3 『熟考』
◇◇◇
目を覚ますと自室のベットに寝ていた。
部屋のデジタル時計をみると、
日付は2025年8月25日、
時刻は7時23分。
あれはなんだったんだろう。
夢のようにも思えるあの体験。
いや、ほんとに夢かもしれない。
しかし、その体験を確かにすることが起きている。
部屋のエアコンは点いていなくて、さっき時計を見た時、気温は28℃だった。
普通なら暑い暑いと悶えているだろう。
しかし先ほどの空間と同じように、暑さを感じない。現に汗もかいてないし...
まあ節電できるしいいや。
とりあえず、本当に運命を変える力を得たとして、具体的に何をすればいいんだ?
実際俺は、自分の死ぬ場所も理由もわからないしーー
そういえばあの女性、ヒントを言ってくれたな。
"あなたの過ちを正すこと"ーー
結局あれはどう言うことなんだ?
過ち?過ちってどこからどこまでが過ちって定義されてんの?
そしてもう1つ疑問に思ったことがある。
1週間経ったらどうなるかだ。
死ぬ?
いや、そうとしか考えられない。
だとしたら死ぬ場所も原因もそれでわかるのか。
でもこの1週間で運命を変えられなかったらーー
いや、そう考えても意味がない。
結局は変えなければいけないのだ。あの女性も、今回とか言ってたし、次回があることに期待するしかない。
だとしたらやることは決まっている。
"過ちを正す"
ただそれだけだ。
にしても過ちって本当になんなんだ?
そこで、パッとそれかもしれないものを思い浮かべた。
「課題か!」
うん、それしかない。そうだな、きっとそうだ。
え、なわけないやろ。って気持ちを頭の片隅に追いやって、課題をやることにした。
◇◇◇
ーー2時間後。
今、俺はゲームをしている。
なぜかって?わかるだろ?
課題をやる気が起きないのだ。
正直、あと1週間もあるし大丈夫だろう。
そんなことを1週間前にも思ったことは忘れるとして、また疑問に思うことが出てきた。
「起きてから何も食べてないな」
そう、大抵、起きたらお腹が空いたなって冷蔵庫わ漁るのだ。なのに、全然空腹を感じない。
まあ、節約できるし別にいっか、こんなこともあるだろう、と軽く疑問を流した。
◇◇◇
時刻は13時36分。
ゲームの休憩に、リビングに降りて、さっき沸いた疑問について少し考え事をしていた。
正直この疑問を追求することが、“運命を変える”ことに繋がるかはわからなかったけど、
所詮人間という生物は、好奇心に抗えない生物なんだ。
そう自分に言い聞かせ、雑音を流そうとテレビをつけ、心当たりがないか考え事を続ける。
「やっぱさっきから暑さを感じないことと関係あるのか?」
結局ここに行きついてしまうな。
他にも、今まで起こったことをよく思い出すんだ。
今までで起きたこと、あの女性の言動、今起こってる現象ーーー
結局結論に至ることはできず、さっき考えたことから仮説を立てることにした。
それで立てた仮説は5つ。
仮説その1 時間が超遅くなっている説
確かあの時女性は、俺は死まであと1秒しかないと言っていた。
そこで俺は、自分の寿命を使うことによって、過去に戻り、運命を変える期間を1週間“与えられた”と思っていた。
だがあの時、使う寿命は宣言する必要があった。
能力の贈呈と混合してしまったのだろう。
つまりは、運命を変える期間は与えられるものではなく、自分で設定し、行使するものである可能性がある。
ここから言えることは、過去に戻るのはあの女性の比喩か俺の錯覚で、実際は寿命の前借りによって
1秒を1週間に引き延ばしているということだ。
これが起こっているなら、暑さを感じないことや空腹感を感じないことに説明がつく。
だが、朝時計を見た時、時計は8月25日と表示していることや、太陽の位置が変わっていることに矛盾してしまう。
そこでその仮説2 擬似ゲーム説
さっきの仮説1に加え、今起こっていることが、ゲームのようになっているという説だ。
ゲームの中なら時間の経過が不自然なことや、感覚がおかしくなっていることにも納得がいく。
しかしあまりにも曖昧だな。
仮説3 感覚遮断説
そのまんま名前の通り、感覚が遮断もしくは消失しているという説だ。
だが視覚などの五感だけなくならないことなど、また新たな疑問が生まれる。
仮説その4 何かの疾患説
これもそのまんま、なんらかの病気によって感覚がなくなっているという説。
仮説その5 夢説
最初からこれら全てが夢である説だ。
とりあえず思いついたものを整理してみた。
この中だと一番現実的なの5だな。
いや、この状況で今更“現実的”とか考えても仕方ないな。
そうすると一番有力なのは……..1か2だな。
「ん〜、でもしっくり来ないな〜」
背伸びをしながらふとテレビの方に目を見やると、画面いっぱいにカツ丼が映し出されていた。
どうやらグルメ特集のようだ。
「うわ、カツ丼超うまそうだな。」
思わず心の声が出てしまった。
そういえば最近料理してなかったな。
久しぶりに作ってみるか!
そう思い立って、さっきまで熟考していた自分がいなかったように、陽気に台所へと向かった。
◇◇◇
時刻は21時28分
気づいたらこんな時間になっていた。
ご飯を食べ終えたあと、本気で課題に向き合うことにしたのだ。
その結果ーーー課題を2教科終わらせることができたのだ!
少ないように聞こえるがこれでも頑張ったのだ。
ちなみに教科は家庭科と国語だ。
「にしても徹夜でやるのとでは集中力が段違いだな〜」
ストレッチをしながらベッドにドスンと倒れ込む。
「でもこんな感じでいいのかな?」
あまりの進展のなさに思わず不安になる。
「まあこれ以上考えすぎても仕方ないし、今日は脳も酷使してしまったしもう寝るか。」
そう言ってそのまま眠りにつく。
◇◇◇
翌朝ーーー
「まずいまずい非常にまずい!」
俺は今、超危機的状況に陥っているーー