画像を見て短編❗「MUSE」
https://kakuyomu.jp/users/joeyasushi/news/822139841283773325
マリアは17歳の美少女…そうして、恋をしていた。
思索的な娘で、ラテン語学校に通う傍ら、暇があると、近所の、今を盛りと咲き誇っている豪奢な雰囲気のバラ園に行って、噎せそうになるほど馥郁と薫っている、大輪のバラに囲まれながら、いつも読書をしているのだった。
純真で、人生のロマネスクな部分しか知らず、清純すぎるくらいにピュアで純粋培養な乙女だった。
マリアが薔薇に囲まれて静かに詩集か何かを紐解いている、その光景は一幅の名画だった。
「恋をしている」と、さっき書いたが、それはこういうあまりにも美々しい、静謐で古典的なマリアの風情に魅せられ、ある高名な文人が求愛したのだ…あまりにも高名過ぎて、その名を言うのが憚られるような、そういうスキャンダラスな色恋沙汰だった…なぜなら、その文人は齢すでに80を超えていいたのだ!
「『詩と真実』は読みました。 難しいけど、マエストロの熱い情熱というか、芸術や文学への深い想いは痛いほどに伝わってきました…若輩者にでも、…だってマエストロはやはり天才詩人でしょうからね!」
「僕が常に追い求めてきた、生涯の理想、究極的な美の極致の詩神、電撃のようにそれこそがあなただということが分かったのです! 結婚してください!」
もう若くなく、必然的に二人の結ばれ方はプラトニックラブ、にならざるを得なかった。 が、プラトン風、の本来の意味は、引き裂かれていた両性具有の片割れ、それとの結びつきという意味で、直観に優れたマエストロが、その運命の伴侶だと「電撃のように悟った」マリアは、やはり究極のベターハーフ、詩の神ミューズその化身だったのかもしれない。
…死の床にあるマエストロは「もう一度だけ最後にあなたの美しい裸体を見せてくれないか」と、マリアに所望した。
するすると、衣装を取り去って、マリアは女神の如く輝かしい裸身を晒した。
「ああ、暗いな。 カーテンを開けて、光を入れてくれ。 …もっと光を!」
次の瞬間にはマエストロはこと切れていた。
そうして、このダイイングメッセージは後世までに語り継がれる名言となった。
いずれにせよ、”美”や芸術というものに対する感受性が広く世の中に行き渡るにはまだまだ暗黒な時代だったのだ…マエストロの遺言はまことに本質をうがった至言とも言えたのである。
<了>




