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ちゃらん・ぽ・らん  作者: ふくはら 茶釜


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2

二話目です~!


そこからは、上を下への大騒ぎだった。

いつもと変わらずのののほほんとしている父に、「どういうことなの」と詰りながら説明を聞けば、こうだった。


栞子が中学校を卒業するタイミングで、母と父の故郷である八百万町に引っ越す予定で話は進んでいた。

栞子もそのつもりで、町にある唯一の高校、四季高等学高をリモートで受験して合格をもらっていた。

この3月の冬季休みを利用して引っ越しをする為、荷物をまとめたり家具の手配をしたりと今まですこしづつ準備を進めていたのだが、母の手紙にあったように海外出張が急に決まったらしい。



「どうしてお父さんまでついていくの!」

ほとんど悲鳴のような声を上げる栞子に、父は「だって」と声を上げた。

「もうお父さん、お母さんと離れたくない。これからはずっと一緒に居られると思って準備してきたのに」

子供のような理屈を口にする父に、栞子は絶句するしかなかった。

確かに、父は母が大好きだ。

電話が鳴れば栞子よりも先に取って、電話が切れてもすぐにメールを送る。

母から最初にもらったというプレゼントのピアスは、もう何年も父の耳を飾っている。

父が遠くにいる母を悪く言うところを、栞子は一度も聞いたことがない。

「ごめん、栞子。ごめんね」

ほとんど泣き出しそうな父を、これ以上責めるのはできなかった。

「……じゃあ、明日からの準備はてつだって。」

こくこくと頷く父を横目に、栞子は自室に戻って枕に顔を埋めた。




家は、三人で住むために準備していたものをそのまま使うことになり、鍵はその家の物だったらしい。

夕食の煮物を食べながら、父は町のことを話し始めた。

「あの町は少し変わっているけど、きっと栞子も好きになると思う。確かスマホは使えたはずだし」

「この時代にスマホが使えないところに行かせる気だったの」

思わず口をへの字にした栞子に、父は慌てて言い募る。

「違う違う、ちょっと、なんていうのか。…あの町は特殊だから」

丁寧に結ばれた昆布を頬張り、先を促す娘に、父はうーんと考えながら続ける。


「人との距離が近いんだよ、その、物の怪たちが」


父が味のしみたこんにゃくを食べ終わるのを待って、栞子は盛大に眉を顰めた。

「なんの話?」

「あれ、言ってなかったっけ?栞子は随分好かれるだろう。人間じゃない、変なのに」

「変なのって…」

「学校に行く途中のくねくね道。使わないように言ってたけど、時々使ってたでしょ?」

ぎくり、栞子の肩が跳ねる。

栞子の通っている中学校までには、大通りから道順通りに曲がって行く道と、大通りから外れた細いくねくね道と呼ばれているゆるいカーブを何度か描いている抜け道がある。

人気もなく、建物や街路樹が太陽を遮ってくれる。

昼間でもちょっと暗くは感じるが、それだけだ。

大通りは人も車も多く、日が照っているし何しろ整えられた道のほうが学校まで遠く感じるのだ。


栞子は父の言葉通り、ときどきその人気のないくねくね道を使っていた。

ひとりになりたいとき。

「影になるから、溜まり場なんだよ。そこを通ってくると、肩が妙に重かったでしょう?」

「それは…」

「気のせいじゃないよ。」

ことり、と茶碗をおいて、父は娘をまっすぐ見た。


「居るんだよ、栞子。人間じゃないものたちは、いる。」


普段はおどおどとしていつも笑っている父が、じっとこちらを見つめてくる。

「…それじゃあ、尚更、どうしてひとりでそんな町に行けって言うの。」

負けたくなくて、栞子は言い返した。

途端に、父の雰囲気がいつものやわらかいものに変わる。

「先生がいるから大丈夫だよ。」

「先生?」

「お父さんたちもお世話になった。物の怪たちとの関わり方を教えてくれる人だ」

栞子の茶碗に、大根の漬物を数枚入れてやってから、父は立ち上がった。

「その先生に、栞子の面倒を見てもらう話をしているんだよ。挨拶はお父さんも一緒に行くからね。」

父の言葉に、こくりと栞子は頷くしかなかった。


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