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あきとちゃんがかわいいですので一度読んでいただけたら光栄です。
キーンコーンカーンコーンと学校でお馴染みなチャイムがなる。六時間授業が終わり、下校時間。
ぼく、諸行雫に「一緒に帰ろうぜ。」なんて声をかけてくる人なんかいなくて。
目の前を通りすぎていくのはこの世の者でないものたち。
つまり、お化けと呼ばれるものたちのみ。
それはたまに立ち止まり、ぼくをみて話しかけて来たりするのだがぼくにはその声が聞こえない。
見えるだけ。
声は聞こえない。
ぼくは生まれながらにして、目が紅かった。
両親は二人とも日本人。
そんなわけないと医者に言われ、父は母の浮気を疑い、離婚。
ぼくが二歳の頃のはなし。
母はぼくがそんなことを覚えていないと思っていて、一年足らずで再婚。ぼくはその人がお父さんだと教えられた。
本物じゃないのに。
今のお父さんはぼくの父になろうと必死になっていた。いい人なんだと思う。
まぁ、仲良いし。
ぼくは騙されている振りをして、母と父は騙し続けている。
そんな感じ。
「………………。」
そんなぼくの目が黒くなり始めたのは五歳を過ぎてから。
母、父は喜んでくれた。
まさかの赤飯を炊かれた。(なぜか北海道地方の甘い赤飯だった気がする。)
でも、黒くなればなるほど世の中の闇を見るように、幽霊が見えるようになった。
同時五歳のぼくは訳が分からず、幽霊とも仲良くしていた。
言葉は通じなくとも、ジャスチャーや口パクである程度わかるし(話せない人と話せる自信がある。)。
それがぼくが気持ち悪がられる始まりだった。
そりゃ空気と遊んでいるようなものだし。
気づいたのはもう少し年をとってからだったから噂は広まっていた。
それで幽霊さん方を見えなくする方法を思い付いたのが十歳の時。
意識を集中させる。
だった。
だけど、それをするとまた目が紅くなってしまう。という弱点が。
あと、疲れる。
またこれが、目が紅くなっているのに暫く気づかなかった。
その頃はもう友達なんてものいなかったから。
「ねー死神くん。」
そうそう。
死神なんてあだ名つけられて……。
「っえ!?」
ぼくの正面にしゃがんでたのは女子生徒………?
目は黒く、暗めの茶髪。(怒られるよ。)
誰?
この学校にはこんな人いないはず。
記憶力だけが売りなぼくなんですから。
「どーも。暁人です。夕焼暁人。はじめまして。死神くん。」
初対面のところ悪いけど、意識を集中させる。
目は紅くなるだろうけど、みんな知ってるだろうし。別に構わない。
「………………。」
意識を集中すると見えない。
つまり、この世の人じゃない。幽霊。お化け。霊。
まぁ、たまにうっすらと声が聞こえたお化けさんもいるわけだから、こんなこともあるか。
「………なに?」
周りを伺いながら静かな声で答える。
「なにって。なんだよ。………うーん。ここじゃ話にくいな……ついてきてよ。」
「嫌だよ。ぼく、帰るんだから。」
「じゃついてく。」
………………。
「………正門出るまで話しかけないでくれよ。」
「ほーい。」
鞄を手に取り、早足で教室から出る。
階段を降り、靴を履き替え、校舎を出る。
「……ねーまだ?」
「…………。」
校庭を突き抜け、正門を抜ける。
そして、細い路地に。
この路地はぼくの家まで一本で続いてるため、よく使っている秘密の道。
「で、なんだよ。」
彼女に振り向かず歩いたまま言う。
「もっと遅く歩いてよ。屑。」
「………。」
「遅く歩けって言ってんだよ。」
「…………。」
少し歩くペースを落とす。
「はっ。少しは物分かりがいい犬じゃない?ところでさ、狗と駒っていう字似てるよね。私の駒よって言おうとしたら私の狗よって言っちゃいそうな感じ。」
こいつ、性格悪いぞ。絶対。
うわぁ逃げてぇ。
いくら、お化けと言えどやっていいこととやっちゃいけないことがある。
「ぼくは貴方を無視してすぐに帰りたいんだけど。」
「駄目だよ。君は勇者なんだからっ!」
「………。ファンタジックな嘘はやめてください。」
「だから私達を守ってよ。」
「よくある台詞を吐かないでください。」
「つまんねーの。」
「ぼくに楽しみを求めるのが間違ってると思うよ。」
「あーそうか。」
「理解されたっ!」
自分がいい始めたことだけど理解されたくなかった……。
「勇者じゃなかったら君はなんだよ。うーんうーん。」
「………死神でしょう。」
あだ名だし。
呼ばれたことないけど。
「えー神ってついてるのなんかムカつく。赤目の死神。ありがちー。きもー。」
「ありがちだからこそつくと思うんだけどな。」
あだ名なんてさ、誰かがひらめいたらそれがあだ名になるだけだろ。
「そー?私は嵐の風雲って呼ばれてるけど…。」
「ワケわからないあだ名。」
ファシズムは分からないこともないけど。
独裁者。って意味で。
「君はさ、暁人って呼んでよ。嵐の風雲とか厨二病みたいでやだし。」
「死神って呼ぶのもやめて欲しいんだけど。ぼく。」
「じゃあ雫って呼ぶからさ。おけ?」
初対面に呼び捨てもどうかと思うけどね………。
「で、暁人…ちゃん。なんの用があってぼくに話しかけてきたのさ。」
「そーいやさー。君の字って『雫』って書くじゃない?その字ってしずくって読まないっけ?」
いやいや話聞けよ。
てゆうか、そのネタはかなり終盤までとっておいてもいいと思うんだけど。ぼく。
「あの、本題は?」
「あ?」
「………。」
「で?なんで?」
「……父親だか母親だか分かりませんが、零って文字を雫に書き間違えて提出したらしいです。」
ぼくは父親が間違えたときいたんだけど、今いる父親のわけがないから、不明。
「ふうん?馬鹿なんだね。だから君も馬鹿なんだ。なるほど。」
「今、出会ったばかりだった気がするんだけど。」
「あったのはさっきだけどね。」
「?」
あったのは?
暁人……ちゃんはぼくを知っていた?
あぁ、死神で有名なぼくだし、知ってるか。
知ってるか?
「……………。」
今、通りすぎたおばさんにすごい顔で見られた。
やば。
また空気と遊んでるわ。あのこ。みたいな。
「知りたそうな湿気た顔してるから教えてあげる。雫、君に対する用は君の家で話すよ。あまり、人に聞かれたくないからね。」
「ぼくの家は無理だよ。両親がいるし。」
「いないでしょ。少なくも八時までは。」
「…………。」
なんで知ってるんだよ。
共働きの両親ですがなにか?
そんなこと誰にもいったことないし……。(話す人がいないだけ。)
うー頭いたくなってきた。
「おーい?雫?目が紅くなってるよ。気持ち悪いなぁ!」
……まじ?
気持ち悪いな!は要らなかった気がするけど、目が紅くなってるって本当?
知らなかった……。
あれ…。なんか不思議。
目、紅いなんてはじめて言われたからかな。
絶対目が紅くなってるのは暁人ちゃんの性だと思うけどね。
「なんで、ぼくのことをそんなに知ってるんだよ。」
「ひぃみーつー。」
にやぁと笑いかけてくる。
笑いかけて来ないで欲しいんだけど。
怖いよ。
「暁人ちゃんは秘密主義なんで教えません。君の家まで後数分ってことも知ってるけど、知っている理由は秘密でーす。」
「………。」
怖いよ。暁人ちゃん。
逃げたいよ。
お化けだからなんでも知ってるんだねっていう解釈ですらついていけないよ。
「まー後で教えるんですけどね。」
「そ……。」
もう好きにしろよ。
ついていけない。
もーやだ。
久しぶりに人と喋ったと思ったら暁人ちゃん幽霊だしさ。
ぼくのことストーカーかよって思うぐらいなんでも知ってるしさ。
それなら、最初から知り合い設定にしておいた方が楽だっただろ。
「……やあ暁人。元気だった?」
「うん。元気だったよ。」
お。のってくれた。
「久しぶりだね。」
「今会ったばっかりだけどね。」
やり直しは出来なかった。
失敗。
「なに考えてるの。雫。狂った?」
「………うん。狂ってたかもしれない。」
「いつものことだから大丈夫だよ。」
いつも狂ってないよ?ぼく。
たまにも狂わないよ?
正常だよ?
「あーこの辺だよね。君の家。」
「そうだけどさ。」
「えっとーえっとえっと。これだね。」
『諸行』という表札がかかっている一軒家を指す。
「……うん。」
「じゃーお邪魔しよー!」
「嫌だよ。」
「何か言いましたか?雫?」
怖い目をして睨んでくる暁人。
負けないぞ。
「嫌だと言いましたが?」
「ほう?生意気な。暁人ちゃんは怒るとものすごっーく優しくなりますからねぇ?なんでだろ?イライラしてきた。あぁ!屑が喋ったからだっ!ふーしぎー。踏み潰してみよっかな?」
「屑じゃありませんし、踏み潰されたくもありません。」
「チッ。まぁいいや。合鍵あるし。」
「は!?なんていった!?」
あ…………合鍵?
「だから合鍵。ほら。」
暁人がポケットから取り出したのは紛れもなくぼくの家の鍵だった。
…………いや、まだぼくの家のだとは限らない。
「じゃ……さ。ぼくの家をあけてみてよ。」
「いーよー。」
ガチャ。
「ぎゃあぁぁぁああぁああああぁぁぁぁ!」
嘘だ!幻覚だ!まやかしだ!トリックだ!幻影だ!
「煩いな。黙れよ。」
「いや……叫ぶだろ普通。」
「黙れ。屑。じゃー家に入ろっか。」
「ぼくの家だしっ!」
「嘘は良くないよ。君。」
「真実だしっ!」
ばーかばーか!
「私に不可能はないのだよ。君。」
「ありがちな台詞を吐くな。」
「いや、マジで取りあえず入ろうぜ?」
「…………鍵を何処で仕入れたか教えろよ。」
「おけ。任せとけ。」




