彼の決意
黄昏時。3人は夕食を終え、居室に戻っていた。
電球などないこの世界の夜は、早く暗い。
「……留さん、那鞠さん大丈夫か」
「死ぬ」
子どもとは思えない暗い声で、留が答える。
「疲れた」
日中みっちりと、魔術と剣の訓練を受けた。
午前に歴史などの講義を終え、午後からは体力と精神力をひたすら苛め抜く。
体力のない留と那鞠は、毎回ついていくのがやっとだった。
「休んではいられないわ……」
布団に突っ伏したままの那鞠がいう。
「早速読みたい文献が…。ていうか、歴史の講義で気になるところが…」
彼女たちの探究心に、誠は驚くばかりだ。
「今日は休んだらどうだ。子どもの体に、無理は禁物だと思う」
「……」
その言葉に、二人の心が大きく揺れるのがわかる。
「……寝たい」
「連日寝不足である」
もはやいつもの口調ですらない。
「おやすみ」
誠がそう言うと、二人は無言で手を振った。
おやすみなさい、ということだろう。
しばらくすると、静かに寝息が聞こえてきた。
二人とも寝たようだった。
それにしても、と思う。
この二人は仲がいい。
思考も知識も似ているところが多い。
幼馴染だからだろうか。
彼女たちが阿吽の呼吸でできることが、自分だけできない。
そう感じることもある。
それではダメだ。
足を引っ張ることになる。
観察をして、思考を繰り返して。
近づかなければならない。
足手まといにならないように。彼女たちを守れるように。
夕方、ケイが誠にだけ聞こえるように囁いた。
ーー準備、できたぞ
それは、自分が彼女たちの役に立てるだろう数少ない事柄の一つ。
この世界のヒトを、暴く。
同じ人間なのか、違いがあるのか。
医師の倫理に反することかもしれない。
この世界の医学に貢献しようとは思っていない。
けれど。
この行動が、この少女達の、何かの役に立つのなら。
この手を、汚してもいいと思った。




