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心霊スポットに呼ばれた理由(面白半分で行ったらこうなる)

※ この作品は動画でご覧になれます

https://youtu.be/YiL1zxBY2sI

「イヌマケドンTV」で検索

向かいのお寺の和尚さんは、近所の人たちから慕われていた。

和尚さんは霊が見える人で、霊障に悩む人がいれば、無償で除霊してやるのだった。


しかし僕は、そんな和尚さんのことが苦手だった。

幼い頃、駄々をこねて我儘を言うと、必ず母が除霊の話をしたからだ。


「言うこと聞かない子は和尚さんに除霊してもらうからね!」

「除霊って何?」

「お経を聞いてるとね、怖い顔の悪霊がいっぱい出てくるんだよ」

「いやだ! やりたくない!」

「言うこと聞かないと、怖い顔がずーっと出てくるんだからね」

「いやだいやだー!」


僕をしつけるための作り話だったのだろうが、ちょっとしたトラウマになった。

除霊なんて得体のしれない魔法を使う和尚さんは、きっと怖い人だ。

幼い僕はそう信じ込んだ。


とはいえ、さすがに僕も大学生だ。

和尚さんと目が合えば普通に挨拶もするし、時には友達感覚で世間話をすることだってある。


「和尚さんは昨日の心霊スポットのテレビ見た?」

「あんなのはテレビ局の作り話だ。悪霊なんて滅多におらん」

「その心霊スポットが大学の近くでさ、明日みんなで行こうって言ってるんだけど、どう思う?」

「うむ……、面白半分で行くのは感心せんな。万が一、本物がいたら祓う術も知らんだろう?」


「やっぱりそうか。でも和尚さんなら、その場所に霊がいるか霊視できるでしょ?」

「いや、実際に行って見てみないことにはなぁ……。おまえさん、本当に行くなら、前もって除霊をしてやろう」

「え、いやだよ。前もってって何? 意味わからないよ。それに除霊って怖いんでしょ? 絶対無理」


「じゃあ、お守りだけでも持って行きなさい」


そう言って和尚さんは特製の魔除けのお守りを僕に渡してくれた。



次の日、友達のタツヤとマサヒロが待つ大学のカフェテリアに着くと、あれだけ忘れないようにと思っていた和尚さんのお守りを、家に忘れてきてしまったことに気が付いた。

已む無く僕は心霊スポットに行くのをやめると二人に伝えた。

しかし、冒険を楽しみにしていた二人の落胆はすさまじかった。


「お前のリアクションが見たいんだよ、YouTubeに上げるんだから頼むよ!」


一番の怖がりでもある僕が、激しく怯える姿をどうしても動画に取りたいと言うのだ。

酷いやつらだ。

結局、必死にせがまれて、心霊スポットに行く羽目になった。


その心霊スポットは暗い山奥にあるわけでもなく、ましてや廃墟でもない。

大学から車で十分ほどの住宅街にある小さな寂びれた公園だった。

テレビ番組によれば、公園のブランコに小さな女の子の霊が座っているという目撃例が、十数年前から寄せられているとのこと。

どうやらその女の子は、借金苦のために一家心中した家族の一人娘で、死ぬ前日までブランコに乗って遊んでいたというのだ。

しかも面白半分でここに訪れた若者が謎の死を遂げたそうで、番組では絶対に行ってはいけないと念を押していた。


……と、いかにもどこにでもありがちな陳腐な幽霊話であり、これが実話かどうかは疑わしい。


公園に着くと、マサヒロがスマホのカメラを作動させて、一部始終を動画に取りはじめた。

タツヤは、売れない役者のようにわざとらしく辺りを見渡し、カメラを向けるマサヒロに言った。


「寂しい住宅街だな。歩いてる人もいないし、住人はいるのか?」

「昭和にできた古いニュータウンだから高齢化で人が減ったんだよ」

「普通過ぎてつまんねえよ。寒いし、帰るか? 」

「おい、もう飽きたのか! もちろん前振りだよな?」


僕は二人のバカ話を聞きながら思った。

一見して人が少なくて、寂しそうな雰囲気の場所に、テレビ局の専属作家が怖いストーリーをでっちあげたに違いないと。

和尚さんが言っていた通り、テレビ放送される心霊スポットなどというものは所詮こんなものかと気持ちが冷めてしまった。

ベンチに座ってふと辺りを見渡すと、公園の入り口に自販機を見つけた。


「おまえら、コーヒー飲む? 」

「おう、サンキュー。」


自販機の前まで歩き、コインを投入しようとした時だった。

なんとなく後ろの住宅街から誰かが見ているような気配を感じた。

一瞬気になったが、ちょうどその時に北風が服の襟元を揺らしたので、それを人の気配と勘違いしたのだろうと思うことにした。


が、しかし……、やっぱり気になったので念のため誰もいないことを確かめようと振り向いてみると……。


やはり誰もいなかった……。


そこには昭和の雰囲気を残す古びた一軒家が建っているだけだった。

トタンの外壁は錆び、玄関前には雑草がたくさん生えている。

たぶんもう誰も住んでいない。言っちゃ悪いが、薄気味悪い家だった。


僕は気を取り直して自販機のスイッチを押した。

ガタンガタンと三つの缶コーヒーが取り出し口にたまった。

ところが、取り出し口から缶をつかもうとした、その時だった。


「うわあ!」


缶に触れた時の感触に驚いて手を引っ込めた。


「なんだよ、これ……。」


僕の奇妙な声に気が付いたタツヤが心配そうに声をかけた。


「おい、どうした? 」

「すまん、まちがって冷たいやつ買っちゃった。」

「まじか! このクソ寒いのに! お前ひとりで飲め!」


仕方なしに缶のフタを開け、真冬に冷たいコーヒーをすすった。

しかし、驚くことに、それは冷たいコーヒーでもなかったのだ。


「ぷっ、これ、オレンジジュースだし!」


コーヒーと間違えてオレンジジュースを買うなんて、ここまでひどいうっかりミスは今までなかった。

まちがいなく暖かいコーヒーのボタンを押したはずだった。


「なあ、これってさあ……。『ここから立ち去れ』っていう、悪霊からのメッセージじゃね?」

「ははは、自分のミスを幽霊のせいにするとか、ありえないんだけど!」


二人は笑っていた。

 

その時、再び背後から視線を感じたので、今度は素早く振り返ったが、やはり誰もいなかった。

先ほどの古びた気味の悪い家屋があるだけだった。


「おい、どうしたんだよ、さっきからキョロキョロして。後ろに誰かいたか?」


僕はピンときた。もしかしたら自販機の背後にある古びた気味の悪い家が、その女の子の家だったのではないかと。


「あの家から視線を感じたんだ」


僕が二人に言うと、今まで退屈そうにしていた二人が息を吹き返したように興奮し始めた。


「おぉ、おいおい! 怖いこと言うなよ! もしかして、あのボロい家がお化け屋敷ってか?」

「お、おい、見ろよ」

「なんだよ?」

「表札が剥がされてるし空き家だから可能性あるぞ。おまえ窓から中を覗いてこいよ」


良からぬことを企む二人をたしなめようとした時だ。

タツヤが指さす窓から、神経質そうな顔をした男がこちらを見てにらんでいる姿が突然目に入り、背筋が冷たくなった。


「お、おい、今窓から誰かこっち見てたぞ!」


僕が叫ぶと二人は大いにはしゃいだ。


「ははは、オマエ何言ってんだよ! おれらずっと窓の辺を見てたけど、誰もいなかったぞ」

「まさかビビりのオマエが、逆にオレらを怖がらせようとしてるのか? ナメられたわ~。あはは」


二人が言うように、もう一度じっくりと窓を見ると、確かに誰もいなかった。

そこには、日焼けして色あせたカーテンがかかった窓が一つあるだけだった。

人がいるわけがない。

でも、確かに僕の目には、僕らのいる公園の方をじっと睨んでる男の顔が見えたのだ。


(おかしいな)


僕は腕を組んで目を閉じた。

すると、驚いたことに、その不気味な男が公園を見つめるイメージが、くっきりと瞼の裏に浮かんできたのだ。

それは40歳くらいの大人の男で、体はやせ細り病弱そうな印象。

とても神経質そうに、かつ心配そうな顔で公園の方をにらんでいたのだ。


(うわ、キモっ!)


自分の想像したイメージがあまりに鮮明に脳裏に映し出され、怖くなって目を開けた。

さっき一瞬だけ見たシーンが、最悪なことにくっきりと焼き付いてしまったようだ。

しかし、その鮮明さゆえに、その男が見ていた視線の先をたどることができた。

その家の窓から覗く不気味な男の目線を直線状に伸ばすと、僕がいる自販機を超えて遊戯施設のあるエリアだ。

なるほど、予想通りだ。問題のそれがそこにあったのだ。


(ブランコだ!)


その男は女の子の霊が目撃されるというブランコの方をじっと見ていたのだ。


(やっぱりブランコに何かあるんだ!)


ブランコを確かめようと恐る恐る二、三歩踏み出したときだった。

急にクラっと眩暈がして、思わず右手で眉間のあたりを抑えた。


(立ちくらみなんて珍しいな……、風邪でも引いたかな……)


一瞬立ち止まり体勢を整え、視界を遮っていた右手を眉間から外した時、それは突如として現れた。

ブランコにうつむき加減で悲し気に座っている幼い少女の亡霊だ。


「うわぁ、いたよ……。本当にいた……」


僕がブランコを見て急に怯え始めたせいで二人は驚いたようだ。


「お、おい、急にどうした?」

「え、ブランコ? ブランコがどうした?」


どうやら二人には見えてないようだが、僕には少女の霊がはっきりと見えていた。

少女はブランコに腰かけて悲しそうに下を向いていた。


「おまえら見えないの? 女の子がいるだろ? ブランコに乗ってうつむいてるだろ!」

「は? マジで言ってる?」


僕の真剣な顔つきのせいで、さっきまでヘラヘラしていた二人の表情もこわばりはじめた。

間違いなく良からぬことが起こると直観的に感じた僕は、早急にここを立ち去るべきだと判断した。

和尚さんから持たされたお守りだって家に忘れてしまったのだから。


「おまえら、これはマジモンだ。撤収しよう」

「冗談で言ってるのか、本気なのかわかんないんだけど?」

「もしかして、呪われて頭おかしくなっちゃったんじゃねーの……?」

「バカ言うな、撤収だよ、今すぐ撤収!」


二人に語気を強めてそう言った瞬間だった。


『パパなの?』


なんと、少女が僕に語り掛けてきたのだ。

この声は恐らく僕だけに聞こえたのだろう。


(わぁー、ちがうちがう、ちがうから!)


僕は両手で耳を抑えながら、心の中で必死で何度も否定した。


(わかった、窓から公園をにらんでいたのは女の子の父親だったんだ。女の子は僕をお父さんと勘違いしたんだ!)


『パパ、わたし、オレンジジュース好きなの、覚えててくれたんだね』


女の子はうつむいたまま語りかけてきた。

恐らく言葉ではなく僕の頭に直接語りかけているのだ。

僕は手に持ったオレンジジュースをさっと後ろに隠した。

怖さは限界に達した。


「まじで、逃げるぞ!」

「お、おい、待てよ! まだ撮影中なんだよ! 取れ高ねえし!」


僕が突然走り出すと、二人も血相を変えて一緒についてきた。

僕たちは、公園近くの草地に停めておいたマサヒロの車に乗り込んだ。


「おい、何やってんだよ、早く車を出せって。」


僕は後部座席で運転席のヘッドレストをボンボンと叩きながら、キレ気味にマサヒロに叫んだ。

しかしマサヒロは慌てながらも冷静さを装おうとしていた。


「ちょ、ちょっと待て焦るな!」

「早くしないと呪われるぞ! やっぱり心霊スポットなんて面白半分で行くんじゃなかった!」

「だから落ち着けって。テレビでも言ってただろ、ここを見物に来た若者が死んだって」


確かにテレビ番組では、遊び半分でここへ来た若者が死を遂げたと言っていたことを思い出した。

僕は、極度の恐怖で冷静さを完全に失っていた。


「確かに焦って事故起こしたらマズイよな。すまん……」

「でも、どうしてオマエだけ見えたんだ? 」

「さあ、わかんない……。でも幽霊話は本当だったということがわかっただろ?」

「うーん、オマエしか見てねえし……、ネットで情報収集してみるわ」


タツヤはスマホを取り出して、この怪談話が事実なのか、女の子は何者なのか、インターネットで情報を検索し始めた。

いろいろ調べると、先日のテレビ放送に反応した近所の住人と思われる書き込みが一つ二つと出てきた。

彼らの話によれば、その一家心中事件は二十年前、ちょうど僕が生まれる直前の事件だったようだ。


父子家庭で、借金苦からの一家心中……、ということになっているらしい。

女の子は、自分が死んだことにも気づかず、20年もの間、公園で父親を待ち続けている。

書き込みには、そんなふうにあった。


『ちがうよ、車がね、どーんて、ぶつかっちゃったんだよ』


再び女の子の声が僕の脳内に響き渡った。


(うわぁ、女の子が車にいる! 車がぶつかったって? おい、オマエら、この車、絶対に出すなよ!)


とたんに、体が金縛りにかかって動かなくなり、声も出なくなった。


(おい、体が動かないよ! 声も出ない! おい、オマエら車出すなよ! もうだめだ、女の子に憑りつかれた……)


タツヤが操作するスマホを、後部座席から遠目に見ながら僕の体は固まった。

二人に声をかけようと思っても声が出なかった。


(助けてくれ、おい、おまえら、助けろ、おい!)


二人は僕の心の声に気が付くはずもなく、引き続きスマホを見ていた。


(なんだこの感じ……。女の子がどこかにいるぞ……。どこだ……)


車のどこかに女の子がいるとすれば、その場所は一か所しかなかった。

そうだ、助手席の後ろ、後部座席に座る僕の隣だ……。

横を見たいけど首が動かない……。


『車に乗ってたらね、ドーンて、つぶれちゃったの』


(うわぁ、やっぱり、いた!)


体は動かないが気配でわかった。

隣の座席に座ってうつむく女の子の霊。

厄介なことに女の子は僕のことをお父さんだと勘違いしているようだ。

このままでは延々と付きまとわれてしまう。

早く二人に伝えたいのだが声が出なかった。

でも、伝えた途端に怖がってアクセル全開で逃げ出すだろうし、暴走した車は確実に事故って僕らは死ぬのだ。


このままじゃ、道連れにされる。

そんな考えが頭をよぎった。


(まだ死ぬのは嫌だ! なんとかお父さんじゃないことを伝えないと)


死を覚悟で一か八か、うつむき加減の女の子に心の声で話しかけてみた。


(ど、どうして僕らについてきたの?)


そのときだった。

今までずっとうつむいていた女の子が初めて顔を上げてこちらを見た。

僕は身構えた。


(……!)


しかし、そこに見たのは顔から血を流した幽霊でも、おぞましいゾンビでもなく、とても可愛らしい幼い少女の笑顔だった。


(……、なんだ、愛らしい子じゃないか……)


しかも、その表情は昔どこかで出会ったかのように懐かしく、そして少女が僕を見る目もとてもキラキラと輝き、親愛に満ちていた。

さらに、よく見ると身近な誰かに似たような顔をしており、その雰囲気は他人とは思えなかった。

とはいえ親戚の子でもないし、いったい彼女は誰なのだろう。

思い出せそうで思い出せない。

すると不思議なことに、なぜか女の子の名前だけがすっと頭に浮かんだ。


『きみは、め、芽依ちゃん……』


そのとき、大量の情報が僕の脳内に流れ込んだ。

僕と女の子のすべての歴史を一瞬で思い出したのだ。

一気に感情が高まり目に涙があふれた。

女の子は紛れもなく僕の子供で、かけがえのない一人娘だったのだ。

もちろん、僕は大学生で、子供もいなけりゃ、彼女すらいない。


『芽依ちゃん、ごめんね、ずっと置いてきぼりにさせちゃったね』

『ううん、そんなことないよ、パパはすぐに来てくれたよ』


僕の心は完全に女の子のお父さんになっていた。

女の子のお父さんが僕に乗り移ったかのようだった。


『私ね、パパと一緒に公園でブランコしたかったの』


僕の両目にはたくさんの涙があふれ、いまにも感情が爆発して声を出して泣き出しそうだった。

どうしてこんなに愛おしい我が子を公園に一人置き去りにしてしまったのだろう。

どうして僕はこんな酷いことをしてしまったのだろう。


すると、あの日の記憶が鮮明によみがえった。

僕は我が子と二人暮らし。病弱だった妻は早くに亡くなった。

母親を失った我が子には、いつもさみしい思いをさせた。

休みの日には必ず遊園地や買い物、食事に一緒に行くことが親子二人の楽しみだった。

その日も我が子とテーマパークへ行くためにドライブ中だったのだ。


そのとき事件は起こった。

見通しの良い交差点、赤信号をありえないスピードで暴走してきたトレーラー。

僕らは楽しく話をしていて、トレーラーが迫っていることなどまったく気が付いていなかった。

そして交差点に差し掛かった時、突然ドーンという大音響とともに、僕らは一瞬にして命を失った。

何も苦しまず、どこも痛まずに逝ったのだ。


事実はテレビ番組やネットで伝えられているような一家心中でも何でもなかった。

あとから話に尾ひれがついたのだろう。


事故の後、一瞬にして命を奪われた僕は何が起こったかわからずに、ただすべてが解放された気分になって、フワフワと上へ上へと昇って行った。

そこには太陽のように光り輝く何かがあって、そこで僕は次の生を得たのだ。


(そうか、わかったぞ、こうして女の子のお父さんは、今の僕として生まれ変わったんだ!)


『パパは新しい命を神様からもらったんだ。芽依ちゃんも神様にちょうだいって言いに行こうか?』

『うん、いいよー。どうやって行くの?』

『上の方をみてごらん、キラキラ光ってるよね? あそこに一緒に行こう』

『やだよ、私、ブランコで遊びたいんだもん』

『そうか、それでずっとここにいたんだったね、ごめんね。じゃあ、一緒にブランコで遊ぼう』

『うん、いっぱい遊ぼうね』


僕は二人だけの空想世界の公園で、膝に我が子を乗せてブランコをこいだ。

ブランコは少しずつ勢いをつけて、ゆっくりと高いところまで上がっていった。

芽依はきゃっきゃとはしゃいで楽しそうだ。

それを見て幸せになる僕。

できることならずっとこうしていたかった。

一時間、二時間と時が過ぎていく。

そして、時とともに天に輝く眩しい光は徐々に僕らに近づいてきた。


『ほら、光ってるところまで来たよ』


芽依は神々しい光に照らされながら、キラキラした瞳で僕を見た。

その瞬間、僕の膝はすっと軽くなり、芽依は光り輝く天上界へと煌めきながら消えていった。


『パパ、ありがとう。また会おうね!』


その時、金縛りが解けて体が動くようになった。

まるで一眠りして長い夢を見ていたようだ。

しかし、この白昼夢を見ていたのは恐らく時間にして数秒だったはずだ。

なぜなら、まだマサヒロとタツヤは二人してスマホを眺めていたからだ。

全ての話のからくりがわかった僕は、怯えたような顔をして情報を探す二人が滑稽でたまらなくなった。


「なあ、よく考えたら女の子が呪ってくるわけないし、もう帰ろうぜ」

「お、お、おい、なんだよ! 女の子の霊が見えたとか言って一番怖がってたくせに!」

「ははは、すまんすまん、でも面白い動画は取れただろ?」

「おまえ、もしかして芝居だったのか?」


僕は否定もしなかった。ただ笑ってごまかした。


帰りの車中で思った。

もしも心霊スポットに行く前に除霊を受けたり、和尚さんのお守りを持って行っていたらどうなっていただろう。

除霊を避け、お守りを家に忘れたおかげで、浮遊霊となった我が子と再会し、天国へ成仏させることができたのだ。

もしかしたらこれは、我が子を救うために、あらかじめ自分で決めてきた筋書きだったのかもしれない。


気持ちが落ち着いてからこのエピソードを和尚さんに話すと、僕が女の子を成仏させたのは一種の除霊の才能だと褒められた。

大学を出たら、仏門に入り弟子にならないかと冗談半分にスカウトされたが、丁重にお断りした。

少なくとも、結婚して子供の顔を見るまでは、出家なんてできない。

あの時の少女の笑顔を、もう一度この世界で見たいんだ。

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