輝きに群がる影
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輝きに群がる影
フォルティア家の工房は、今日も静かに忙しい雰囲気なんだよね。
王家御用達になった今でも、エレナは変わらず、いつも通り。
派手な服を着たり、無駄な社交をしたりするわけじゃなくて、ただ机に向かい、水晶と向き合ってるんだ。
でもね。
光が強くなれば、影も濃くなるって言うじゃない?
気に入らない者たち
王都の一角にある老舗魔導工房
ヴァルツェン商会
代々続く付与師の家系なんだって。
その三代目、アルベルト・ヴァルツェンはちょっとイライラしてるみたい。
「ぽっと出の小娘が、王家御用達だなんて…」
彼は努力家なんだよね。
小さい頃から魔法理論を叩き込まれて、たくさんの研究を重ねてきたんだ。
でも、評価は“堅実”。
新しい発見はないみたい。
そこへ現れたのが、エレナ。
実績も師匠も流派も不明なのに、すごい成果を上げてて。
「何か裏があるんじゃないか…」
アルベルトは、そんな風に思ってるみたい。
小さな罠
アルベルトはちょっとした罠を仕掛けたんだ。
偽名で注文を出したんだって。
内容は難題。
付与が暴走するように設計されたものだったんだ。
もし事故が起これば、王家御用達の看板に傷がつく。
「完璧だ」
アルベルトは、そう思ってたみたい。
水晶の声
工房で、エレナは設計書を読んで、少し眉を寄せたんだ。
「……ちょっと変ですね」
水晶が淡く光る。
「悪意、歪み、試し」
静かな声で水晶が言ったんだ。
エレナは微笑んだ。
「そうですか」
依頼通りには作らないんだって。
設計の矛盾を逆手に取り、“暴走を検知した瞬間に魔力を遮断する安全付与”を重ねたんだ。
さらにね。
発動した時に、術式の設計者名を魔力痕跡として浮かび上がらせる細工もしたんだって。
悪意は、はっきり見えるようになるんだ。
公開実演
王立魔導研究会の公開実演。
アルベルトは観客席にいたんだ。
事故を期待してたみたい。
エレナが淡々と説明する。
「本品は高出力付与ですが、安全機構を三重に施しています」
発動。
強い光。
観客がどよめく。
次の瞬間。
術式の歪みが自動検知されて、空中に魔力の紋様が浮かび上がったんだ。
そこに刻まれた署名。
アルベルト・ヴァルツェン。
ざわり。
「これは……設計段階で意図的に不安定化されていますね」
研究会の長が低い声で言った。
みんなの視線は、アルベルトに集まる。
「違う、私は――」
言い訳は最後まで言えなかったんだって。
提出記録、筆跡、魔力波長。
すべて一致。
事故を誘発させて王家御用達の信用を落とそうとした
その事実は、消えないんだ。
プチざまぁ
アルベルトの処分は、重くはないみたい。
逮捕も投獄もない。
だが。
研究会からの除名。
王家案件への永久参加停止。
貴族顧客の離脱。
老舗の看板は、一夜で色褪せた。
致命傷ではない。
だが痛い。
じわじわ効く。
信用商売において“悪意が露見した”という事実は、消えない。
エレナは変わらない
騒動後。
父が心配そうに言う。
「怖くはなかったか?」
エレナは首を横に振る。
「いいえ。ただ、少し悲しかっただけです」
水晶が静かに光る。
「誠実であれ」
それだけ。
エレナは今日も付与を続ける。
妬みも、悪意も、すべて糧にして。
堅実に。
確実に。
積み上げる。
だからこそ、崩れない。
王都ではこんな噂が流れた。
「奇跡の付与師は、腕だけでなく品格も一流だ」
光はさらに強くなる。
影は――自滅する。




