真相
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剣は折れず、誇りが折れた日
王都の夕暮れ。
フォルティア家の工房の裏庭で、エレナは新たな魔晶石を磨いていた。
そこへ現れたのはアレクシス。
いつものように、落ち着いた雰囲気。
でも今日は、ちょっと表情が固いみたい。
「……王宮から呼び出されたんだ」
「何かあったの?」
「昔の上官が、君の護衛任務に口を出してきたんだ」
その言葉で、エレナはピンときた。
過去が、追いついてきたんだって。
かつての騎士
アレクシスは元王国騎士団所属。
王都防衛を担う精鋭部隊の一員だったんだ。
実力は抜群で、若くして小隊長に抜擢されたんだって。
でもね。
彼の上官だった男――
ガルド・レーヴェン侯爵子息。
血筋だけで地位を得た典型的な貴族騎士。
実戦経験はあまりなくて、功績を部下に頼っていたんだ。
ある遠征任務。
本来なら撤退すべき状況で、ガルドは命令を間違えちゃったんだ。
「進め!功を立てるチャンスだ!」
無謀な突撃。
結果、部隊は壊滅寸前。
アレクシスは独断で撤退を指示して、みんなを守ったんだ。
でも王都へ戻ると――
報告書は書き換えられていたんだ。
命令違反で作戦失敗
責任は、アレクシスへ。
「貴様は上官の名誉を傷つけた」
抗議は聞き入れられなかったんだ。
証言は握り潰されたんだって。
彼は自ら退団を選んだんだ。
誇りは守ったけど、地位は失ったんだ。
いまさらの圧力
そのガルドが、いま王宮で幅を利かせているんだ。
そして言ったんだって。
「素性の怪しい元騎士を王家顧問の側に置くとは何事だ」
表向きは“安全への懸念”。
でも実際は、過去を蒸し返されるのを恐れているんだって。
エレナは静かに聞いた。
「……証拠はあるの?」
アレクシスは首を振る。
「当時はなかったんだ」
水晶が、工房の奥で淡く光る。
「真実、掘り起こせ」
低い声。
掘り起こされた記録
エレナは王宮魔導記録庫への閲覧許可を申請。
過去遠征の魔力通信記録。
通常は保存されない細部ログ。
でもエレナは特殊な解析付与を施したんだ。
消去されたはずの魔力波形。
命令伝達の残滓。
浮かび上がる、当時の実際の指示。
そこには明確に記録されていたんだ。
ガルドの強行命令
アレクシスの撤退指示は二次被害防止のため
改竄は不完全だった。
魔力は嘘をつけない。
公開の場
王宮会議室。
王太子リヒャルト、騎士団長、関係貴族。
エレナは冷静に報告する。
「こちらが当時の魔力記録復元結果です」
空間に映し出される光景。
若き日のアレクシス。
負傷兵を背負い、殿を務める姿。
そして錯乱した命令を叫ぶガルド。
沈黙。
騎士団長が低く言う。
「……命令違反ではない。むしろ功績だ」
ガルドの顔色が変わる。
「捏造だ!」
だが魔導官が首を振る。
「波形は当時の公的水晶と一致しています」
言い逃れはできない。
プチざまぁ
ガルドは爵位を失わない。
投獄もされない。
だが。
騎士団内での評価は地に落ちた。
昇進は凍結。
前線指揮権は剥奪。
名誉を何より重んじる男にとって、それは致命的。
一方。
アレクシスには正式な謝罪と、名誉回復の通達。
復団の打診すらあった。
だが彼は静かに断る。
「今は、守りたいものが別にあります」
その視線は、エレナへ。
王太子はそのやり取りを、静かに見ている。
誇りの在り処
工房への帰り道。
「……後悔はありませんか?」
エレナが問う。
「ない。」
はっきりと答えたの。
「あの日も、今日も、俺は間違っていない」
迷いのない声。
エレナは微笑む。
「では、これからも共に」
水晶が、穏やかに光る。
「信頼、確立」
アレクシスは気づかない。
だが彼の隣に立つエレナの表情は、以前より柔らかい。
守られるだけではない。
守り合う関係。
それは宮廷のどんな称賛より、確かな絆だった。




