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ヲタッキーズ148 幼女と偕老同穴

作者: ヘンリィ

ある日、聖都アキバに発生した"リアルの裂け目"!

異次元人、時空海賊、科学ギャングの侵略が始まる!


秋葉原の危機に立ち上がる美アラサーのスーパーヒロイン。

ヲタクの聖地、秋葉原を逝くスーパーヒロイン達の叙事詩。


ヲトナのジュブナイル第148話「幼女&偕老同穴」。さて、今回はスーパーヒロインの娘が誘拐され、ほぼ全財産に等しい身代金が要求されます。


内部事情に詳しい者の犯行が疑われる中、悲惨な離婚をした同僚の存在や幼女の出生の秘密などが次々と明らかになりますが…


お楽しみいただければ幸いです。

第1章 ラギィの元カレ


偕老同穴:仲の良い夫婦が人生を謳歌し同じ墓に眠るコト。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


秋葉原マンハッタン(駅前高層タワー群)"に朝が来る。朝焼けに染まる摩天楼。続々とパトカーが集まる。制服姿に混ざりラギィ登場。


僕は、コーヒー片手に歩み寄る。


「無香料バニラと脱脂粉乳入りのカフェラテと朝ごはん用のデニッシュだ」

「未だ覚えてるの?」

「記憶は作家の才能の1つさ」


万世橋警察署の敏腕警部ラギィとは彼女が前の職場で"新橋鮫"と呼ばれ、その筋から恐れられてた頃からの付き合い。


「早起きね。昨夜は"お姉ちゃん遊び"はお休み?」

「休んでなかったら妬く?」

「全然。ミユリ姉様にチクるだけょ」

「ソンなコト逝わズに、今度は3Pで…」


突然、真正面から鼻を摘まれるw


「緊急の呼び出しに応じたのにヒドいな、フガフガ」

「事件現場なのょ。ハシャがないで…ソレからイラついてるのは、テリィたんの新作の表紙(カバー)を見たからょ」

表紙(カバー)?ん?…アレが見られるのは、ファンクラブのプレミアム会員だけだ。まさか、ラギィって僕のファンなのか?もしかして"テリィフリーク1212?"それとも、いつも過激写メ添付の"テリィラブ45"って、まさか…」


"新橋鮫"が、あんなコトやこんなコト…


「テリィたんのファンなんて、どーせ(ミユリさんみたいなw)ツルペタでしょ?」

「ラギィとか?…やぁ」

「おはようございます。警部、テリィたん」


現場に立つ制服警官から挨拶される。


「私は、単なる職業上の好奇心からょ」

「そっか。で、あの表紙(カバー)良かった?めっちゃ"萌え"だろ?」

「萌え?何言ってるの?裸じゃ無いの!」

「裸じゃない。裸エプロンだ。ソレに大事なトコロはちゃんと音波銃で隠してる」


ソレに"裸エプロン"じゃ無くて"SFスーツ"だw


「良い?言っておくけど、万が一あのママ出版されたら、もう南秋葉原条約機構(SATO)との合同捜査の時もヲタッキーズは使わないから…私もテリィたんの元カノから卒業させてもらうわ」


南秋葉原条約機構(SATO)は、アキバに開いた"リアルの裂け目"からの脅威に対抗スルための大統領府直属の防衛組織だ。

"ヲタッキーズ"は、僕の推しミユリさん率いるスーパーヒロイン集団で、SATO傘下の民間軍事会社(PMC)。僕がCEO。


「お預かりします」


場立ちの警官にカフェラテとデニッシュを取り上げられる。


「状況は?」

「この家の2才の娘が姿を消した。母親が"blood type BLUE"。娘は未だ"覚醒"してない」

「未だ2才だからな。遺体は?」


アキバに"リアルの裂け目"が開いた影響で腐女子がパワーに"覚醒"、スーパーヒロイン化スル事例が相次いでいるw


「いいえ、誘拐ょ。父親は隣室にいた」

「自宅で誘拐?でも、何で所轄のラギィが呼ばれるの?」

桜田門(けいしちょう)からのリクエスト」


児童誘拐は、通常は桜田門(けいしちょう)の管轄だ。


「しかも、何でヲタッキーズ(僕達)まで呼ばれルンだ?」

「テリィたんの斬新な推理で桜田門の鼻を明かしてヤリたいと思って」

「ふーん何かヘンだな。桜田門の担当捜査官は?」


明後日の方を向くラギィ。


「そんなコト、どうでも良いでしょ」

「誰だょ?」

「ウィラ・ソレン」


ん?何処かで聞いた名だ。


「ソレ誰?何か曰くが?」

「どーでも良い。奴が仙台から帰って来たの。でも、お互いプロだから問題は無い」

「何の話だ?僕は永遠のアマチュアだけど…彼はどこに?」

「もう来てるわ」


誘拐された幼女の両親と思しき2人と話していた、この真夏にスーツ姿の長身イケメンと視線が合う。バチバチと火花。


「失礼」


両親?のトコロを辞してコチラに歩いて来る。

颯爽としていて爽やか。日焼けした精悍な顔w


「ラギィ」

「…ウィラ。いつ戻ったの?」

「数ヶ月前だ」


げ。ラギィが…乙女モードになってる。何者w


「知らなかった。仙台じゃなかったの?」←

「牛タンは食べ飽きた。ラギィ、元気そうだな」

「おかげさまで。ソレン捜査官、こちらテリィたん。有名なSF作家ょ」


出番が回って来るが、イケメンに先手を取られるw


「君達2人のコトは桜田門で聞いてる。大衆SF小説(パルプフィクション)のネタ探しでラギィの尻について回ってるそうだが、捜査の邪魔だけはさせないでくれ」

「その心配は無い。ちゃんと僕はわきまえている」

「君じゃない。ラギィと話してルンだ。被害者はアンジ・キデラ。2才。"blood type RED"。今朝7時半から8時の間に消えた」


うっかり(ワザと?)割り込む僕←


「自宅で親が近くにいたのに?おっとごめん」

「父親は7時に子供を起こし、TVの前に座らせて、自分のアトリエに向かった。見ての通り、彼は画家だ」

「子供を放ってお絵描きしてたのか」


ラギィも小首を傾げる。


「物音とか聞いてないの?」

「ヘッドホンをつけてた」

「父親失格ね」


第2章 消えた幼女


失格の父親が泣き叫ぶ。


「家中探し回った後で窓に気づいた!鍵が外から壊されていたンだ!ソレで直ぐ外へ飛び出して探したんだ!」

「キデラさん。路地に面した1階で窓に格子ナシですか?」

「つけるつもりでいたの!でも、つい後回しに!」


母親も泣き叫ぶ。彼女も失格系かなw


「泥は外の道路のモノだわ!ナゼこんなコトに!」

「犯人は、バールで窓をこじ開けて押し入り、娘を連れ出し裏口から逃走したのね…ウィラ?」

「既に秋葉原D.A.全域に写真を公開し、神田リバー水上空港の出入国管理に緊急通達を出してアル」


うーん優秀だ。マズいコトにラギィとの呼吸もピタリ。


「じゃウチは、過去の性犯罪者や誘拐犯を洗うわ。両親にはもう話を聞けたの?」

「未だだ。冷静には考えられないようだ」

「そりゃマズいな。娘を失ってからでは遅い」


もっともな意見を述べるが無視されるw


「ソレン捜査官?」

「スマホの追跡システムか。電話はそこだ」

「今回は絶対に成功させましょう」


ラギィが唇を噛む。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


万世橋(アキバポリス)EV(エレベーター)の中。


「半年ょ」

「半年って何だ?」

「私がウィラと付き合った期間」


短っ!


「僕は、ソンなコト、聞いてないけど」

「でも、聞きたかったでしょ?」

「以心伝心だな…でも、さらわれた幼女や両親は君達の過去など気にしない。とにかく子供を助けよう」


決まった…EVから降りて2人でスタスタ歩く。


「ところで…出会いは?」←

「誘拐事件だった。6才児の」

「犯人は?」

「逮捕したわ」


捜査本部にメイドが飛び込んで来るw


「テリィたん。御両親の情報ょ。テレサとアルフ。結婚10年目。子供はアンジのみ」


その瞬間!僕はのけ反り大袈裟にヨロめくw


「わああっ!スゴいリボンだな!あぁビックリした!」


ヲタッキーズのエアリとマリレはメイド服なんだ(ココはアキバだからねw)けどマリレの胸のリボンが…金色でデカいw


「良いわょ笑えば?彼氏のプレゼントだモン!」

「彼氏の?」

「Ja!つきあって2週間記念」


一斉に拍手&口笛。全員でマリレの背中を叩くw


「ソレで"ゴールデンリボン"なの?」

「解いてムチの代わりにスルとか?」

「なるほど!萌えそう」


真っ赤になるマリレ。


「OK。わかったわ、もう良いでしょ?誘拐された2才のアンジは、実は養子ょ」

「養子?」

「YES。2年になる。母親は投資銀行のファンドマネージャー。父親は3流画家で時々東秋葉原の画廊で個展を開いている」


考え込むラギィ。


「となると…あの部屋に出入り出来たのは、シッター、掃除係、管理人…過去の性犯罪者のリストと照らし合わせて!大至急」

「キデラ家の内情を知っている者の犯行だと?」

「確かに内情を知っていれば誘拐の計画も出来る。父親に拠れば、今朝は、いつも通りの朝だったって」


ラギィのスマホが鳴る。


「はい、ラギィ…そう。わかったわ」


スマホを切る。


「タダの変態野郎ではなさそう。身代金を要求して来たわ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


キデラ家のダイニングルーム。桜田門が持ち込んだアタッシュケースがいくつも開けられ機器やコードを多数吐き出す。


犯人とのスマホ通話の声紋が波形表示される。


「もしもし?」

「娘は預かった」

「お願い。危害は加えないで」


犯人の声は、合成音声の男声だ。


「ソレは、お前達にかかってる。助けたければ7500万円を用意しろ。24時間以内にな」

「娘は無事なの?話をさせて」

「24時間以内だ」


通話は切れる。


「IP電話を使用。衛星回線にスクランブルをかけてる」

「逆探知、失敗です」

「払えますか?」


冷静なのか冷酷なのか、微妙な問いかけ。


「ほぼ全財産です。でも、かき集めれば何とか」

「ソレでアンジが助かるなら安いモノだ」

「では、直ぐに現金化の準備をしてください。会社のお知り合いとか、協力を頼める人はいますか?」


3流画家のアルフには無理な相談だ。


「私の姉のニーナ。公認会計士です」

「でも、安全に金を渡せば娘は必ず戻るのか?」

「アルフさん。諦めズに祈るしかない。アンジが無事に戻る姿を想像して。ソレが娘さんへの力になる。信じるんだ」


ウィラの言葉に夫婦は手を取り合う。ヤルな、イケメン。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


キッチン。コーヒーを淹れてるウィラに話しかける。


「慣れてルンだな、誘拐事件には。さっきのセリフには感心した。実に冷静な対応だ。さすが、桜田門」

「両親の気持ちをコントロールする必要があった」

「元カノを捜査に招き入れたのも気持ちのコントロールのためか?」


ウィラはニヤリと笑って僕の方を向く。


「ラギィは優秀な警官だから呼んだだけだ」

「元カノとの再会が狙いだろ?未練か?」

「君はどうなんだ。ベストセラー作家だろ? 20冊?」


ココは大事なトコロだ←


「どうでも良いけど26冊」

「なぜ突然彼女をモデルにしたんだ?」

「最近の海外ドラマが役に立たなくてね」


ウィラはうなずく。


「同感だ…しかし、デブで巨漢の刑事が大勢いる中で、偶然彼女をモデルにしたと言うのか?なぜ彼女を"推し"にスルんだ?」

「運命だからさ。君は?」

「俺は…」


ラギィが入って来る。慌てて話題チェンジw


「通話から何かわかった?」

「ソレだょラギィ。身代金の額が気になる。キデラ家が払えるギリギリの額を指値(さしね)してる。キデラ家の資産状況に相当詳しいようだ」

「彼等の全財産を要求したワケ?ソレだけ2人に近い人間かも知れナイわね」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「紹介します。姉のニーナです」


リビングに戻ると、テレサから翠色の髪のアラサー女子を紹介される。


「身代金は、どんな具合ですか?」

「大丈夫。株は明日の朝売って、あとは退職金と年金で何とかします。ただ、違約金がかかるけど…」

「構わないわ。そんなの、全然構わない」


姉妹のやりとりを聞いていた夫のアルフは、プイと立ち上がるや隣のアトリエ?の壁画に向かって絵の具を叩きつける。


「彼は、イライラすると、あーやって絵を描くんです」

「売れてルンですか?」

「少し…」


口ごもる妻のステラ。姉のニーナが直言←


「売れる?ごくタマにでしょ?どーしてソンなコトを聞くの?」

「年金を積み立てる画家は、そうは多くありません」

「全て妹のテレサが支払いをしていました。何かあった時のためです」


颯爽と話に割って入るイケメン。


「犯人は、身代金の額から考えて、この家の資産状況を熟知している可能性があります。身近に貴女を恨みそうな人、お金に困っている人はいませんか?」

「そんな…誰も誘拐なんて」

「エラズは?」


姉のニーナが気づく。


「誰?どういう人?」

「彼は、以前の同僚です。でも、まさか… 」

「あの留守電は?テレサ、随分と酷いコトを言われてたじゃないか。君、脅されていたょね?」


夫のアルフがアトリエから口を挟む。


「言われなくてもソンなコト、わかってるわよ!」

「キデラさん、落ち着いて。お気持ちはわかりますが、話してください」

「エラズは、資産運用の担当者でしたが、業績不振で私が解雇したんです」


げ。この奥さん、リストラもヤルのかw


「彼から脅されたコトは?」

「お前のせいで離婚したと責められました。解雇されたために、奥さんが家から出て行ったとか…」

「リストラ離婚ですか?」


ステラは唇を噛む。


「2人の子供を取られたって」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


万世橋(アキバポリス)の取調室前。


「何処で見つけたの?」

「外神田の場外馬券売り場です。家には子供の気配ナシ」

「ソレは微妙だな。私が尋問スル」


張り切るウィラ、ラギィに続き取調室に入ろうとスルと…


「君はダメだ」

「あ、ウィラ。テリィたんなら大丈夫ょ」

「ラギィ。君が彼のファンなのはわかるが、PMCは入れられない。同席は断る」


何と取調室から閉め出しを食うw


「ラギィ、良いさ。問題ナイ」

「テリィたんも私達とお隣から観察ょ」

桜田門(けいしちょう)のお手並み拝見ね」


ヲタッキーズのエアリ&マリレに連れられマジックミラーで隔てられた隣室へ。すれ違いザマにウィラの耳元で囁く。


「ラギィ、ホントに僕のファン?」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


エラズ・エラスの取り調べが始まる。


「警視庁のウィラだ」

万世橋警察署(アキバP.D.)のラギィ」

「エラズさん。テレサ・キベラとは、いつ会った?」


ウィラが切り出す。


「テレサ?いったい何の話だ?」

「質問に答えてください、エラズさん」

「おい!テレサは何を歌ったンだ?」


明らかに動揺してるエラズ。


「いいや。ソレより君が何を歌ったかだ。先ず聞こうじゃないか、君の歌を」


ICレコーダから興奮したウィラの声が流れる。


"6年も勤めたんだぞ!お前の部署は俺のおかげで成り立ってたんだ。俺を破滅させるなら道連れにしてやる!"


「3ヶ月前の留守録だ。離婚直後だな」

「ソ、ソレが何か?全て本心だ」

「立派な嫌がらせだわ」


畳み掛けるラギィ。嫌な女←


「今さら告発スル気か?」

「罪状は、誘拐、脅迫、不法侵入だ」

「いったい何の話だ?」


ホントに何も知らないようだ。


「今朝、彼女の娘が誘拐された」

「な、何?誘拐だって?」

「自分が離婚で親権を失った腹いせで誘拐したのでは?」


エラズは敢然と立ち上がり、断固とした口調で抗議スル。


「確かにテレサのコトは大嫌いだが、誘拐などしない」

「元奥さんとの離婚調停書には、離婚の原因は夫の家庭内暴力にあったと描いてアルわ」

「冤罪だ。全部、高額の慰謝料をふんだくるための妻のでっちあげだ」


ウィラがクールに返す。


「ふんだくられた慰謝料を身代金で取り返そうと言うのか?」


嫌な男だ。エラズは声を震わす。


「アンタ達はトンデモナイ間違いをしているぞ!」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


取調室からエラズが、隣から僕が同時に飛び出すw


「奴のアリバイを探れ!」

「奴はシロだ!」

「なぜワカル?SF作家のテレパシーか?」


上から目線のウィラ。


「いや、通信講座の読心術だ。そもそも、犯人ならテレサが大嫌いなどと逝わない。感情を隠すハズだ」

「SF作家が今度は犯罪学者ヅラか?」

「ヲタクがキモいコトに分析が必要か?誰にだって、わかるコトだろう」


ラギィが癇癪を起こす。


「いい加減にして!勝負したいなら、ココでズボンを下ろして勝負をつけて!」

「そーしよう」

「ちょっと待て」←


子供を諭すようなラギィの口調。


「誘拐されたアンジの命がかかってる以上、多分じゃダメなの。徹底的に調べないと!」


その通りだ。


「ヲタッキーズのエアリとマリレは、エラズのアリバイを調べて。私達(アキバP.D.)はテレサの同僚を洗い直すわ」

「あれ?僕は?」

「テリィたんは、御屋敷(メイドバー)に御帰宅して」


捜査からハブられるw


「わかった。何かあったら連絡をくれ。話すだけでも」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


御屋敷(メイドバー)に御帰宅したらライフコーチがお仕事中だw


「スティ、OK?コレからは"創造的エネルギー"を調整するコトが何より大切ょ。想像力と言うのは、あらゆるパワーの源であり、ゆえに貴女自身でもアルの」

「ただいま、ルイナ」

「え。テリィたん?おかえり。今、スティの面接中だったの。"私のサテライトオフィス"でね」

「うれしいな!僕の本を、こんなにたくさん揃えてくれて。"ルイナのサテライトオフィス"にさ」


カウンター席のスツールに冴えない顔の腐女子。

カウンターの中のミユリさんは苦笑いしている。


そして、モニターに映っているのは…


「だって、テリィたんの"ライフコーチ"として、とっても私はウレしいの。だって、テリィたんは私の自慢の教え子だから」

「テリィたん!作家にとって、スランプがいかに苦しいモノかを伺えて良かったわ。夜中にのたうち回って苦しんでいたナンて!生きる力になりました!」

「なんだって?」


冴えないヲタク顔のスティは目を輝かせてるw


「テリィたん!スティはSF作家を志望してるの。だから、テリィたんが創作の困難をどう克服したかを話してあげたワケ」

「参考になって良かったょ。しっかりな」

「はい。ルイナさん、じゃあ私、1年コースにします!」


何の1年コースだ?


「良い決断をしたわね!じゃまた来週待ってるから。貴女は貴女。貴女自身が貴女を変えるの!」

「…さすが、大統領補佐官はヲタク人生の補佐までスルんだね。ところで、創造的エネルギーの調整って何?」

「あのね、テリィたん。迷える腐女子には、導く人が必要なのょ」


迷えるスティ嬢がお出掛けした後で、僕はモニター画面でほくそ笑むアキバD.A.(特別区)大統領補佐官にクレームするw


「僕をダシにした詐欺紛いのインチキカウンセリングで御屋敷まで占拠するとはね」

「テリィ様、すみません。スティは国民的メイド"ひろみん"の御屋敷の子で、頼まれちゃって」

「ミユリさんは悪くない…のかどーかよくワカラナイ」←


御屋敷(メイドバー)のバックヤードをスチームパンク風に改装したら居心地が良くて回転率は急降下だ。もっと儲けてもらわないと…


「テリィたん。貴女の"ライフコーチ"として言うわ。お金儲けの邪心を捨てょ。先ず自分を否定するコトから始めて。ネガティブ自分を否定スルの」

「おいおい、ルイナ。ソンな話されてもカウンセリング料は払わないぞ。所詮は、アキバD.A.(特別区)大統領の首席補佐官と逝う激務の合間の息抜きだろ?」

「息抜きがヒラメキを生むの。フロイトだって薬物依存症だった」


何でフロイトの薬物依存が出て来るンだょ?


「テリィ様。今宵はお早い御帰宅ですね」

「ちょい休みたくなった。今回は少女の誘拐事件ナンだ」

「ソレで不機嫌なのですね?子供がさらわれるなんて、親には悪夢でしょ?」


メイド服のミユリさんが正面に来て絡んでくれる。萌え。


「ミユリさん。思いっきりぎゅっと抱きしめたい気分だ」

「今ですか?お気持ちはウレしいですが…私達アキバの"推し"と"TO(トップヲタク)"は偕老同穴。誰でも"推し"さえいれば、みんな同じ穴に収まれます」

「確かに。僕は、ミユリさんと逢うまでは、偕老同穴どころか半年も"推し"がいた試しがなかったしな…」


閃く!僕はカウンター越しにミユリさんの頬にキスw


「あら。何のキスでしょう?」

「カウンセリング料、後で払うから!」

「テリィ様、1年契約にすれば断然お得ですょ」


第3章 偕老同穴(かいろうどうけつ)


万世橋(アキバポリス)のギャレー。偕老同穴になれなかった2人。


「やぁコーヒーは?」

「えぇもらうわ」

「結局エラズはアリバイ成立ょ。彼はシロ。今朝も62丁目のダイナーでいつもの卵料理を食べてたって。マスターと常連の目撃複数」

「うーん奴が犯人だったら楽だったのに…朝飯前?」


ラギィとソレンは顔を見合わせて笑う。和やかな空気。


「テリィたんが言いそうなダジャレね」

「好きなのか?」

「そういうワケじゃない。ただ面白い人だとは思うわ」


すると、ソレンは勢いづくw


「じゃあ、もう奴とは…」

「また付き合う?もうナイわ」

桜田門(けいしちょう)から電話したくて何度も受話器を取った」


マジ顔でラギィの正面に回るソレン。


「でしょうね。でもね、私は貴方とも別れたの。忘れた?」

桜田門(けいしちょう)は、俺にとっては大きなチャンスだった」

「知ってるわ。そして、貴方は私より、そのチャンスとやらを選んだ。ってか、最初から私のコトは選択肢の中に入っていなかった」


責めるようなラギィの視線。思いがけない元カノの反撃w


「し、しかし…もし君を誘ったら来たのか?」

「まさか。ソレでどーなるの?警視庁に移る。でも、その後も、貴方は全国を異動スル。私にソレについて回れと言うの?無理だった。お互いわかってた」

「ソレでも会いたかった。懐かしいな。木漏れ日の日曜の公園デート。夜勤明けにフットサルで遊んだね。子供のようにはしゃいで」


ソレンはスポーツ野郎?敵視←


「フットサルは、ホントに…楽しかったわ」

「フットサルだけか?」

「え。」


ソレンがラギィの唇を奪うw


「おっと警視庁と所轄の秘密会議か」


物陰から現れる僕←


「深夜の会議か。正義は眠らないってワケだ」

「テリィたん!いいえ、私達はちょうど…」

「いやいや、ラギィ。お互い大人ナンだから良いさ」


ラギィは真っ赤になってるw


「なぜ来たの?帰れと言ったハズょ!」

「ソレで油断してキスか。"推し"と話していて思ったんだ。ミユリさんがヒントをくれた」

「"推し"と住んでるのか?」


驚くウィラ。無理もナイw


「偕老同穴だ。ソレで考えた。アンジは幼女だ」

「お前は幼女マニアか?」

「アラサー専門だ。生みの親は、娘を託す相手を詳しく調べる。特に経済的な状態については」


即座に反応するラギィ。以心伝心。


「キデラ家の資産を知ってたってコト?」

「ラギィ、待ってくれ。真に受けるな。素人の勘に頼るのか?にわか刑事に捜査の何がわかる?」

「素人の方が鋭いコトもある。特に元カノ観察については君よりも上だ。ソレに君の言葉だぞ。子供の命がかかってる。徹底的に調べないと」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


幼女アンジの生みの親は、今は女子大生だw


「あの時は、高校1年生でセックスは出来ても子育ては無理だったの」

「でも、あれからもう2年ょ?16才で下した決断をその間に考え直せなかったの?」

「コレ何?取り調べなの?」


余り頭が良さそうには見えない。万世橋(アキバポリス)の取調室。女子大生ラシアを囲む(キスしたw)ラギィ&ウィラ。


「自分が産んだ赤ちゃんを養子に出したコトを後悔してルンじゃナイの?」

「後悔?何で?養子に出すコトはカレも両親も大賛成だったわ」

「じゃ何で探したンだ!」


何と、いつもはクールなウィラが机を叩く。演技か?


「何の話ょ?私が何を探してるって言うの?」

「数ヶ月前、養子斡旋業者に嘆願書を出しただろう?貴女は現在の両親の住所について情報開示を求めている。見ろ、貴女の署名入りだ」

「見たけど、私の署名じゃないわ」


ラシアは定期入れから免許証を出して裏返す。


「ソッチこそコレ見てょ!サインが全然違うでしょ?ねぇ何か事件なの?あの子は?何かあったの?無事?」

「捜査中だ。家族で養子に出すコトに反対した人は?」

「だから、みんな大賛成だって!ねぇ…」


バツが悪いのか強気でラシアを制するウィラ。


「子供の父親はどうなんだ?!」

「産んだ時には仙台に単身赴任してたけど、養子に出すコトは良く話し合って決めたわ。そもそも、不倫だから彼が反対するハズがナイ」


ラシアは鼻息荒い。産んだ女は強いw


「彼は今も仙台かしら…ってか不倫だったの?」

「突っ込むトコロ、ソコ?彼なら先月、単身赴任が解除になったばかり」

「今、彼は何処?」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


幼女アンジの父親は…何と東秋葉原にいるw


「 トレポさんは?」


オフィスに入り尋ねると入口に近い同僚が指差す。


「万世橋警察署のラギィです。質問が…」


突然立ち上がり走り出すCOOL BIZの男w


「ウィラ、追って!」

「止まれ!手を上げろ」

「どけぇ!」


トレポは、同僚を突き飛ばし、雑居ビルの狭い階段を、半分飛び降りるようにして駆け降り路面に出るや走り出したら…


目の前に音波銃を構えたメイドが2人w


「ヲタッキーズ!動くな(don't move)!」


トレポはホールドアップw


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


万世橋(アキバポリス)の取調室。トレポとラギィ。


「トレポさん。なぜ逃げたの?」

「アンタが追いかけたからだ。おまわりを見たら逃げるのが東秋葉原の礼儀だろ?」

「アンタ、ホントにサラリーマン?」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


取調室の隣室。僕とウィラ。


「おや?ウィラ、君は尋問しないのか」

「奴は2度単身赴任を経験してる。男には強硬になりがちだ。でも、ラギィならうまく懐に潜り込める」

「昨夜みたいに?」


さすがにバツが悪そうなウィラ。


「ホラ怒るなょ。熱いキスだったな」

「…俺に嫉妬してるのか?」

「まさか。だが、やはり未練がアルのは君の方だったンだな」


さすがに顔が赤くなる。


「ホントは妬いてるクセに。悔しいからって無理するな」

「ふふん。キスぐらいなんてことナイさ」

「ソレはどうかな?」


元カノをめぐる醜い争い←


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


当のラギィは、しっかりトレポを追い込んでるw


「28才の時、ラシアの妊娠が分かり、その半年後に仙台に単身赴任になった。だから、子供を見てナイ」

「だから、探したの?」

「国分町でシングルマザーを大勢見た。そうしたら、無性にラシアに逢いたくなったンだ。あと、娘もひと目だけでも見たかった。ソレで斡旋業者にラシアのサインを真似て…」


言葉をつなぐラギィ。


「現住所の調査をリクエストしたの?」

「業者のCEOがシングルマザーで…親切に現住所を調べてくれた」

「貴方自身は?」

「仙台で"地雷"を踏んで俺のキャリアは終わった。もう出世は望めない。ソレもあって、娘を見に行ったんだ」


ん?娘を見に逝った…だけ、か?


「そして、誘拐して金を要求したの?」

「えっ?!何?あの子が誘拐されたのか?おい!娘は無事なのか?どうなんだ。答えろ!」

「捜査中」←


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


万世橋(アキバポリス)のギャレー。ラギィとウィラ。


「トレポのアリバイを確認出来た。営業先の会社が証言して裏が取れたわ」

「だが、奴には引き続き立派な動機と機会がアル」

「でも、トレポが犯人なら娘と一緒にいたハズょ」


ラギィも譲らないが、ウィラも譲らない。


「追跡チームに奴の家を張ろせる」

「だ・か・ら!犯人は彼じゃないわ。私達は振り出しに戻った…好きにして。でも、今回は私は負けない」

「今回は、ってどーゆー意味?」


スゴい剣幕でギャレーを出て逝くラギィとすれ違った僕は、フランス人みたいに両肩をスボめてみせるウィラに尋ねる。


「実は…以前の事件だ」

「逮捕したんだろ?」

「犯人はな。だが、子供は死んだ」←


ウィラのスマホが鳴る。


「ウィラだ…わかった、直ぐ行く。犯人が動いたぞ!」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


キデラ宅に全員集合。


「犯人の要求は番号がバラバラの1万円札を75束。小細工をするなと念を押されてる」

「警察の手の内を知ってる。慎重ね」

「カバンの色や形まで指定してきました。コレです」


金髪のウィラの部下がデイパックを示す。


「受け渡しは?」

「次の指示待ちです」

「受け渡しに備えよう」


父親のアルフが苛立つ。


「なぜ最初から場所を指定しないんだ!」

「反応を見てます。キデラさん、良くあるコトです」

「コッチも金を出す前に確認しておく必要がある。アンジの無事を確認するンです」


ウィラが諭す…だが、誰に?


「しかし、もし犯人に拒絶されたら?」

「何を言い出すのよっ!アンジは死んだとでも?」

「まさか!違うよっ!」


夫婦喧嘩が始まるw


「アンタにアンジを任せた私がバカだった。全てアンタのせいよっ!あんなモノのためにアンジを失うナンて!」


アトリエの壁画を指差しペイント缶を壁画に叩きつける。

頭を抱えて"あぁ神様!"と叫びながら出て逝くテレサ。


「キデラさん。恐怖に負けてはダメです。アンジが誘拐されたコトはお二人に責任はありません」


ラギィがなだめる。再度スマホが鳴る。


「無事を確認スルまで金は渡さないと言ってください。良いですね?」

「もしもし」

「よく聞け。指示に従わないと娘は死ぬ」


ステラの直ぐ横で頬杖しながらうなずくラギィ。


「良くわかったわ」

「受け渡しに警官を使っても殺す。スーパーヒロインもダメだ。金は用意出来たか?」

「言われた通りに用意したわ」


唾をゴクリと飲み込むアルフ。


「バックパックに入れて1番街と47丁目の北東の角に行け。ポストの下に携帯を置いた。後はメールで指示する。娘の居場所は受け渡しの後だ」

「アンジが無事か聞いてください」

「アンジがホントに無事か教えて。それまで、お金は1円も渡さない!」


ウィラに逝われた通りに突っ張るステラ。


「ママ」

「アンジ?アンジなの?」

「1時間後だ」


通話は切れる。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


騒然となる。


「金を渡せば命が危ない。私が行く。ポストの周囲に突入班を配置しよう。半径1ブロックだ」

「でも、ソレン捜査官。犯人は警官を使うなと」

「アルフさん、大丈夫。警官だとは気づかれません。以前にも経験があります」


ウィラは自信満々だが、両親は首を横に振る。


「でも、もし犯人に気づかれたら?」

「キデラさん。失敗は許されないんです」

「ソレは私の言い分だ。犯人に警官はダメだと言われた。アンジのためにも指示に従う。聞いてくれ。僕は父親だ。僕が行く。そうさせてもらいます」


そう宣言し部屋を出て逝くアルフ。ウィラは首を横に振る。


「彼には無理だ。あの精神状態では」

「でも、他に選択肢は無いわ」

「未だ究極の選択肢が残ってる。僕だ」


全員が目を丸くスル。


「はい?」

「警官じゃナイしスーパーヒロインでもナイ。ましてや、動揺もしてナイ」

「ダメだ!絶対にダメだ!」


ほとんど絶叫のウィラ。よっぽど大反対と見える。


「僕は、もともと傭兵契約に署名してる。万一、死亡しても一切の権利放棄に同意済みだ。ソレに…逝いたくはナイが、もう時間がナイぞ」


うなずくラギィ。


「確かにそうね」

「ラギィ、ホンキで言ってるのか?!」

「確かに、テリィたんって、単にノンキなだけカモしれないけど、プレッシャーに強いの。何度も見てきたわ。それに他に候補いる?」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆  


アルフとテレサは、夫婦でアンジが遊ぶ画像を見ている。

藍色のウサギのヌイグルミと無邪気に遊んでいるアンジ。


「可愛いな」


目を細めるアルフ。

テレサは泣笑い顔。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆  


身代金の受渡し係となった僕は、隣の部屋でウィラの部下の金髪に突然シャツを脱がされ…隠しマイクをつけてくれるw


「普通なら良く考えて、と言うトコロだけど、貴方は何も考えナイtypeみたいね」

「そーゆー君は僕のtypeナンだが手が冷たいな」

「あら」


微笑む金髪。その時!


「テリィたん、集中して!誘拐犯は危険ょ」

「マイクをハズす時はホットな手で温めてくれ…えっと集中だっけ?」

「テリィたん!」


きっと振り向くラギィ。


「冗談だょ笑ってくれ。緊張してルンだ」

「マイクは完了ょ。頑張って」

「そうだね…大丈夫さ」


金髪は、シャツのボタンを締めてくれて何だか新婚気分だが、ラギィの異常に大きな咳払いが聞こえて来て退散スルw


「テリィたん…その、えっと、昨夜のキスは…」

「そんなの説明は要らない。お互い大人だ」

「ホントに?」


一転してうつむきモジモジするラギィ。


「どうしても説明したいなら聞くけど」

「私は、単純にテリィたんのSFに出るスーパーヒロインのキャラ付けを深くスルための参考になればと思って、ワザとキスしてるトコロを見せたのょ」

「(良くソンな言い訳を思いつくなw)そーだったのか!なーんだ。大丈夫。彼女達の気持ちは僕が1番よくわかってる」


すると、何とラギィは心の底から安堵した様子だw


「くれぐれも気をつけて。良いわね?」

「ねぇ僕のコト、心配してくれてるの?」

「しくじったら…殺す」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆  


ショルダーバックを肩に東秋葉原の赤通りを歩く。

少し離れた覆面パトカー(FPC)の中にはラギィとウィラ。


「よし。標的が見えた(ターゲットインサイト)聞こえるか(オーバー)?」

「えぇモチロンょ。テリィたんを視認してる。もう黙って。集中して」

ROG(了解)


ドライバーズシートにはウィラ。


「大した奴だ。彼にはファンだと伝えたのか?」

「まさか。これからも絶対に言わない」

「彼のサイン会に変装して1時間も並んだコトもある。昔、彼の本に救われたンだろ?」


ラギィは唇を噛む。


「よく覚えてるわね」

「よく覚えてるさ。君のコトならな」

「あのね変装じゃないわ。コスプレだから」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆  


1番街と47丁目の北東の角。確かに、今どき珍しい郵便ポストがアル。周囲を見回してポストの下にソッと手を伸ばす。


「やや?ガラケーだ。またまた今どき珍しいな…エアリ達に下がってるように伝えてくれ。"we're watching you"とメールが来てる」

「犯人は英語圏の人?」

「いや。この直訳ぶりはアプリだな。普通は…」


"u guyz making out?(イチャついてる?)"


「…ってメールだろ?」

「おいおい、ラギィ!何で君の個人スマホへ犯人のケータイからメールが来るンだ?やめさせろ」

「ウィラ、テリィたんは私が何を言っても聞かないわ」


モチロン、聞かない。げ。犯人からメールw


「次の指示が来た。道を渡って47丁目を西だ。西って…右だょな?」

「テリィたん、左ょ」

「違うょ。右じゃナイか?"鮫"の旦那」


答えはラギィとウィラの二重奏。


「左っ!」


2対1だ。仕方なく左に向かう。


「1番街の1201番なう」

「テリィたんを視認(インサイト)

「指示どおりカルチャーセンターに入る」


"東秋葉原CC(カルチャーセンター)"の中に入る。ちょうど講座の入替時刻で玄関ホールは雑多な人々でごった返し中。


「ホールサイドの靴磨きのスタンドに来た」

「ラギィ、身代金を置かせろ」

「テリィたん。カバンを置いて。直ぐに立ち去って」


バックパックを置いて、足早に歩き去る。入れ違いにヲタッキーズのエアリ&マリレが飛び込んで来る。

因みに、2人ともメイド服だがカルチャーセンターの人混みに紛れてる。何しろココはアキバだからね。


「エアリ!マリレ!何か見えた?バックパックは?」

「エアリ、あそこ!」

「例のバックパックを背負った長髪アジアン腐女子を発見!あっ、外へ出るw」


外へのドアに触れる直前にマリレがタックル。

バックパックを背負った腐女子をマウントだw


「子供はどこ?」


エアリが音波銃を構える。


「子供?子供って何の話ょ?」


デイパックの中からは…丸めた新聞紙が出て来るw


「マリレ!向こう!」


指差すエアリ。しかし…何と何人もの男女が同じバックパックを背負って歩いている。モノホンはドレ?完全にロストw


茫然と立ち尽くすヲタッキーズw


☆ ☆ ☆ ☆ ☆   


万世橋(アキバポリス)の捜査本部。


「犯人は、パフォーミングアートを"MyTube"にUPスルと言う名目で、ネットでボランティアを募り、20人以上にバックパックを送っていました。モノホンのバックパックはLOST。募集主も探れませんでした」

「随分手際の良い説明だな!じゃ打つ手はナシなのか?!」

「アルフさん、落ち着いて。犯人が用意したガラケーをバックパックに放り込んでおいた」


うん。我ながら機転が利いてる。サエてるな。


「しかも、前もってラギィ宛にメールを送信しておいた。IPアドレスと位置情報を追えば、バックパックの現在位置がわかる」

「既に半径20ブロックまで場所を絞り込みました。犯人の居場所は数時間で判明します」

「万世橋SWATはチームを編成し、突入に備え待機中」


テレサが目を瞑る。祈っているのか?


☆ ☆ ☆ ☆ ☆   


「ありがとう。ソレに…ホットだ」


僕の胸で素敵な金髪美女が…隠しマイクを外し、コードをクルクル巻き取る。僕のナンパは、徹底的な一撃離脱主義だ。


「現場でも、君の金髪を思い出してしまった。もし、誘拐されたのが君なら、もう僕は耐えられナイ」

「大丈夫?犯人LOSTは、テリィたんのせいじゃナイ」

「靴磨きに座る犯人を見届けるべきだった」


ココで見つめ合う"恋人達"←


「自分を責めないで。でも、もし私が誘拐されたら…」

「必ず助けるさ」

「ウレP」←


ココで無粋かつ天地がヒックリ返るよーな大セキバライw


「テリィたん、スマホが電源OFF。信号の追跡不能!」


第4章 雨の日の書斎


雨の夜の"潜り酒場(スピークイージー)"。スマホで現場の映像を繰り返し見ているとミユリさんがパジャマで"御帰宅"。


「おかえりなさいませ、メイド長。眠れないの?」

「なぜかヘスター・プリンになった悪夢を見ました」

「"緋文字"だ。英米文学はAを取り損ねたっけ」


ミユリさんは、僕のスマホを覗き込む。


「テリィ様は何を?」

「ウサギを探してるのさ」

「アリスですか?桜田門の金髪女子じゃなくて?」


え。実は心の底から驚いたンだけど、平静を装う。


「あは、あはは大汗」←

「またソンな事件の証拠画像を持ち出して…ラギィに怒られますょ?」

「大丈夫。ラギィはビッグロマンスが進行中だから…ホラ、理系お人形の"理科ちゃん"がたくさん写ってるぞ」


ムリやり話題チェンジに挑むw


「テリィ様とお会いする前の私みたい。覚えてます?」

「あの右腕と首がモゲかけてる"理科ちゃん"ならね。アレ、そろそろ捨てても良いかな?」

「ダメ!たとえテリィ様でもソレはダメ!」


突然、真正面から僕の鼻を摘むw


「わ、わ、わかったょ捨てない!捨てないから」

「テリィ様。この事件と何か関係がありそうですか?」

「ソレを探っているのさ…フガフガ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆   


真夜中の現場。ライト持参で潜り込む僕とムーンライトセレナーダー。イスに座ったママ寝ていたラギィが目を醒ます。


「テリィたん?ムーンライトセレナーダーもw」

「ラギィ、眠ってろょ」

「何してるの?」


アンジの子供部屋。四方の壁がお人形で埋もれてるw


「ミユリさんと同棲を始めた頃、ミユリさんが絶対に中を見せてくれない宝石箱があった。ある日、ミユリさんは神田リバーまで洗濯に…」

「上流から大きな桃が流れて来た?」

「惜しい。中は壊れかけの…」

「radio?」


懐メロだw


「惜しい。"理科ちゃん人形"だった。くるみ割り人形のネズミにヤラれたみたいに首がモゲそうだったから、生成AI入りの新型"理科ちゃん"を代わりに入れておいたら、大泣きされた」

「泣いてません!」

「鬼の形相で大激怒…」

「怒ってません!」

「姉様、いーから黙って。つまり何なの、テリィたん」


やっと出番だw


「この子供部屋の中に、アンジお気に入りのウサギのヌイグルミが見当たらない。ホラ、この写真立てナンか、ウサギを持っているアンジの写真が2枚も入っている」

「つまり、犯人はお気に入りのウサギと知って、この部屋からアンジと一緒に持ち去った?でも、シッターも家の掃除係(ヘルパー)にも怪しい者はいなかったわ」

「子供の面倒を見るのはハイティーンのシッターとは限らナイ。家族はどうだ?僕が仕込んだガラケーの電源は、いつ切れたっけ?」


ラギィは直ぐにピンと来る。


「テリィたんが追跡の話をした直後に切れたわ…ウィラ!起きて!テレサの姉のニーナの住所は?」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆   


ラギィはともかく桜田門に手柄は譲れない。パトカーより先に芳林パークに舞い降りる。ベンチから立ち上がるニーナ。


「ニーナ・メドサ。幼女誘拐の容疑で逮捕スル」

「両手を背中に回して。貴女には黙秘権がある…」

「アンジ、こんにちはー」


幼女の目線で話しかけるムーンライトセレナーダー。


「元気で良かった。ママに会う?カワイイわね」


高い高いをスルと笑い声を上げるアンジ。やっと到着した万世橋(アキバポリス)のパトカーから警官隊が降り立ちニーナは連行される。


「はい。ウサちゃんを抱っこスル?」


ベンチに置きっぱのウサギのヌイグルミをアンジに持たせる。ウィラと視線が合う。ウィラは…僕を見てうなずく。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆  


アンジを抱いたラギィを先頭に部屋に戻る。


「アンジー!無事で良かった!おいで!」


手放しで大喜びのアルフ。ラギィから愛娘を受け取りキス。


「スゴく元気そうだね!よかった!ケガは?」

「大丈夫。ありません」

「テレサ!何してるんだ?ホラ!アンジが無事に帰って来たんだぞ。どうした?」


テレサは茫然としている。ラギィを見てユックリとウィラに視線を移す。ウィラは、テレサを睨みつけながら歩み寄る。


「何だ?どーした?」

「ラフェ。アンジを頼む」

「…おいで」


例の金髪女子だ。変な名前←


「コレもお願い」


ムーンライトセレナーダー?何で変身してるのか意味不明なミユリさんが、金髪のラフェにウサギのヌイグルミを渡す。


「ママ、パパ…バイバイ」


ラフェに抱かれ隣室に消えるアンジ。ソファに座ったママ、首だけ向けて、じっと愛娘を見送るテレサ。アルフが叫ぶ。


「テレサ!何をした?」

「私は、1日14時間働き続けて家族の生活を支えたわ。貴方は何をしてたの?あぁそう。絵を描いてたわ。でも、ソレだけ」

「違う!」


なぜかテレサではなく、アルフが動転している。


「私が早く帰れるよう働くと言ったわね?」

「そうだ。僕は子守をしてた」

「あれで?毎日TVの前に放っておいただけじゃない!」


立ち上がりTVの前にアルフを連れて逝くテレサ。


「私は、何度も泣き声で起きた。貴方は、いつもヘッドホンしてるから気づかないモノね」

「ソレでも誘拐は罪です」

「私の娘なんだから、誘拐じゃないわ!」


ソンな考えでいたのかw


「お姉さんに幼女を連れ出させた」

「私が許可したのょ」

「御主人の親権が侵されたのです」


大声で笑い出すテレサ。


「この人に親権ですって?娘がTVの前から消えても気づかなかった男ょ。そんな人、父親だなんて言えないわ」

「なぜこんなヒドいコトをした?離婚すれば済むだろう?」

「ソレで私から扶養料を取るの?私が築いた夫婦の財産の半分を得て、ついでに親権も得るワケ?家にいられる人の方が離婚は有利だモノね。でも、ダメよ。私は会社でエラズ達を見て来たの。あんな離婚は出来ないわ」


ラギィが割って入る。


「だから、身代金も自分用だったってワケね?」

「…娘が戻ったら、離婚を請求する予定でした。そうすれば、アルフには何も残らない」

「なるほど。彼が"育児中"の誘拐となれば、彼の怠慢を証明出来、アンジの親権を得られる」


テレサの顔がパッと輝く。


「彼が私が買ったマンションにアンジと住むコトは絶対にナイ。私だけが出て行くなんて、ソンな理不尽なコトは起こらナイ。アンジを養女にスルのに、私がどれだけ苦労したか。大金もかかったわ!10年よっ!」


もはや人格は崩壊、泣き叫ぶテレサ。


「その間、貴方は何枚絵を売ったの?ねぇ何枚ょ?!」


泣き叫ぶ妻を冷ややかに見つめる夫。押し殺したような声。


「そんなに僕が憎いか?」


フランス人のように肩をスボめるテレサ。


「当然でしょ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆  


秋葉原マンハッタン(駅前の高層タワー群)"の谷間を流れる首都高の光の河。 

万世橋(アキバポリス)では解散が決まった捜査本部の後片付けが始まる。


「彼女、どうなるかな」

「裁判員に母親が何人いるか次第ね」

「コレで事件は解決だ。で。やり直さないか?」


ウィラが口説く。ラギィは黙って仕事(のフリw)。


「どーせ、また異動でしょ?」

「一緒に来れば良いさ」

「ソレは…ナイわ」


横を向くラギィ。


「良く考えて」


ラギィの肩に手を置いてから立ち去るウィラ。


「確かに良い奴だ」


入れ替わりでラギィの横の席に座る僕←


「でも。またどーせ破局だ」

「そーなの?」

「だって、イケメンでエラがあって真面目」


鋭い観察眼を御披露。


「ソレって悪いコトなの?風水か何か?」

「ラギィと同じだ。陰に必要なのは陽さ。陰と陽は調和するが、陰と陰だとインインでパンダの名前になってしまう」

「だから何なの?」


半分呆れてるようにも見えるラギィ。


「午後から休講だ。本日は以上。祝杯でも上がるか」

「ごめんなさい。デートなの」

「はい?」


デスクから立ち上がるラギィ。おお!強気のタイトワンピw


「デートだって?誰と?」

「プライベートは明かさないの。テリィたんと違って公開しない主義ょ」

「元カノは思ったよりもミステリアス…」

「元カノランキング、UPした?」


呆然と立ちすくむ僕。スタスタと出て逝くラギィ。



おしまい

今回は、海外ドラマによく登場する"誘拐"をテーマに、娘を誘拐されるスーパーヒロイン、その従姉妹の公認会計士、3流画家の夫、誘拐される幼女、悲惨な離婚をした同僚、怪しげな人生講座の受講生、元JK、その元カレ、ついでに、敏腕警部の元カレ、誘拐犯を追う超天才や相棒のハッカー、元カレ登場に揺れる敏腕警部、ヲタッキーズなどが登場しました。


さらに、敏腕警部を諦めきれず、秋葉原まで追いかけて来た警視庁エリートの恋の行方などもサイドストーリー的に描いてみました。


海外ドラマでよく舞台となるニューヨークの街並みを、最近多忙でなかなか御帰宅出来ない秋葉原に当てはめて展開してみました。


秋葉原を訪れる全ての人類が幸せになりますように。

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