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影向  作者: 水上祐真
第三章 影踏み
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【出処不明の記録】胚の見た夢



まっくらなところにいたのをおぼえている。


くらくて、つめたくて、ずっとねむいところ。


おぼえているんだけど、どれくらいのあいだそうだったかはおぼえていない。


そうじゃないところにきてはじめてわかったから。



ここはとてもあかるくて、あつくて、ねむれないところ。


とてもうるさくて、とてもこわいところ。


うずくまってじっとしていると、なんだかしずかになった。


くらくて、つめたくて、ねむい。


あそことおなじ。




でも、どうしてだろう。


……さみしい。


これがなんなのかはわからない。


けど、やっぱりまえとちがうのはわかった。



さみしい。さみしい。さみしい。

こわい。こわい。こわい。



ぶるぶるふるえていると、なにかがそばをとおった。


こわかった。



こないで。


こっちをみないで。


きづかないで。


きづかないで。


なんかいもおねがいした。


でも、どうしてだろう。そのたびにちかづいてくるのがわかった。


とてもこわかったけど、まえよりちかくにきてやっとわかった。


あったかい。


あのあついのとはちがう。


"じぶん"じゃない"だれか"。



それがほしくてほしくてしょうがなくなった。


もっとこっちにきてほしかった。


きづいて。


きづいて。


さみしい。


こわい。


こわい。


そばにいて。



たすけて。



なんかいもおねがいした。


あついのはいやだから、つめたいときに。



だんだん、だんだん。

そのあたたかいものもおなじことをおもっているのがわかってきた。


こわいんだね。


さみしいんだね。


うれしくてもっとおねがいした。


どんどんちかくにくるあたたかいもの。


きづいて。きづいて。きづいて。


たすけてあげるから。




──きづいてくれた。


ふれると暖かかった。


でも、またすぐに冷たくなった。



いやだ。

怖い。

寂しい。


もっと触れたい。

あの暖かいものになりたい。



独りはいや。



"ぼく"は、冷たくなった"ぼく"にお願いをした。


もっと連れてきて。


暖かいものをたくさん連れてきて。



冷たいぼくが、暖かくなるまで。



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