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それが罠だと知っている④

「何度も言うが……お前では試せない」

サミュエルは侍女の手にそっと触れる。


「サミュエル様、嬉しい……。でも、私もお役に立ちたいのです」

侍女はサミュエルの手をそっと握り返し、ゆっくりと玉座から離れた。


「さあ、私で試してください」


「そこまで私の事を思っているのか……心配だが、お前の意思を尊重しなければなるまい……!」


(結局、やらせるんかい! 勿体つけやがって! 面倒くさい男だね!)


京美は死の石の欠片を持ち侍女に近寄る。

「この欠片が触れた瞬間に眠りにつきます、どこか安全な場所に座るか横になってください」


「ならば、この玉座に座れ」

サミュエルは立ち上がると侍女の手を取り、玉座に座らせた。


「では、”死の石”を触れさせます!」

京美は侍女の手に欠片を触れさせた。


その瞬間、侍女の瞳がスッと閉じられ、体から力が抜けぐったりと玉座にもたれ掛かった。

ドレス姿も相俟って、その姿はまるで人形の様にも見える。


サミュエルは大事な侍女が眠ってしまった事に驚き、肩を激しく揺さぶり起こそうとする。

「おい、目を覚ませ!」


しかし、侍女はサミュエルの声掛けでさえピクリとも反応しない。


「この状態になると目を覚まさせるには”治癒草”が必要です。ご覧の様に”死の石”は触れた者を瞬間的に眠らせる事ができます。そして、恐ろしい事に少量の欠片を吸い込むだけでも眠り病になってしまうのです」


『死の石も本物だ……!』


『ヤーシャ族達は悪く無かったんだ……つまり王は何処かで死の石に触れたという事か?』


ヤーシャ族達を訝しげに見ていたバンガ城の従者達。その視線は明らかに変わり始めていた。

誤解が解け、一方的にヤーシャ族を悪く見ていた事が自分達の誤りだったと気づき始めたのだ。



サミュエルはそんな周りの状況には気にもとめず、声を荒げた。

「もういい! 死の石の効果はわかった、早く治癒草で目覚めさせろ!」


京美は手短に「わかりました」と返事をして、治癒草の種を一摘み取り、侍女にふりかけた。



『これで、侍女は目覚め、そして王も目覚めるだろう』

この場に居るバンガ城の従者達はそう思った。

そして既に祝福のムードに溢れている。





─しかし、予想に反し侍女は一向に目覚めない。

玉座の上でぐったりと人形のような姿のままでいる。



侍女の様子を見ていた従者達は予想外の出来事に騒ぎ出した。

『おかしいわ……! あの子動かないわよ』


『いや、目覚めるまでに時間がかかるんじゃないのか?』



そんな騒ぎの中、シロウと京美は顔を見合わせる。

「どうなってるの? 私は種をふりかけたよ!」


「何故、目覚めない!」


ヤーシャ族達も二人の反応を見て慌て始めた。

落ち着きなく眠ったままの侍女や周りの従者達を見回している。



サミュエルはユラリと京美達の前に立つと、一層歪めた顔で絞り出すように言った。


「やはり、所詮はヤーシャ族か……お前ら謀ったな?」


そう言い終わると右手を振り上げた。


そのサミュエルの合図で衛兵達は槍を構え、京美達を取り囲んだ。


「このペテン師どもを牢屋にぶち込め!」

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