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縄文の大噴火で消えた古代日本の民・僕たちの村を助けて!タイムスリップ小学生!

※ この作品は動画でご覧になれます

https://youtu.be/454QR_FI5ls

「イヌマケドンTV」で検索

去年の夏、お父さんに連れて行ってもらった縄文資料館。

土器や土偶も面白かったけど、それよりも良かったのは、まるで生きてる人間みたいな縄文人の蝋人形。

貝殻でできた首飾りをした子供が、父親と二人でモリを使って川で漁をしている。その傍で、舌を出した柴犬が二人の漁を見守る。

それを見て、愛犬タロを連れて、お父さんと一緒に魚釣りに行った時のことを思い出した。


小学六年生になった僕は、もう一度縄文人の親子を見たくなって縄文資料館まで一人で遊びに行った。

車じゃないと行けないくらい遠い場所だったけど、自転車に乗って二時間、小学校生活最後の冒険だ。


「こんにちは、チケットください」


この前はお父さんと一緒に来たからわからなかったけど、受付のおばちゃんが子供は無料だと教えてくれた。得した気分で展示室に向かう。

この日は運動会の代休で月曜日。お客さんはいなくて、僕一人の貸し切り状態。後ろの人を気にせずにゆっくりと土器や土偶を見る。見れば見るほど不思議な模様。


次は、お待ちかねの縄文人の暮らしのゾーン。ここに漁をする親子の蝋人形がある。これを一番楽しみにしていたんだ。

でも、ちょっと怖い。あの時はお父さんもいたし、お客さんもたくさんいたから怖いだなんてまったく思わなかったけど、今日は僕一人で来たし、お客さんもいない。

目の前にあるのはまるで生きてる人間みたいな蝋人形。笑顔のまま固まっている表情がなんとなく怖かった。

突然クルっと振り向いて話しかけてきたらどうしよう。


「ボタンを押すと自動で案内が流れるから、押してごらん?」


いきなり後ろから僕に話しかける声がして、心臓が止まりそうになるほど驚いた。

振り向くと、優しそうなおじいさんが立っていた。首には蝋人形の子供と同じ貝殻の首飾りを下げていて、腕には『案内ボランティア』と書かれた腕章をつけていた。

無料で館内の案内をしてくれる人なんだって。

てっきり蝋人形がしゃべったのかと思ってビックリしたけど、係の人でホッとした。僕は黙ってうなずいてボタンを押した。


『縄文人は漁をする際に使用する釣り針やモリを、動物の角や骨でつくりました。縄文人はいろいろな種類の魚を……』


女の人の声で縄文時代の漁の説明が始まった。

すぐに終わるかと思ったら意外と長い。ところどころ難しい内容もあったし、だんだんと飽きてきた。

でも案内のおじいさんが後ろで僕を見張ってるから、最後まで聞かないとガッカリしちゃうかなって思って、聞いてるふりをして我慢した。


しばらくして長い説明が終わった。ところが後ろを見ると、案内のおじいさんはいつのまにかいなくなっていた。

どうして何も言わずに去って行ってしまったのだろう。また一人になってしまったと思ったら急に心細くなった。

ふと、流れていたBGMも消えて、照明も少し薄暗くなったことに気が付いた。


「もしかして、もう閉まっちゃったのかな?」


うす暗い中、僕を見て笑っている蝋人形。

お化け屋敷にポツンと一人残されたような気持ちになった。


「どうしよう、なんだか怖いよ……」


その時だった。


「見つけたぞ、そこにいるのは神様だな。助けに来てくれたんだな!」


どこからともなく、知らない子の声が聞こえてきて、思わず息が止まった。

クラスの友達が資料館へ遊びに来たのかもしれない。

少しだけ期待を込めて後ろを振り向いた。

しかし、僕の後ろには誰もいなかった。


「どこから声がしたんだろう」


資料館の隅から隅まで見渡しても、ここにいるのは僕一人だった。


「ここだよ、はやくこっちにこいよ」

「わあっ!」


さっきまでピクリとも動かなかった縄文人の子供の蝋人形が、突然わっと走りだして目の前までやってきた。

そして、僕の腕を引っ張った。

驚きのあまり声が出なかった。

逃げ出そうと思ったけど、足がピクリとも動かない。


「ずっと神様が来るのを待ってたんだ」


そう言って縄文人の子は、僕の腕をぎゅっと強くにぎって隣のブースにある竪穴式住居のレプリカの中へと無理やり僕を引っ張りこんだ。

僕と同じくらい小さな体なのに、とっても腕の力が強かった。


「ちょっと待ってよ、僕は神様じゃないよ! オマエは誰なんだよ?」

「おいらの名前はホッケ。今日こそは家に帰さないからな」

「それは困るよ! 暗くなるまでに帰らないと怒られちゃうよ……」


ホッケは、まるで獲物でも捕まえたかのように得意げな顔をしていた。

そして、僕の腕を強くつかみながら、竪穴式住居の壁に空いた小さな穴から外を見て言った。


「ほら、神様の言った通り山が煙を吹いたんだ。それでも、大人たちは信じないんだ」


ホッケの頭越しに窓の外を見ると、ここは縄文資料館のはずだというのに、自然の風景が窓の外に広がるのが見えた。とてもきれいな青空だった。

驚いた僕はホッケを押しのけて窓から顔を出した。そこは森を切り開いたような草原になっていて、僕たちのいる竪穴式住居と同じような形の建物があちこちに建っていた。

遠くを見ると、そこには富士山のような三角形をした山があって、もくもくと煙を吐いていた。


「どうして資料館に火山があるの? どうなってるの?」


様子が変だと思って振り返ると、縄文資料館の展示物もブースも、なにもかもが完全に消えていた。


「いやだよ、帰りたいよ。ここから出してよ、わーん……」

「神様なのに泣くなよ。おまえ、本当に神様なのか?」


ホッケは困った顔をしていた。すると、僕の泣き声を聞きつけたのか、ひげを長く伸ばしたおじいさんが竪穴式住居の中に入ってきた。


「どうしたんだい、おぉ、珍しい着物……。どこの部族の子か……、まさか、ツボケの子?」


おじいさんはホッケと同じ布切れ一枚の服を着ていて、とても優しそうな顔をしていた。

でも、よく見るとさっき資料館にいた案内係のおじいさんにも顔がとても似ている。それに、同じ貝殻の首飾りをしている。


「もしかして、資料館のおじいさん? ねえ、家に帰りたいよ、帰らせてよ……」


おじいさんは優しく微笑んで僕に言った。


「もちろんだとも。いつでも帰ることができるから泣くのはやめなさい」

「ほんと? 今すぐ帰りたい! ホッケ、僕を家に帰して!」


しかしホッケは、機嫌悪そうに黙ったまま何も言わなかった。

おじいさんは、そんなホッケの様子を心配して、どうして黙っているのかたずねた。

するとホッケは怒りだして、おじいさんに向かって文句を言い始めた。


「おじいちゃん、逃げようよ! 山が火を噴いて村が滅びるって神様から聞いたって言ってるだろ? 煙だって吹き出したんだ。どうして信じてくれないんだよ?」


ホッケはさっき見た富士山のような山が噴火すると思っているようだ。

おじいさんは困った顔をしてホッケの目を見ながら優しく諭すように言った。


「あれは神様の山じゃ。今はちょっと機嫌が悪くて煙を吐いておるが、火など噴くはずがない。火を噴く山など見たことも聞いたこともないわ」


ホッケはおじいさんをキッとにらんで、助けを求めるように僕に言った。


「本当は神様なんだろ? 頼むからあの山が火を噴く話をもう一度してくれよ。おじいさんやみんなに教えてやってくれよ」


ホッケは「もう一度」って言うけど、前にそんな話をした覚えはなかった。

それに、目の前に見える山が噴火するかどうかさえも僕にわからない。


「ゴメン、僕にはなにもわからないよ」

「なんだよ、おまえ、本当に神様か……? 神様なら誰でも知ってることだって、この前の神様は言ってたぞ?」


ホッケの話を聞くかぎり、神様はたくさんいるみたいだけど、どうも僕はホッケの期待するような神様じゃないみたいだ。

僕とホッケの会話をしばらく聞いていたおじいさんは、ずっと首をかしげていた。

そのうち険しい顔になって僕らの話を遮った。


「それよりおまえはツボケ族の子じゃろ。いくさを知らぬほど幼いと見た。どうやって迷い込んだか知らぬが、早く帰れ。気を付けて帰らないと村の若い者に矢で射抜かれてしまうぞ。ホッケ、森の出口まで案内してやりなさい」


するとホッケは、おじいさんにうながされて渋々と竪穴式住居の外へと僕を連れ出した。


「アソベの森の出口を抜ければ家に帰れると思う。途中まで一緒に歩いてやるよ」


竪穴式住居の外は、雲ひとつない晴天で、聞こえてくるのは鳥の鳴き声だけだった。村人はいるようだけど、家にこもっているのか、川へ漁に出ているのか、ほとんど見かけなかった。

たまに村人がいたかと思っても僕と目すら合わなかった。あきらかにみんなと違う格好をしている僕を気にも留めてない様子だった。まるで僕のことを見えてないようだった。


村を出て森の中を二人で歩きながら、ホッケから怖い話を聞いた。

ホッケたちの部族が平和に暮らしていたこの地に、ツボケ族という海の方からやってきた見知らぬ部族が侵入してきたそうだ。

平和に暮らしていたホッケたちの部族は武器を取って戦わざるをえなくなり、村の人たちはいつもピリピリと警戒しながら暮らすようになったという。

不安と恐怖で暗くなってしまった村の雰囲気が嫌で、いつしかホッケはこの森で一人で遊ぶようになったそうだ。


そんなある日、ホッケは森で神様に出会った。

そしてその神様がいうには、いつか山が火を噴き、ホッケの村は炎に飲み込まれ、みんな死んでしまうんだってさ。


「おまえ、この前来た神様と同じかっこうをしていたから、てっきり神様かと思ったんだ……」

「神様?」

「うん、昔から森には子供みたいな小さい神様が隠れて住んでるって言い伝えがあるんだ。でも、心の綺麗な人にしか見えないんだっていうんだ」

「ホッケとおじいさんは心が綺麗なんだね」

「おう、まあな!」

「でもさ、僕は神様じゃないよ、ただの小学生だよ」

「そう、そう、それだ! この前の小さな神様も自分のことショオガクセエとかなんとか言ってたんだ。やっぱりおまえは神様だったんだな?」

「ちがうよ……」


その時、僕はひらめいた。きっと前にも縄文資料館からホッケたちの世界に迷い込んでしまった小学生がいたんだ。

その小学生が、学校で習った火山の話をホッケに教えたにちがいない。

しばらくして本当に山が煙を吹き始めたから、ホッケは僕たちのことを神様だと思い込んでしまったんだ。


「なあ、神様、これをやるから……、頼むからおいらたちとずっと一緒にいてくれよな」


ホッケは自分の首にしていた貝殻の首飾りを僕の首にかけた。

資料館で見た首飾りとちがって、土で汚れてなくて真っ白くキラキラと光っていた。

ちょっと気恥ずかしかったけど、首飾りを自分の首にかけてもらった時、なんだかホッケたち縄文時代の人の仲間になった気がした。


「ねえホッケ、その小学生……、じゃなくて神様は無事に家に帰れたの?」

「わからないんだ、ちょっと目を離したすきに消えたんだ。きっと神様だから消えたりできるんだ」


ホッケの話を聞いて少しだけ安心した。もしかしたら時が来れば僕は家に帰ることができるかもしれないと思ったからだ。

でもまだその時は来ない。いつになったらこの世界から抜け出せるのかはわからない。でも、ホッケと一緒に歩きながら話をする時間は楽しい。もう少しここにいてもいいかなと思った。

僕の学校の話や家族の話もしてあげたい。サッカーや野球も教えてあげたい。きっと聞いたこともない遊びだから喜んでくれるに違いない。

そんなことを考えていたら、ホッケが僕のズボンを指さして目を丸くした。


「お、おい神様、それだよ、それ……。その腰のあたりから出てる布キレと同じものを、この前の神様も持っていたんだ」


ホッケが指さしたのは、ズボンのポケットに丸めて差し込んでいた縄文資料館のパンフレットだった。


「あぁ、これ、パンフレットだよ……、あ、まさか!」


僕は思い出した。このパンフレットには僕の住んでる青森県の歴史がイラスト入りで書かれていたことを。

そこには岩木山が噴火し、古代その麓に住んでいた部族の村が溶岩にのまれてしまったという言い伝えが書かれていた。

ホッケたちの村を遠くから見守るようにそびえていた山、あの煙を吐いていた山のかたち。どこかで見たことがある山だなと思ったら岩木山だったんだ。


「ホッケが死んじゃう」そう思った僕の目には急に涙がいっぱいあふれてきた。


「ホッケ、思い出したよ。そうなんだ、山が火を噴くんだ。これを見てよ!」


僕はパンフレットを広げた。

そして、岩木山が火を噴き、真っ赤な溶岩が村を襲うイラストのページをホッケに見せた。

ホッケはそれを見るなり顔をゆがめた。


「おじいさんたちを連れて早く逃げよう。僕も一緒に頼んでやるよ。ホッケの村に戻ろう!」

「う、うん……」


その時だった。ゴゴゴという音とともに、岩木山から大量の噴煙が舞い上がった。まるで山の頂上に爆弾でも落ちたかのようにキノコのような雲が空高く広がっていく。

テレビやインターネットで見慣れた山の噴火の様子だったけど、本物を間近で見るのは始めてだった。

目の前で見ると、こんなに迫力があって怖いものだなんて思いもしなかった。


ふと横を見ると、僕以上にホッケは震え上がっていた。

足は完全に止まって、よく見るとガクガクと震えていた。


「神様、山が怒ってるよ。おいら、あんな黒いけむりを吐く山なんか初めて見た」

「ホッケ、あれは山が大噴火する前の合図なんだ、村が焼かれて、溶岩に飲み込まれちゃうんだ!」

「フンカ? ヨウガンってなんだ? 村が焼かれちゃうって?」

「いいから早く、早く戻って村の人に逃げろって言うんだ!」


僕とホッケは来た道を全速力で走った。噴煙がみるみるうちに青空を覆っていく。とてもゆっくりだけどキノコ雲はオバケのように巨大化していく。

そのうち太陽が隠れて、僕たちが走り抜ける森の道も徐々に暗くなっていった。

今はまだ煙だけど、そのうち溶岩を吹き出すかもしれない。そうなったらホッケだけじゃなく、僕も死んでしまうかもしれない。

息が切れるほど走り、やっと森が開けてきたと思ったら、さっきまでいた竪穴式住居の集落が見え始めた。

広場に向かうと、大きな噴煙を上げてゴウゴウと唸る山を見上げながら、たくさんの村の人たちが心配そうな表情を浮かべていた。


「おぉ、ホッケ、そしてツボケの子、まだいたのか……」


そこにはホッケのおじいさんもいた。僕とホッケは大声でおじいさんに伝えた。


「早く逃げて! 山が火を噴くよ!」

「山が火を噴くなんて、まさか、そんなことがあるもんか」


ホッケは泣きながらおじいさんに訴えかけた。


「本当だよ! 信じてよ! ほら、神様もそう言ってるんだよ!」

「神様って、この子はツボケの子じゃろ? お、おぉ、消えていく……まさか本物の神様じゃったのか……」

「ホッケ、おじいさん、今だけでいいから信じて! はやく逃げて!」


僕は思いっきり叫んだ。涙声だったけど、今まで生きてきて一番というくらい大きな声を出した。それなのに、なぜだかまったく声にならなかった。

空回りしてるみたいに、口から出てくるのは息だけ。

伝えなきゃいけないのに、どうしてこんなに喉に力が入らないんだろう。

すると、おじいさんはゆっくりと僕の視界から消えていった。いや、おじいさんだけじゃなかった。ホッケも、村人も、噴煙を上げる山も、縄文時代の風景がなにもかもゆっくりと僕の視界から消えていった。


気が付くと、僕は縄文人の暮らしのゾーンにいた。

説明ボタンの前でボーっと立っていて、なぜか目には涙が溢れていた。

そして、さっき聞き終わったと思っていた縄文時代の説明をする女の人のアナウンスが淡々と流れていることに気が付いた。


『……縄文人たちは、こうして平和に暮らしていたのです』


まるで何もなかったかのように自動音声が終わると、背後から突然声が聞こえた。


「はい、おしまい。縄文時代の人たちは、自分たちで漁をして自給自足の生活をしていたんですね」


振り返ると、案内係のおじいさんがいた。

夢を見ていたにしても、あまりにもリアルだったし、それよりなにより、ずっとここに立っていながら夢をみるなんてありえない。

この前お父さんとここへ来た時にこんなことは起こらなかった。

まるで狐につままれたようだ。


「さあ、次の展示を見に行きましょう」

「あ、あの、僕は今、縄文時代に行ってきたんだよ。本当だよ……」


僕がそう言うと、係のおじいさんは笑っていた。そして僕の首もとを見て言った。


「おや、その貝殻の首飾り、おじいさんとおそろいの首飾りだね」


ハッとして首もとを見ると、あの時ホッケからもらった貝殻の首飾りが僕の首にかかっていた。

さっき見たのは夢じゃなかったんだ。

ふと縄文人の子供の蝋人形をみると、さっきまで首にかかっていた貝殻の首飾りが消えていた。


「この首飾り……、盗んでなんかいないよ! これは、ホッケからもらったんだ!」


おじいさんは優しくほほえんだ。


「もちろんだとも。キミは最初から首にかけていたからね。さあ、次の展示を見に行きましょう」

※ この作品は動画でご覧になれます

https://youtu.be/454QR_FI5ls

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