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心残りを

竜とか早く出したい。

でもじっくり成長過程を描写したい。

でももっとイベントがあってもいいんじゃないか?


そう考えて私の心は千々に乱れるのだ。


全部同時進行できたらなぁ


 朝霧の中、庭園には留以外の人はいない。

 留は、花の脇にしゃがみこみ、その葉を弄ぶ。


「留さん」


 呼ばれて振り返れば、誠の姿があった。


「来たか」


 もうすぐ、留は寮へ戻る。

 その前に、言っておかなければならないことがあった。

 これは、留の心残りだ。


「昼には出発するから……話すなら今だと思ってね」

「そうだな」


 早朝。とはいえ、まだ薄暗い。

 起きている者の方が少ない時間帯だ。

 誠が秘密裏に渡された紙きれには、日本語で集合場所と時間が書いてあった。


「呼び出しか。なんか懐かしいな」

「告白でもされた?」

「いいや、カツアゲされた」


 高校一年のときだったか。 

 その言葉に、留が噴き出す。


「目に浮かぶわ」

「おい」


 ため息を吐く。


「で、何の用だ」


 無駄話をしに来たわけじゃない。


「那毬さんに秘密とは」


 ここに、那毬はいない。

 だから、彼女には聞かれたくないことだ。


「崖から落ちたとき、死を覚悟した」


 それは、記憶に新しい。

 怖いと言えば、怖かった。

 けれどそれ以上に。


「死ねないと思っていても、死ぬときは死ぬわ」


 生が叶わない者など、数多くいる。

 いかに崇高な志を持とうが、野望があろうが、それは関係ない。

 それを痛感した。


「私は、殺されるかもしれないわけだし」


 命を狙われている。

 正直今回の事故が、誰かの仕掛けた殺意だとしても驚かない。

 確証は何もない。だから、騒ぎ立てるようなこともしない。


「まぁ寮に戻ればよっぽど大丈夫そうなんだけどね」


 訓練兵寮は閉鎖的で、外部の人間は目立つ。

 交流も限定的なら、注意する人間も限られてくる。


「私はね、那毬が心配なの」

「あぁ」

「死ぬって思ったとき、一番に浮かんだのは那毬の事」

「そうか。そうだな」


 それは、至極当然のことのように思えた。

 彼女たちは、仲がいい。


「でも那毬は今、ぎりぎりだから」


 ほの暗い顔をするようになった。

 この世界に不信を抱いている。

 精神が、疲弊している。


「私は、そばにいられない。だから那毬のことを、守って欲しい」

「……」

「いつまた会えるかわからないから」


 黙ってしまった誠に、付け足すように言葉を紡ぐ。

 見透かされているようで、沈黙が怖い。


「期限付きで、良いか」

「え?」

「期限付き。留さんが、俺たちのとこに戻ってくるまで」


 誠と視線が合う。

 強い眼だった。


「わかった」


 留は頷いて、その視線から目をそらす。


「私が、二人の元に戻るまで」

「請け負った」

「頼んだ」


 拳を突き合わせる。


「期限付き、だからな」



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