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その、答えは

伏線回、と言ったらネタバレかな?

「留!遅い!」

「す、すみま……せん」


 どれほど叱咤されようと、棒のようになった足は速度を生まなかった。

 長距離走。

 もう何週走っただろうか。

 さっきから何人か、留を追い抜いていく。

 留より一周早く走っている者達だ。


「神子っていうから特別なのかと思ってたけど、やっぱり所詮、おまけの神子ね」

「しかも、力も大したことないらしい」

「じゃあ、なんでこの世界にいるんだろうね」


 そんな陰口が聞こえてくる。


「聞こえて……るわよっ……」


 ぼそり、と呟く。

 地獄耳だと留自身も思うが、彼女は五感が鋭い方だ。

 元の世界では歳を重ねて視力は落ちたが、他の感覚は健在だった。

 今の声はシャズとグリフォナ、エンリだな、とあたりをつける。

 記録係で、今回は走っていない連中だった。

 体力はなかなかつかなかった。

 同期の訓練生の中で、こうして遅れをとることは多い。

 元の世界で逆上がりすらできなかった人間だ。

 だから、覚悟して軍に入った。

 誰よりも覚悟して。

 けれど、訓練も人間関係も辛いことには変わりない。


「ザイン教官からして、あの神子に厳しいよね」

「あー、確かに」


 クスクスと笑う声。

 おまけなんてものは、大体こういう扱いだろう。

 今更悲観することはない。

 その場で殺されなかっただけマシというものだ。


 ――それにしても。


 留は走りながら、先日のことを考える。

 那毬と誠に会いに行った時のことだ。

 彼等も彼等で、厳しい状況に置かれている。


 ――魔物の討伐。


 ハインケル伯爵の屋敷で読んだ本の中には、魔物の事が書いてあるものもあった。

 初期の魔物は比較的知能が低く、弱いとされてはいるが、比較レベルが全く分からない。

 しかも今回は集落一つを占拠しているときた。

 中の様子は誰もわからない。

 占拠後集落から出たものは一人もいない。

 誰一人として――。


「ちょっと、待って」


 思わず、那毬は足を止めた。

 つまり、どういうことだ。

 思考をめぐらす。

 頭をよぎった引っ掛かりを、今度こそ掴まなければ。


「何してる!」


 走ることをやめた留に、ザインが怒鳴りながら近づいてくる。

 しまった、と思った。

 が、もう遅い。


「……とりあえず、一周歩け。あとで罰を言い渡す」

「すみません」


 意外にも、ザインはさほど怒りを見せなかった。

 理由はわかる。


 ――酷い顔をしている。


 留を見た瞬間、ザインは顔をしかめた。

 怒鳴ろうとした意気は消えた。

 それほどまでに、留の顔が、青ざめていたのだ。

 とりあえず、急に走ることをやめては身体に触る。

 そう判断して、ザインは一周歩くことを命じた。

 彼は厳しいが、状況を見て、判断することには長けているようだった。

 留が走ることをやめたことに気づいた。

 留の尋常ではない様子に気づいた。

 彼はちゃんと、「見て」いた。


 では。


「これは、どう判断すべきだ?」


 思考に引っ掛かっていた棘は抜けた。

 あとは、これを那毬と誠に伝えるだけ。

 そう約束した。

 けれど。


 ――伝えるべき、だろうか。


 黙々と歩きながら、留は考え込んだ。

 


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