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夢の中のネガイ

京美はティムとアリナの家に一泊し、朝になると3人一緒に石造りの屋敷に向かった。


屋敷に着くと、庭でダイマルが日向ぼっこをしていた。

アリナは何時もの様に抱きつくと、それに答えるようにダイマルは「クーン」と鳴いている。


シロウとヤーシャ族達が槍を片手に正面から歩いてくる。

「あれ?シロウ達、何処かに行くの?」


「ああ、フタツ面の森に狩りに行くところだ」

シロウの後ろでデカがアリナに向かって手を振っている。


「丁度良かった! 治癒草の採取お願いして良い?」


「わかった、昼前には帰る」


「悪いね、ちょっと休みたくてさ」



京美はアリナと一緒に窮屈な姿勢で一晩過ごしたので、体のアチコチが痛く、そして何より寝不足だった。

欠伸をしながら長椅子に横になった京美は一眠りする事にした。


あっという間に眠りに落ちそうになり、ウトウト状態で二人の様子を見ている。


アリナは屋敷の中を掃除してくれるらしく、箒や水を入れる桶などを用意して忙しそうだ。


ティムは石像をテーブルの上に置き、熱心に色んな角度からスケッチやメモをしている。


京美はそんな二人を夢見うつつに見つめながら、深い眠りに落ちていった。


……チカラワ……イラナイ………


あの声が、聞こえる。

男か女かわからないあの声が。


京美の見た夢、そこは暗く広い空間ではあったが、とても深い安らぎを感じた。


……キエタクナイ……カナエテ………


「消えたく無い?」

京美がそう問いかけると、あの埴輪がぼんやりと目の前に現れた。2つの穴からは水滴がつたって流れていて、それはまるで涙の様に見えた。




「京美、採ってきたぞ」

シロウは軽く京美の肩に触れ、声をかけた。


夢から目覚めた京美は身体を起こし麻袋を受け取った。

「助かるよ、シロウ!」


目をこすりながら袋の中を見ると治癒草の種が黄金色の光を放っている。

ティムとアリナも一緒に袋を覗き込んだ。


「バンガ王の分に、後は死の石の処理分でしょ。量は足りてそうだね……あ、そうだ! シロウ、バンガに遣いを送ってくれるって」


シロウは驚いて振り向くと「おい! 京美それを早く言ってくれ!」と叫んだ。


「いやー、だってさ、凄い出来事があったんだって! うっかり伝え忘れ位するよ……きっとシロウだって忘れるよ……」


「いいや、俺は忘れん! とりあえずアイツらに教えてくる」


暫くすると、奥の部屋からドタバタとヤーシャ族達がやって来て、シロウを胴上げし始めた。

『バンザーイ!バンザーイ!』

シロウは相変わらず無表情でされるがままになっている。


「あー、もう騒がしいねえ……なんでわざわざここで胴上げするのさ」京美は頭を抱えた。


「京美さん、騒いで当然ですよ! ヤーシャ族の誤解が解けるチャンス到来ですから」


アリナはテーブル上の埴輪に小さな赤いスカートらしき物を履かせている……ひょっとしてアリナの手作りだろうか?


その様子を見ていた京美は”夢の中で聞いた言葉”をぼんやりと思い出していた。


ちからはいらない……


きえたくない……

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