ハインケル伯爵と。
短いですが……すんません
着々と準備は進んだ。
兵の編成、物資、連絡手段の確認。
ハインケル邸は慌ただしい空気に包まれていた。
ハインケル伯爵は、その様子を眺めていた。
王都が機能しない中、ハインケル邸は対魔族の本部の扱いとなっている。
他の諸侯は王都へ注力しているため、魔物や神子に人員を裂けない。それが現状だった。
「これほどまで長引くとはな」
王都が占拠された。
それから数年も経った。本来であればありえないことだ。
王都は関門を閉じても自給自足が可能となっている。
非常に堅牢な造りの都市であり、城だった。
外部からの侵入など、不可能と言わしめるほど。
そのすべてが、王都奪還を困難にしていた。
そうして、神子を王都に迎え入れることのないまま、初の魔物族討伐を迎えることとなった。
今回の召喚は三人目の存在、座標のずれと想定外のことがあった。
今回の魔物の討伐も、また記録とは違っている。
「ふむ」
椅子から立ち上がる。
ここも喧騒が聞こえてくる。
静かなところに行きたかった。
少し、休みたいと思った。
扉を開けると、廊下の先に神子が二人で話しているのが目についた。
二人は、ほとんどの時間を共にしていた。
少し前まで、そこにはもう一人の姿もあったが。
「ハインケル様」
二人が気づいて、ハインケルのそばまで駆けてくる。
「廊下を走らないでいただきたい」
「失礼しました」
「ごめんなさい」
つい、小言が口から出る。
「遠征の準備は」
「イネスさんたちが……」
「私たちは、あまり関わっていません」
「あぁ」
過保護な男らしくない。
多少の面倒に目をつむっても、準備に携わらせることは神子たちの安全につながる。
どこに、何があるか。
誰が、どこにいるか。
それを知り、判断することが、生死を分けることもあるというのに。
「イネスは……全く。忙しそうだな」
準備は彼が指揮をとっている。
今は準備の詰めだ。忙しいに決まっている。
「ハインケル様」
那毬が名を呼ぶ。
「行って、きます」
「行ってきます」
誠も那毬の言葉に続く。
「……出立は明日のはず。急きすぎでは」
「そうかもしれません」
「でも、言わないよりはいいかな、って」
明日、彼らはここを出立する。
必ず戻る保証はない。
今までは魔物の討伐も安全だったかもしれない。
けれど、想定外の続く今回は。
この、魔王との戦いは。
どうなるかなど、わかるはずもなかった。
「必ず、また」
そう、言葉にすると、二人はふっと微笑んだ。
「はい。必ずまた」
「また、お会いしましょう」
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