さよならを伝えたくて 4章
自分の姿が相方には見えない。
声も届かない。
それなら!
体を借りられる霊質のある人を探す。
こんなものはテレビの中の話だと
眉唾ものだと
生きていた頃は思っていた。
けれど今は、なりふり構っていられない。
相方を死なせないためなら
なんだってする。
通りゆく人に声をかける。
叫ぶ。
手を振る。
誰も振り向かない。
「聞こえてくれ……!」
このままじゃ相方が死んでしまう。
体を貸してくれ。
さよならを言いたいだけなんだ。
彷徨う。
へたり込む。
また彷徨う。
それでも誰とも目が合わない。
もう無理なんだ——
そう思った、その時だった。
波のような人混みの中で
一人と目が合った。
気がした。
勘違いでもいい。
一筋の光に縋るように
人混みをかき分けて駆け寄る。
その人は、こちらを見ない。
焦った様子を隠すように
視線を逸らしている。
それでも構わなかった。
声が届かないなら
身振りでも伝える。
相方がこの世界で生きてくれるなら
なんでもする。
必死に訴える私を
その人は横目でちらりと見た。
そして、小さく丸めた紙を
ぽい、と投げた。
紙は手をすり抜けることなく
私の手のひらに乗った。
驚いて顔を上げると
その人は早口で言った。
「それ、呪いの紙。
短い時間だけ生者に見える。
体は貸せない。
それを使え。
会いたい人にだけ見える。
使えるのは一回きり。
時間は……半刻くらい
じゃあね。」
それだけ言うと
その人は私を見ないまま
人混みの中に消えていった。
信じがたい話だった。
それでも
私の手をすり抜けない紙が
最後の希望だった。
祈るようにそれを握りしめ
私は走った。
相方と過ごした
あの家へ向かって。
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