選淘救命隊トリアージフォース
「え?俺がトリアージロトに?」
「ああ、今トリアージロトが欠員でな。そこで君を推薦しようということになったんだ」
トリアージロトとは、選淘救命隊、トリアージフォースの花形とも言える役職だ。
まずは選淘救命隊トリアージフォースとは何か。
選淘救命隊は世界中で起こる、国家間すら超えた災害、「越境災害」に対処するために招集された国連隷下の財団、「国境なき泥血の白巨塔」の実働部隊の一つである。
余談だが、「国境なき泥血の白巨塔」は長いので英訳の略称、“MWTwB”と呼ばれている。
実働部隊は他にもあるが、トリアージフォースは「越境災害」の現場にいち早く急行し、現場の混乱する民間人を秩序保っての誘導、要救助者の救助、トリアージタッグの配給を行う部隊だ。
時に救命措置を行い、時に瓦礫を取り除き、時には人為的な悪意にも立ち向かう。
それがトリアージフォースだ。
トリアージフォースは主に民間人を安全な場所まで誘導することに重きを置かれるトリアージグリュン、要救助者の救護・救命措置を第一とするトリアージゲルプ、瓦礫の撤去や人的要因の排除など、医療現場のみが用いる想定の外で起きることの対処を行うトリアージロトの三人一組で行っている。
勿論、トリアージロトも医療従事者として医療活動も行えないといけないため、トリアージロトに成れることは“MWTwB”の中でも誉れ高きことの一つとして数えられる。
そんな役職に俺が成って、役に立てるのだろうか……。
「君ならなれるさ。……あー……、今は居ない前任者も、君と似た感じの、謂所“普通”って感じの職員だったんだ」
「そう……なんですか?」
「まぁ、うん……。彼に、心意気なんかを聞ければ良かったんだけどね……ハハハ。取り敢えず、気にせず気楽に行き給え。もし苦しければ、異動願いだって出せるんだから」
推薦した上司の言葉に背中を押され、結局、推薦を受けることにしたのだった。
推薦後は試験があり、それも厳しいものだったが、何十倍もの倍率の中、トリアージロトの座を掴み取った。
「これからトリアージロトを務めます。篠渕ノゾムです。よろしくお願い―――」
――――――!――――――!
最初の挨拶をし終わる前に、室内にサイレンが響き渡る。
「新人、悪いが緊急出動だ。挨拶は終わった後にしよう。取り敢えず俺の声がトリアージグリュンと憶えていたらいい」
「ワタシはトリアージゲルプ。“着装”の仕方は分かる?」
「あ、はい。そこは前に確認しました」
「じゃあ、いけるね!早速出動よ!」
そして出動し、専用の防護服を“着装”する。
「「「着装!」」」
着装PINユニットにIDカードをスライドさせ、叫ぶ。
身体に様々な装備が着装され、気が付いたら着装の全てが終わっていた。
そしてビークルを駆り、現場に急行する。
『俺は混乱する民間人を誘導する。後は頼んだ』
『「了解!」』
トリアージグリュンは避難誘導をするため、散開した。
『トリアージロトはワタシ、ゲルプに続いて。今回の災害は比較的安定した状況で、想定外の状況が発生する可能性が低くて、最初はワタシと一緒に救命措置をしていけばいいから。今回に関して、救護外の想定外事態はワタシが判断するからね』
「わかりました」
そして、現場に到着。
が、しかし。
そこには要救助者の姿の他に、仁王立ちする謎の存在が居た。
「カァーッカッカッカ!これで我ら、『カラミティ・ディザスター』の地上の復活はいとも容易く……ん?」
「だ、誰だ!?何をしている!?要救助者から離れろ!」
「ヒト……、か。我らが眠っている間に地に満ちた、傲慢たる虚ろの支配者……」
「なんのことだ!」
「……ロト」
謎の生命体に熱くなっていると、ゲルプが冷静に話しかけてきた。
「なんです……?」
「これは明らかに想定外事態よ。あのヘンナノは言葉からするに良いヤツではなさそうね……。だから君は、ワタシが要救助者をアイツから離すまで、時間稼ぎをお願いするわ」
「分かりました」
そして変なヤツに向き直り、改めて問うてみる。
「お前は何だ!なぜここに居る!」
「俺は地球の真の支配者、『カラミティ・ディザスター』の一柱、“ソルア・フレア”様だ!俺たちは地球の支配をヒトから取り戻すためにこの大地に再び立ったのだ。冥土の土産に憶えておけ!」
俺たちの長きに渡る宿命の戦いが今、始まった。
そのことを俺はまだこのとき、知らないのであった―――。
――――――。
さて、来週は豪華二本立て!
『謎の讐撃者!クリムゾンレティング!』
『敵か味方か、トリアージシュバルツ!』
の二本をお送りするよ!来週も俺たちの活躍をまた見てくれよな!
来週もまた見てくれとか書いてますが、連載ではなく、ここで完結です。
二次創作歓迎作品です。