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水晶に導かれるエレナ  作者: たま


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新たな出会い

いつも読んでいただきありがとうございます。

他にも作品がありますので読んでもらえたら嬉しいです。

宜しくお願いします。


宮廷の静かな火種から離れ、舞台はダンジョンへ。

新たな出会いと、確かな信頼の芽生えを描きます。



『深層にて、誠実は出会う』


王宮の研究室で、エレナは希少鉱石の欠片を見つめていた。


王城支給の素材は上質だ。


でも、どこか物足りない。


整いすぎている感じがする。


管理され、選別され、無難に加工された石。


まるで生きている気配がない。


「……自分の目で選びたいな」


エレナはそう呟いた。


水晶が淡く光る。


「原点、確かめに行こう」


その声に背中を押されるように、エレナは王太子リヒャルトへお願いした。


「素材採取のため、王都近郊のダンジョンへ行きたいんです」


護衛付きなら許可は出るはず。


王家御用達を失うわけにはいかないからね。


こうしてエレナは、王都北方に位置する

グランディア地下迷宮

へ向かった。



ダンジョンの空気


湿った石壁。


淡く光る苔。


魔力が満ちる空間。


整然とした王宮とは違う、荒々しい本物の雰囲気。


エレナの胸は高鳴った。


「……きれいだな」


鉱脈は生きているみたい。


魔力の流れが脈打つように感じられる。


でも、その瞬間。


低い唸り声が聞こえた。


影から現れたのは中型の魔獣、アイアンウルフ。


護衛騎士が構えるけど、足場が悪いみたい。


間に合わないかも。


その時――


銀閃。


一瞬で魔獣の急所を断つ剣技。


倒れる巨体。


静寂。



出会い


「怪我は大丈夫?」


低く、落ち着いた声。


そこに立っていたのは、長身の男性。


黒髪を後ろで束ね、無駄のない装備。


名前はアレクシス。


王都冒険者組合所属の上級探索者。


昔は騎士団に所属してたけど、事情があって離れたんだって。


「助けてくれて、ありがとう」


エレナが一礼すると、彼は少し目を細めた。


「貴族がここにいるとは珍しいね。しかも採掘装備で」


「素材は自分で選びたいんです」


その答えに、彼は意外そうに笑った。


「命知らずか、職人気質か」


「後者でありたいですね」


短い会話。


でも、不思議と居心地がいい。


肩書きじゃなくて、意図を見ている目。


媚びも、軽視もない。



共闘


深層へ進む途中、落盤が起きた。


魔力振動による二次崩落。


エレナは即座に守護付与を展開。


アレクシスは彼女を庇いながら退路を確保。


「今だ、右へ!」


「三秒、持たせます!」


息の合った動き。


互いに信じ、任せる。


崩落は最小限で収まった。


静寂の中、二人は顔を見合わせる。


「……すごいな、その付与」


「あなたの判断も」


照れたように視線を逸らす彼。


エレナは小さく笑う。


宮廷では見ない表情。


利害ではなく、生存を預け合う関係。


それは信頼の最短距離だった。



核心の鉱脈


最深部近く。


蒼く輝く未加工の魔晶石。


誰の手も入っていない原石。


エレナはそっと触れる。


脈動。


力強い。


「……これです」


水晶が強く光る。


「縁、結び」


小さな声。


彼女は気づかない。


だがアレクシスは、その光に一瞬目を細めた。


「君は守られる側ではないな」


「守られるだけでは、足りませんから」


その言葉に、彼は静かに頷く。



帰還


王都へ戻る道中。


アレクシスは報酬を辞退した。


「今回は偶然の同行だ」


「では、次は正式に依頼いたします」


「……次があるのか?」


「ええ。信頼できる方は貴重です」


真っ直ぐな瞳。


打算のない言葉。


彼はわずかに息を呑む。


「なら、期待に応えよう」



宮廷に吹く新風


王宮へ戻ったエレナは、新素材による新型付与の研究を開始する。


王太子は成果を喜ぶ。


だが報告の中に出てきた名に、わずかに眉を動かす。


「アレクシス……元騎士団の?」


興味。


そして、微かな対抗心。


宮廷の空気が、また少し揺れる。


だがエレナは知らない。


ただ研究に没頭する。


そして時折、ダンジョンで交わした短い会話を思い出す。


肩書きも、嫉妬もない場所。


命を預け合った瞬間。


それは宮廷の賞賛より、ずっと温かい記憶だった。


水晶が、穏やかに光る。


「信頼、芽生え」


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