表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
96/197

牢屋の中の積もる話

二人のもたれかかっている牢屋の壁はヒヤリと冷たいが、そんな事は気にならない。

何故なら京美と村田。それぞれがどんな境遇でこの世界に来て、どんな風に過ごしてきたのかお互い積もる話があり過ぎる。

だから、背中の冷たさなど気にしている暇など無い。


「武田さん、さっきはいきなり悲鳴あげちゃってスミマセン! 私、久々に知ってる人に出会ったからテンションあがっちゃって」


「テンションがあがったからあんなに叫んだの……? まあ、いいけど……私さ、この牢屋には”苦悶の魔女”が居るから気をつけろって聞かされてたから、本当にビビっちゃったわ……」


村田は「へ?」と口を半開きにしている。

「苦悶の魔女…?ですか? 私、外でそんな風に呼ばれてるんですか!?」


「うん、呼ばれてる……で、顔見たら村田ちゃん。拍子抜けするわ……」


「えー!? 何で私にそんな怖い異名付いてるんだろ!? ウケちゃいますね! ふふふ!」


「自分でもわからないの? なんか人の顔を歪ませたから”苦悶の魔女”って呼ばれてるみたいだよ。こっちの世界に来ても村田ちゃんは変わらないねー」


「人の顔を歪ませた……? あー、あのおじさんと遊んでたこれの事かな?」


村田はゴソゴソとパーカーのポケットをあさり、携帯を取り出した。そして電源を入れると画面を京美に見せてきた。


画面には村田と”おじさん”がツーショットで写っていている、二人の瞳はやたらキラキラと光り小顔に加工されている。それは何時ぞやに見せてくれたあの顔を面白くさせるアプリ”Wnow”だった。


「私、目覚めたら赤い石がくっついた崖の下に居て、一人で彷徨ってたらマスクしたオジサン達に合ったんです! その後一緒にWnowで遊んでたりして……そしたら突然地震があってー……」


京美は村田の話に驚いた。

そして、一つ一つ質問をして謎を解いていこうと思った。


まず一つ目、それは携帯のバッテリーの事。


村田は自分よりも少し先にこの世界に転生されたはず、それなのに何故、今も携帯を使える事ができるのか??京美の携帯は手元にはあるがとっくにバッテリーが切れている。


「ねえ、村田ちゃん。なんで携帯のバッテリーまだ残ってるの?」


「あ、私ケータイヘビーユザーだから、これ常に持ち歩いてるんです!」


誇らしげに言い切るとゴソゴソと更にパーカーのポケットを漁る村田。

その手には文庫本?と見間違えるほど大きなモバイルバッテリーが乗っていた。


「武田さんも充電します?」


「いいの? 助かるよ。村田ちゃんありがとう!」

(携帯ばっかり弄ってる若い子の事……ちょっと呆れて見てたんだよなー……今はそれに助けられてる……)


「武田さん……、何か変わりましたね……?」


「え? 何が変わったの? 何処かにシミが増えたとか?」

京美は焦った様子で顔を擦りながら聞き返した。


「ふふふ、違いますよ! なーんか、話しかけやすくなった気がするんです!」


「そう?」

京美は照れ隠しでそんな風にとぼけてみたものの、実は自分でも変化があった事は自覚していた。


この世界に来て変わった事。

言葉に頼らなくても、人の真意を読み取る事が出来るようになった。

他人から自分はどんな風に見られているのか、それを客観的に見る事が出来るようになった。


それは、元の世界の京美には必要の無かった要素。


自分が気を使わなくても周りの人間は京美を気遣い、立ててくれる……。


しかし、実際には小谷に裏切られていた。

今の京美だったら、小谷の真意にも気づけていた筈。


「村田ちゃん、会社も嫌だったの? さっき言ってたよね」


京美のその問いにさっきまで元気だった村田は俯いてしまった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ