箱の中で2
「これからのこと、かぁ」
「何から決めるか」
布団の上に座り込み、三人は顔を突き合わせる。
「能力の紹介は済んだから…これをイネスさんたちに話すか話さないか、からかな」
「二人の能力については話していいんじゃない?」
留が言う。
「なぜ?」
「話を聞く限り、すぐに魔王と戦闘させられるわけでもないみたいだし、能力がはっきりすれば今日みたいな乱暴なことはしない…はず。しばらくは」
「頼りない言いようだな」
誠が苦笑する。
「この世界のスタンスがわからんからね。でも『箱』と『鍵』がはっきりすれば、そこからまた情報を得られるかもしれない。逆に下手に隠していると、最悪殺される可能性はあるわ」
「そこまでするか?」
「昼のことを忘れたとは言わせない」
すでに一度、彼らは猛獣に殺されかけている。
確かになー、と誠は相槌を打った。
「どうも『箱』と『鍵』の神子は任意で呼び出せそうな感じだったし」
「なんか従わなければ死んでも致し方なし、とか思ってそうだもんね」
「代わりがきくと考えていたほうがいいかな」
三人は溜息をついた。
どうもこの世界は、三人には優しくなさそうだ。
「でもそうなると留さんはどうなる?」
『箱』と『鍵』ならば安全かもしれない。だが、留は『門』の神子だ。
「そこなんだけどさー」
「うん?」
「まぁ、危険な能力でもないし、たぶん大丈夫だとは思うんだけどさー」
留は布団に寝転がる。
「その前に……神子に関する情報が欲しいんだよね…」
「それは欲しいが…やけに慎重だな」
「……カン、っていって、納得する?」
「しない」
「だよねぇ」
門の能力に目覚めたとき。留には一つ、引っかかることがあった。
だが、まだ二人には言えない。
不確定な話だ。
話してしまえば期待を持たせてしまうことになるだろう。その状態が、果たして幸福なのかもわからない。
そしてその考えが正しければ、留の能力はこの世界の意思に背いてしまう。
それを、この国の人間が、許すだろうか。
「……神子についてもうちょっと調べてから私の能力はお披露目しようかな」
「だが、いつまでも能力を隠すことはできないだろう」
「能力を偽る」
「どうやって?」
那毬と誠は同時に首を傾げた。会ったばかりだというのに息が合っている。
「ん―…こういうのはどうだろう」
留が門を作り出した。また鳥居の門だ。
指を通すと、向こう側へとすり抜ける。
「何の変哲もない鳥居だな」
どういうつもりか、と留を見る。
「たぶんだけど、この世界に鳥居はないでしょ」
「まぁ…文化が違いそうだしなぁ」
「この鳥居を、別の用途に使う」
「どうやって」
「ホッチキス」
「は?」
「え?」
那毬と誠が豆鉄砲を食らったような顔をした。