石像はどうなる?②
結論から言うと3つの穴に種を投入しても結果は同じだった。
一つ投入した時と同じ様にカタカタと揺れだし、同じお告げをして、そして種が光を失うだけだった。
ティムや京美はその様子にも慣れ始めていた。
しかし、アリナやデカはかなり興奮したようで、石像に向かって拍手なんかしている。
「ちょっとガッカリだねぇ、こうなるとやっぱり、”死の石”と”治癒草”それぞれ必要なんだ」
「京美さん、いま手元には5個しか欠片はありませんが、やってみますか?」
ティムはそう言って、死の石の欠片の入った小瓶をテーブルの上に置いた。
「そうだね、チャレンジ出来る回数は限られているし、些細な事を見逃さないようになるべく大勢で見たほうがいいと思う」
さっきと同じ様に石像をテーブルに寝かせ、固定させる。
そして手袋をしたティムは欠片を一つ取り出した。
京美も麻袋から治癒草の種を取り出し構える。
「では、さっきと同じカウントでいきます!」
京美は黙って頷いた。
周りも息を呑むように見守っている。
「3! 2! 1! 0!」
今度のタイミングもバッチリだった。
その場にいる全員がきっと石像は揺れ始めるだろうと、テーブルを注目している。
しかし、石像は揺れなかった。
その代わりに、音も無くふわりと宙に浮いた。
その高さはデカの目線ほど、まるで風船の様にフワフワと浮いている。
呆気に取られ、誰も動けないし声も出さない。
欠片も種も入っていない、もう一つの空の穴から光が放出されユラユラと揺らいでいる。
「え……? 何これ?」
思わずポツリと出た京美の言葉。
─次に聞き覚えのある懐かしい声が聞こえてきた。
『…………さー、………ったの!』
(聞き覚えがある! 誰だっけこの声は!?)
『だからー! あたしがさー!!』
(思い出せそう! 誰!?)
『ね! 部長に直接さー!!』
(部長………!? もしかしてこの声は!!)
石像からユラユラ揺らいでいた光は、だんだんと色づき始めた。
そして何かの形になっていく。
どうやら、その形は”小柄な人”の様だ。
(もしかして、これは………)
『私に感謝してよねー! あの”姐さん”を追い払ってやったんだから!』
「今”姐さん”と言った………! 小谷…………!?」
光は完全に”小谷”の姿を映し出している。
仕事中にも関わらず、誰かとお喋りをしている。
そして聞き捨てならない内容の話!?
『あのパワハラ酷かったじゃんー! もうさ、あたし見てられなくてさー! 部長どころか社長にも言ってやったのよ!』
『武田京美さんはこの会社にとって損害を与える人物ですよって!! あ、損害じゃなくて大損害か!? ちょっと……! そんな笑わないでよー 私もおかしくなって来ちゃった! アハハ!! 』
小谷はさも可笑しいとケラケラと笑っている。
「小谷……………! あいつが私の事を部長に!」
『でもさ、ほんと”消えてよかった”よね』
「………」
──石像は小谷の姿を映し出し終えると、テーブルの上に吸い寄せられる様に落ちた。
死の石と治癒草は両方とも力を失っている。
京美は俯いてがっくりと肩を落としていた、今は小谷に対し怒る気力も無い。
──室内は重い空気に包まれている。
「キョーミ……ここに居てくれてありがとう」
アリナはそう言って、京美の手に触れた。
「京美さんが居なかったら、僕、生きてないですから!」
「そうだ……京美が居なければ、俺達だって人に恐れられたまま、フタツ面の森で籠もり暮らしていたはずだ」
京美は顔を上げた。
「………ふふ、みんなありがとう。 そうだよね小谷に裏切られたからって落ち込んでるのはバカバカしい! あの女! 絶対に私に謝らせてやる!!」




