こんにちは異世界2
空に昇る二つの月。
巨大な花。
未知の生物。
小さくなった身体。
「おぉ、これが異世界トリップ…!」
ようやく目を覚ました留は、現状を見ると平静の声でそう言った。
「あぁぁ…言っちゃった」
その言葉に、那毬は肩を落とす。
おそらくそうだろうとは思っていても、けして口にしなかったその言葉。
世に言う異世界トリップなるものを己が現在進行形で体験しているという事実を改めて突き付けられ、那毬は頭を抱えた。
「…っていうか、なんでそんな冷静なの」
極彩色の貝殻をつついて遊んでいる留を恨めしげな眼で見る。
「え?驚いてるよ?」
「嘘つけ!」
驚いている人間が、貝殻をつついて遊んでいるだろうか、いや、そんな訳が無い。
「でもまあ、これからどうしようねぇ」
貝殻で遊ぶことをやめた留が立ち上がる。
「異世界トリップものって言ったら、勇者なり魔王なり巫女なり、何らかの役目を負わされて飛んでくるって感じだけど」
「児童書では王様に登り詰めたね。でもそう言うのって、イベントが発生するか、誰か迎えに来たりしない?」
二人は少し、ほんの少しオタクなのだ。その辺の情報量は、並よりはあった。読書家、と言葉を変えてもいいかもしれない。
「でも迎えに来て、それが味方かって判断は出来ないよね」
「…確かに」
異世界トリップをするような年齢は越えた、自動車も運転できる年齢に至っている二人は、妙に慎重だ。
黙り込む二人。
「…とりあえず、ちょっと探索してみようか」
「ここにいてもしょうがないしね」
しばらくの沈黙の後、留が後ろの森を指す。
那毬も肩をすくめて同意する。
「…あの花、食人植物だったら死ぬよねー」
おもむろに、留がつぶやく。
「冷静に言わないで!」
「っていうか、服ぶかい」
「身体は子どもサイズになったけど、服はそのままだもんね…」
「視力よくなったよー」
もともと眼鏡をはめていた留は、眼鏡を外して森をみる。
「あのさ」
「なに」
「…私森に入って元の場所に戻る自信無いんだけど」
「………」
またも留が口を開いた。
「あの太陽ってどの方角かなぁ。この世界、ちゃんとまるい星っていう保証もないよね」
「……」
「この世界の法則何も知らないもんね、私たち」
ははははは、と乾いた笑いを漏らす留に、那毬は深いため息を吐いた。
「探索は、また次の機会ってことでどうでしょう」
「賛成」
あはは、とまた笑って、留は腰を下ろした。
「さっきのの話しさ、私、たとえ迎えに来てもらったとしても、困る」
しばらく海を眺めていると、那毬が口を開いた。
「なんで?」
留の疑問に、なぜか力強い答えが返ってきた。
「人見知りだから!」
「……まぁ、そうね」
振出しに戻る!




