一時の再会
「この場合、どうすればいいんだ?」
「魔物の討伐、か」
ため息を吐く。
とうとう、始まってしまう。
そんな感じだ。
訓練ではない、命のやり取り。
「へぇ……そんなことになってるの」
あるはずのない第三者の声に、二人は同時に振り返った。
誰かに聞かれていたならば、問題だ。
しかし、その姿を目にして、二人は驚きと同時に安堵した。
「留さん!?」
自分たちよりいくらか質素な格好をした、懐かしい仲間の姿がそこにあった。
「静かにね。抜け出してきてるから」
留の背後には彼女の創った門が建ち、門の向こうには暗い空間が広がっていた。
「元の世界的には数か月ぶり、って感じかしら」
そう言って手を振る彼女は、数か月前とあまり変化が無いように思えた。
「本当よ。なにしてたの」
「訓練に慣れるのにまず数か月。生活リズムを把握するのにこれまた数か月」
留は肩を竦める。
「このタイミングなら、多分二人は部屋にいて、このタイミングなら、私がこうしている事がばれることはない」
その確証が得られたから、彼女はこうして門を繋げた。
もともと彼女も出入りしていた居室だ。
門の創造は当の昔にすんでいた。
「心配したのよ。連絡の一つも寄こさないで」
「手紙は全部検閲入るしね。正直余裕なかったし」
「訓練ハードなのか」
「そりゃ……文化部にはきついっすわ」
彼女の体力の無さは、折り紙付きだった。
一瞬で、彼女の表情がゆがむ。
訓練の内容でも思い出したのだろう。
「その割に、たくましくなった様子はないが」
二の腕は、柔らかいままだった。
「どっちかっていうと精神鍛える感じなのよ、魔術兵。まぁ最低限の体力も付けるんだけど」
その、最低限の訓練がつらい。
「まぁ、それより、目の前の問題について話そうか」
「……そうね」
「私はあと十分もしたら戻らないといけないしね」
「次に来れるのは?」
「一か月後」
「……そう」
それは、ひどく先のことだった。
けれど、次の約束があることに安心する。
「魔族の討伐って言ってたわね」
「そう。集落が占拠されたって」
「出入りが途絶えたと」
簡潔に状況を伝える。話を聞いた後、留は考え込んだ。
「へぇ」
固い表情だ。
「なんか、嫌な感じね」
留も二人と同じ印象を受けたようだった。
けれど、それをうまく言語化できない。
「ちょっと気になったことがあったんだけど」
「何」
「思い出せない」
それは、次から次へとくる情報に呑まれて奥へと追いやられた。
「頼みの綱が」
がっくりと、那毬と誠は項垂れる。
彼女の発想は、時に核心に迫る。
その閃きに期待していたのだが。
「討伐の出発は?」
「準備をして、8日後」
「次には間に合わない訳ね」
留が考え込んだ。
時間も迫っている。
「手紙にも書けないしね」
「縦読み」
「それで反省室送りの子なら知ってるわよ」
「厳しい」
「優秀な軍隊よ、ほんと」
ハインケル伯爵の軍は、素人の留が戸惑うほど、規律が取れた優秀な軍だった。
だからこその、不自由だった。
「あぁ、行かなきゃ」
タイムリミットだ。
「何か思いついたら……いや、仕方ない」
いつ思いつくか、思い出すかわからない。
「出立前に……」
危険ではあった。
けれど、二人のためにできるだけの事はしたい。
「わかった」
「おう」
留の提案に、二人は頷いた。
「じゃあ、行くわ」
「無理するなよ」
「そっちもね」
次に会うのは一か月後。
それも、初の討伐がうまくいけばの話だ。
無事に三人が揃う保証はない。
「またね」
「あぁ、また」
「また」
無事に会えることを祈って。
また、なんてたった二文字が、こんなにも思いに満ちた言葉だとは。
元の世界では思わなかった。
また。
どうか会えますように。




