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屋上に上ると夜の空が広がっていた。
「誰もいないですね。」
「いるよ。正面に。多分。」
暁人はこう答えると手を離した。
「………?」
「手を繋いでると危ないし。取りあえず離そうよ。」
「おーけい。」
正面にいる?
見えないし。なにも感じないよ。
いないんじゃ…………
「………!」
音もなく近くに風を感じた。
いる………確かに。
「…………愁ちゃん。」
「なんですか?」
「わかる?」
「えぇ。なんとなく。」
「じゃあ背中は任したよ。」
「任せてください。」
とりあえず、意識を集中させる。
正面すぐそばになにかがいる。
女なのか男なのか子供なのか大人なのかわからないけどいる。
………たしかにいる。
「はじめまして。Aさん。」
「………。」
会話はなし……か。
「いっけぇぇええ!!雫!!」
暁人の声がどこからか聞こえて、それが合図だったかのように空をきって殴られた。
否、ガードした。
「……。」
思ったよりやりにくいかもしれない。
見えないって。
何を殴っちゃうかわからないし。
暁人……離れていて!
正面にあるなにかを拳を握り殴る。
「………っ。」
パシッとガードされてしまう。
この感触は手……腕?
違う。足だ。
足でそのまま蹴り飛ばされ、後ろにバックステップで下がる。
「諸行さん!右!」
「わかってる。」
うっすらだけど右にいるのはわかる。
いるのはわかるけど、追い付けない。
速い。
でも、軽いかも。攻撃が。
暁人と同じく、女だからなのかわかんないけど軽い。
男と女はやっぱり違うんだね……。
殴られるの承知で無理矢理いけないこともないかも。
「愁ちゃん。」
「わかりました。」
じゃあいいか。
「右にまだいるよね。」
「えぇ。」
「…………。」
ぼくは、全身の力をこめて殴った。
足でのガードも一切気にしないで。
一気に攻撃をしかける。
「………。」
「…………。」
Aの頬を殴ろうとして止める。
「あれ?」
止めたところでAに蹴り飛ばされる。
愁もろとも後ろに吹き飛ばされる。
「…………っ。」
痛い。けど。
もうちょっとで見えそうなんだよ。
パンツが。じゃなくて。
Aが見えそう。
Aが誰だかがわかりそう。
意識を集中させる。
意識を集中させすぎて頭がぐらぐらするけど。
ぐちゃぐちゃと混ざっていくみたいな感覚。
でも、見なきゃいけない気がする。
一瞬、脳に痛みがはしる。
「あ………………。」
透けて見えた幽霊みたいなぼくの目の前にたってる人。
それは…………
「暁人………………?」
ぼくの目の前にたっている少女、夕焼暁人は………
泣いていた。




