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鍵はポケットの中に入っていた。
親は帰ってきてるだろうけど、まぁ一日ぐらい大丈夫なはず。
昔は帰らないことなんて日常茶飯事だったし。
今更探されても嫌だし。
「いい加減、ぼく疲れたんだけど………。」
自転車に三人乗りはさすがにきついって。
暁人が後ろに座って、愁ちゃんは椅子に座っていて、ぼくは立ち乗り。かれこれ、数十分は立ち乗りをしている。
「あーそこ右ねー。暁人ちゃん代わってあげようか?優しい暁人ちゃんが。」
「いや、いい。」
実は後ろに乗るのが恐いなんていわない。
後ろに乗るんだったら走りたい。
なんていわないし。
「あっれー?どうして代わらないんだろう?おかしいな、暁人ちゃんが代わってあげるって言ってるのに。………もしかしてもしかして?後ろが恐いのかなぁ?」
「…………。」
無駄に勘がよくてムカつく。
「確か、諸行さんは自転車の後ろとか恐ろしいらしいので乗れないらしいですよ。昔きいた話ですが。」
………愁ちゃん………。
無駄なことを……。
「そーなの?へー。じゃあ尚更代わってあげないと。そこ左。」
「了解。……代わらなくていいよ。ぼく頑張るし。」
「そー。」
「……………女の子にそんなことさせないよ。」
「そ。頑張って。」
「頑張る……。」
「というかもうすぐだから。頑張れ。」
「本当に?そんな遠くないんだ。」
「いったでしょ。そんなに遠くないって。自転車で行ける距離だよーっていったよ。」
「そうだったね。」
こんな近所に悪い人がいるかというと寒気がする。
悪い人……?違うな、あの組織に手を出したばかな人だ。
暁人もそんなんだろうけど。
その、ばかな人(A)を倒したら本当に暁人は帰れるのかな。
緋咲さんの話をきくかぎり、無理そうだとしか思えない。
だとしたら、何故戦いに行くのかがわからなくなってくる。
正義のためか、自分のためか、暁人のためか。
わからない。
「ここだ。」
「ここ?」
暁人が示した先は壊れかけの教会だった。
こんな場所あったっけ。
神秘的というよりは廃れた、忘れらされたという感じがする。
「ここに彼女がいる……。Aが。」
「彼女?」
「女だって言ってなかったっけ?」
「私も、諸行さんもきいてないですよ。そんな情報。」
自転車から降り、その辺に適当に止める。
まぁ、怒られないだろう。隅に寄せといたし。
「ねえ、暁人。」
「なに?あぁ、ぼくは屑です。って言いたいのかな?やっと自覚を持ったってこと?」
「ぼくは屑です!なんていわないし!自覚っていうか、屑じゃないよ!?」
「あれ?そうなの?」
「屑じゃないよ!」
「へー。で、屑なに?」
「……………いや、暁人がもし、緋咲さんのいう通り逆賊として追われちゃってたとしたら本当に暁人は帰れるの?」
「あー。それ?緋咲さんがなにも知らないだけ。ちょっとコテがありまして、帰れますよ。暁人ちゃんは。」
「……………そうならいいんだけど。」
「しっかりとあの子にも会わせてあげる優しさつきでお返ししますよ。一応、君には感謝してるし。」
「感謝ってさ。なにに感謝してるの?」
ぼくに?
ぼくの目じゃないの?
ぼくを散々痛め付けたこの目でしょう?
「感謝ってそりゃぁ……。」
「さっきから考えてたんだ。この目がないぼくは利用価値がないってさ。暁人とぼくは出会ってからまだ二日しかたってないんだよ?なんのために、ぼくなんかを大切にしてるのかがわからない。」
「……………。」
「目?レア?珍しい?役立つ?それがなにさ?」
「…………。」
ぼくが嫌な目にあってきたかなんて皆知らないのに。
便利?役立つ?
だから?
ぼくは迷惑なんだよっ!
「なにもいえない?そ。じゃあいいや。………作戦は最後まで付き合うよ?でもこの作戦が終わったらすべてなかったことにする。忘れる。暁人も忘れる。あの子も忘れる。それでいい?」
「………。」
「これだけは言っておく。ぼくはこの目が大嫌いだ。」
「………………私はその目、好きだけどなぁ。……じゃ、暁人ちゃんは先いってるから。」
暁人は教会の中へ入っていった。
暁人が振り向いた時に見せた泣きそうな顔はずっと忘れられそうにない。
「…………やっちゃった。」
後に残るのは後悔。
それ以外はなにも残らなかった。




