陣の練習をした紙を栞代わりにでもしたのだろうか。

 興味をなくし、那毬は本に紙を挟みなおす。


「あれ?」


 その違和感は、明らかだった。


「この紙……?」


 この世界にも紙はある。

 が、元の世界の紙よりももっとざらざらとした手触りの悪い紙だ。

 色もくすんでいる。

 那毬は魔法陣の書かれた紙を、再度手に取る。

 白い紙だった。

 表面はさらさらとしていて、この世界で流通する紙より幾分か薄い。 

 長い間この本に挟まれていたのだろう。

 多少の痛みはあったが、さほど劣化はしていない。


「もしかして」


 周囲を見る。

 誰もいない。

 誰も見ていない。

 那毬は急いでその紙を服の中に隠した。

 この紙は、異世界から持ち込まれたものだ。

 那毬はそう確信する。

 ずっと昔、この屋敷に神子が訪れたことがあるのではないか。

 ハインケルは一言もそんなことは言っていなかった。

 隠すように挟まれた紙が、何を意味するのかは分からない。

 魔法陣が何の効果を示すものかも調べなくてはならない。

 けれどこれは、発見だ。

 元の世界へ戻るための手がかり。

 膠着しつつあったそれの、大きな前進になるかもしれない。


「本も」


 紙が挟まれていた本も手に持つ。

 服から紙を取り出して、元のページに挟みなおした。

 この本も、一応調べよう。

 そうして、本を手に那毬は図書室の扉を開けようとする。


「ん?」


 扉が開かなかった。

 扉が赤く発光している。


「え、禁書なの?」


 それは、図書室にかけられた魔術だった。

 禁書や貴重な本の類を、館の主の許可がなければ持ち出せなくする魔術。

 本を持っている限り、扉は開かない。


「……どっちが?」


 とりあえず、館の主にばれないうちに、扉の側から離れなくては。


「……『カーズニックの殺人』。これが禁書?」


 ただの娯楽小説だ。普通の棚に保管されていた。


「ってことは」


 禁書の扱いになっているのは、紙の方だ。


「うーん」


 紙を取り出す。

 複雑怪奇な魔法陣が、そこに描かれていた。


「うーん」


 那毬一人唸ったところで、どうしようもなかった。

 扉は開かないままだった。


ジャンルにミステリを加えるべきでは?と思い始める今日この頃。

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