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ひな祭り

これは小さい頃の記憶



おじいちゃんの所に来てなら、初めてのひな祭り。両親のいない初めてのひな祭り。そんな事は全っく頭に無いミラは、いつもと変わらぬ朝を迎えていた。


「おはよータミさん!」


「お嬢様、おはようございます。今日はお手伝いはよろしゅうございますよ。」


「何で?」


「今日はひな祭りですから、旦那様がイベントに連れて行ってくださるそうです。ご用意ください。」


「イベント?」


「えぇ、私も詳しくは存じません。」


「そっかぁー。」


ミラは言われた様に部屋着では無くお出かけの服に着替える。そこへケイゴがやってくる。


コンコンコン


「どーぞー。」


「お嬢、おはようございます。髪を結いに伺いました。」


「ありがとう!」


「今日は前目に二つ結びに致します。」


「うん、お願いします。」


ケイゴは器用に髪を結ってくれる。そして藤色と桃色の桃の花に金色の飾りが付いたゴムで縛ってくれる。


「カワイイ❤︎こんなの有ったんだ!」


「はい、お似合いですよ。」


「ありがとう!」



******



イベント会場は沢山の人が居たが、そこはカホウ家。顔パスで別室に通される。そこには10着程度の子供用の着物が掛けられていて、とても美しい。


「お嬢様、こちらの中からお好きな着物をお選び下さい。ケイゴ様はこちらへ。」


ケイゴは別室に連れて行かれる。


「お嬢、一旦失礼致します。」


「うん、後でね。」


ミラは目を輝かせながら、着物を見つめる。


「どれも素敵で選べないわ!」


「でしたら羽織ってみましょう!」


そう言って、何着かおすすめを羽織っていくと、藤色から桃色のグラデーションになっている十二単衣を見つける。


「これにする!」


「髪飾りと同じ色でございますね。素敵だと思います。ではこちらをお着付け致します。」


周りの方も手伝い、その衣を着付ける。十二単衣に見えるが、実は重く無い様に襟だけ重なっている物だった。それでも何枚かは重ね着をする。


両足を少し開いて踏ん張るが、どうしてもフラフラしてしまう。着物は大変ねー何て考えているうちに、とっても綺麗に着付けしてくれる。


椅子に促され、次は軽くお化粧をしてくれ、最後に頭に平額、釵子、櫛を付けられる。鏡を見るとリアルお雛様の様だ。


わー!と口を開いた時、着付け師さんに声を掛けられる。


「お嬢様、お写真を取る前にあまり喋ったり笑ったりなさいません様に。メイクが崩れます。また、歩く時もごゆっくりなさって下さい。着物も着崩れてしまいますから。」


「…はい。」


ミラはそのまま他の部屋へ通される。そこには黒地に濃い紫の桃の花の刺繍がされている着物を来たケイゴがおり、金屏風の前に座っている。


こちらに気づいたケイゴは、ニッコリ笑って声を掛けてくれる。


「お嬢、お美しいですね。」


「!!…ありがとう。」


お美しいのはケイゴの方である。こんな美男子のお内裏様はそうそう居ないだろう。


(私が隣でいいんだろうか?)


そう悩んでいると、ケイゴがゆっくりとした所作で立ち上がり、ミラの手を引いてくれる。


「お早くお座り下さい。重たいでしょう。」


「あ、ありがと。」


金屏風の前にケイゴと並んで座ると、まさに人間雛人形。何枚か写真を撮ると、部屋を仕切っていた襖が開けられ、そこにはお雛様に模した着物を着ている人たちが何人かおり、こちらを見ている。


「お待ちしておりました。皆席に着け。」


その言葉を合図に所定の位置に着いた三人官女や左右大臣達。その光景に目を奪われていると、ゾロゾロと沢山の人達が部屋の前をじっくり見たり写真をと出たりして見物していく。


ミラはケイゴに耳打ちする。


「ねぇ、何でこんなに沢山の人が来てるの?」


「今日はひな祭りですから、人間雛人形を再現しています。」


「それは分かってるよ。何で見られてるの?」


「あれ?説明しませんでしたか?イベントを開いているからですよ?」


「…?」


「一般公開のイベントですので。」


「………え?一般公開って何?」


「皆んなが観に来るって事です。」


「………おじいちゃんって、イベントもやってるのね。」


「はい、手広くされてますよ?お嬢が駆り出される事はほぼ無いですけど、僕たちはよくやらされてます。」


「…知らなかった。」


「お嬢は隠されてますからね。」


そんな話をしていると、突然悲鳴が聞こえる。


「きゃー!あのお内裏様、小さい子だけどイケメンじゃない?」


「本当だー!すっごくイケメン!!大人になったら凄そう!きゃっ!わらったわー❤︎」


どうやらお内裏様はお客様のハートを射止めたようだ。


「ケイゴ、人気ね。」


「お嬢を霞ませちゃってすみません。」


その言葉に全く謝罪の気持ちが入っていなくて、ミラはツーンとするのだった。

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