森の中でpat2
「ああぁぁーーー!名前きくの忘れてた!」
「というか名乗ってすらいないぞ。よく会話が続いたな。」
そう、本当に、三人とも、お互いの名前を聞くのをすっかり忘れていたのだ。
というか、ホントによく会話続いたな、誰も気がつかなかったとは、だいたいスカラはなんなのだ?私にはあいつが誰なのかきいてきたというのに、本人に聞かないとは、あいつもたいがい頭が悪い――
「レシィア、声でてる、そして、名前聞かなかったのはお前もだから」
「幻聴だ」
「いや、幻聴でもなんでもないと思うんだけど…聞こえてたよな?」
スカラは少年に尋ねるが、
「聞こえてたけど、聞こえなかったって言ったらどうなるのか見てみたいから聞こえなかったよ」
「ほら、お前の幻聴だ。」
「ちょとまて、今の発言ちゃんと聞いてたか?それとも本当に幻聴が聞こえてるのか?いや、もういいや幻聴でも。今日なんか朝から疲労がたまる。何かぶらり一人旅したい気分になってきた」
「疲労がたまる?風邪か?早く寝た方がいいぞ?」
そんなことを、さっきとは打って変わって本気で心配したような顔で行ってくるので…
「…八割お前のせいだよ」
「これ演技?天然?」
少年がこっそり尋ねてくる。
「天然なんだよ。困ったことに」
「大変だね」
そんなことを話している三人。
あれ…んー、なんか、忘れてるような…あれ、なんだっけ…
「あっ、そうだ、自己紹介だ!すっかり忘れてた。じゃあこれ以上話がそれないうちに俺から自己紹介しちゃうね。
俺は、エンジュ。十五。薬師で、あちこち旅してる。…あれ?俺あんまり話すことないや。」
「?それだけじゃないと思うが。」
「いや、好みとか話し出せばそりゃもっとあるけどさ…」
「そういう意味じゃない」
「レシィア、ストップ。俺たちに話せるのはそこまでってことでしょ。初対面の人間に自分のこと全部話す人間なんてあんまりいないよ。」
スカラにたしなめられて、レシィアは仕方なく追求をやめる。
しかし、レシィアが聞こうとしていたことは、スカラが疑問に思っていたことと同じことだった。
「実は俺、長年(短)剣の道を究めた達人なんです。アハ☆」とか言うんならともかく、ただの少年がレシィアの動きについてこられるはずがない。
だって…レシィアは……。
そして、考え事を来ていた、スカラも、スカラにたしなめられて、ふくれていたレシィアも、少年、もといエンジュがスカラの言葉に瞳を鋭く細めたことには気がつかなかった。