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むだい。  作者: 伏見 ねきつ
最終章
21/21

 ∞


 夢を見た。

 短い夢を。

 それは昔の暁人ちゃんだったんだろう。

 それがぼくの勝手な妄想だか真実だかわからないけど確かに暁人だった。

 目を開けると、白かった。

 多分病院だと思う。

「し………………諸行さぁあああん!」

 愁ちゃんらしき声。

 肩をがしっと捕まれ前後に頭を振られる。

「生きてます!?本物ですか!?お元気ですか!?れれれのれー!」

「ちょ…………愁ちゃ………頭が揺れ…………。」

「はっ!ごめんなさい?」

 ぱっと愁ちゃんは手を離す。

 やば、ぐわんぐわんする。

「生きてやがった……。」

 といったのは緋咲さん。

 やっとまわりが見えてきた。暁人に愁ちゃんに緋咲さん。

 フルキャストだ。

「どうもです。」

「元気そうだなぁ。死にかけてたのに。」

「元気ではないですけど。」

「元気、元気。超元気。なー?暁人。」

「……………。」

 暁人はふてくされたようにそっぽをむく。

 うぅ………。

「なにやってるんですか。暁人さん。諸行さんが生還しましたよ。生きているのがハッピーじゃないんですか?」

「………いや、守るとかいったくせにすぐに倒れた輩なんて知らない。暁人ちゃんはそんな人知らない。ダレデスカアナタワ。」

「………すみませんでした。暁人様。」

「あれ?暁人ちゃんの名前知ってるの?じゃあ知り合いかなぁ。」

 うぅ………暁人の態度が冷たい。

 悲しいよ…………。

「知り合いです。お友だちです。暁人ちゃん。」

「…………おかえり。」

「………ただいま。」

 うん。………良かったのかな。

「仲がよろしいですね。お二人さん。」

「そうだなー。」

「煩いです。緋咲野郎。」

「愁野郎も煩いと思うが。」

「黙れ。……あ。まちがえました。えへ。黙ってください。」

 そろそろ、それが愁ちゃんの持ちネタになりそうだな。

 そんな悪口キャラじゃなかったような気がするけど。

「諸行雫、愁。夕焼暁人。は無事生還いたしましたってことで。……………来ていただこうかな。雫君よ。ちょっと上がマジギレしそう。」

「緋咲。生還はしてるけど、これからはどーすんの?暁人ちゃんのせいで雫死ぬよ?」

 さらっと死ぬ。宣言をされた。

「あー。あーあー。忘れてた。」

「ちょ…………。」

 ぼくの命を……。

 大事な生命を………。

「瓶ある?魔法の………ってわけじゃないけどむしろ水が魔法だけど、とりあえず瓶。」

「あれ………。」

 どこにやったっけ?

「暁人ちゃんがもってる。倒れたとき、雫が落とした。」

 暁人ちゃんは一回屈み、瓶を持った手をあげる。

「だが、簡単には渡さないのが暁人ちゃん。さぁ!取引だ!緋咲!お前が得意な取引だ!」

「はい?」

「雫がそっちにいくなら暁人ちゃんもいく。」

「…………。」

「………。」

 空気が凍った。

「いやいや、無理無理。無理無理無理無理無理無理。なにいってんだよ?いま、死んでないことに感謝しろよ。」

「いやいや、無理。」

「いや、無理じゃなくて。真面目に無理だって。諸行雫でつってどうにかしてるんだぜ?」

「じゃあ雫が、暁人がいないといかないよーんって言ってた。ねー?雫。」

「え。ぼく?ぼくとしては危険だから来てほしくないけど、守らなきゃいけないし近くにはいてほしいかな。」

 あくまでも近くにいてほしいだけだけど。

「ほらほらほらほらほら!雫がそういってるんだよ!」

「俺に言われてもな……。」

 そりゃそうだろ。

 一回裏切ったやつが戻るなんてかなりの無理だろ。

 緋咲さんが可哀想すぎるよ。

 実際のところ緋咲さんは無関係なんだよ。

 ただの説明役みたいになってるけど。

 うん。じゃあここはぼくが一役かってでよう。

「じゃあぼくが、上の人達に説明するので緋咲さんは軽くフラグを立てておいてください。『雫が言いたいことあるらしいぜ。』ぐらいは言っておいてください。」

 まぁ、黒地茗(くろちめい)とか册利闇信(さくりやみさね)ぐらいだろう。

 あの辺が許可をくれればどうにでもなる。

「………おう。」

「暁人もそれでいい?出来るだけ頑張るから。」

「しょうがないからいいよ。頑張らなかったら殺すから。」

 暁人は緋咲さんに例の瓶を渡す。

 というか、投げ渡した。

「……あっぶね。……で、暁人もかるく話したけどこの余って…………るよな?余ってるよな?いや、微量に残ってる。……をここにいる愁の野郎以外にぶっかける。」

「命をわけるっていうことですね。」

「そう。皆、後六十年ぐらい生きれるようになると思う。……やったことねーからわかんねーけど。」

 本当に、緋咲さんには迷惑ばっかりかけてるよ……。

「そっんな、都合のいいハッピーエンドのための設定があっていいのかって思うけどね、暁人ちゃんは。」

「そうなんだけどね。」

 まぁ、あるものを使っちゃダメなんてきいてないし。

 使いましょう。

「じゃあやろうぜ。」

「えーもう?」

「いや、早くやらねーと雫がいつ死んでもおかしくねーと思うんだが。倒れた理由だって絡んでるだろうし。疲労、能力の使いすぎ、極度の緊張、寿命。誰のせいだか知らねーけど。」

「だ………だれのせいだろうね!」

 暁人のせいだと…。

 いいえ。なんでもありません。

 あくまでもぼくのせいでした。

「皆さん、本当にすみません。」

 愁ちゃんは呟く。

 小さく呟く。

「すみません。私のせいで、こんなことになってしまって…。」

「なにいってんの?愁ちゃん。」

 ぼくはいった。

「………。」

「生まれた子供には罪はないっていうように愁ちゃんには罪はないってことだよ。あくまでもぼくが勝手にやったことだし。」

「そーだよ。暗くなっちゃダメ………って!愁さん…様…ちゃん…いや、愁様に敬語を使っていない!暁人ちゃん!やばやば!」

 そんな大問題なの!?

「いや、そこまで気を使わなくていいですよ。最初から破るつもりでしたが暁人さんとの約束破ってしまいましたし。」

「………む。」

「私はハッピーです。」

 ハッピーならいいんじゃないかな。

 なにが発端でハッピーがはやってんだか知らないけど。

「暁人ちゃんもハッピーかな。一応。」

「俺は完全に巻き込まれただけだな……。」

 本当にすみません。

「ぼくは……ハッピーかな。幸せです。」

 生きていればハッピーっていったのもぼくだしね。

 この辺で幕を閉じておきましょうかね。

「じゃあぶっかけんぞー。」

 緋咲さんは瓶の蓋を開け、瓶ごと空中へ投げる。

 瓶から出てくる水は赤色にキラキラとひかり、きれい。

「……………。」

 言葉を失う。

「きれいだね。」

「……うん。」

 これからもぼくらは生きていくんだろう。

 この先はきっと楽にはいけないだろうけど。

 夢は百パーセントは叶わないかもしれないけど幸せと感じられるなら叶ったと言えるんじゃないかと思いたい。

 どんな未来が待っていようとも、ぼくらは前に進んでいく。



                              END_


ありがとうでした!

こんな話を読んでいただいてせんくゆー!

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