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ティムの変身

「ティム、ど、どうしたのよ?」

いきなりの悲鳴に騒然となる店内。


「……。」


ティムの返事はない。


「ティム? 開けるよ?」

京美は、心配だったのでカーテンを開けようと手を掛けた瞬間、ガシッっと内側から掴まれた。

ティムは抵抗し、必死に開けさせまいとしている。


開けようとする京美、抑えるティム

その攻防にギリギリと厚手のカーテンは捻られる。

「破けちまうよ!」

ローズは焦った声でパニック状態。


「ちょっと!? 大丈夫なのね?」


「大丈夫です……」


その声を聞き、とりあえず無事を確認したので、ティムが自分で出てくるのを待つ事にした。


別の意味でアリナの時よりも注目されているティム。

息を呑み、成り行きを見守る一行。


観念したかの様にティムの足が試着室から出て来た。

何故かスボンは履いておらず、素足。

ミントグリーンのフリルがヒラヒラと見える。



出て来たティムが着ていた服は”ドレス”だった!

プリンセスライン……アリナとお揃いの色違い。


「……」

静まり返る一同。


「あぁ、やっぱりお姉ちゃんはこの色だったね! あたしゃ最後までどんな色にしようか悩んでねぇ〜」

ローズは一人ご満悦。


どんなプロの職人でもミスは起こる、人間だからそれは仕方の無い事だ。


うん、かなり似合ってる。

でも、どんな反応をするのが正解なのかが解らない。


ティムを慰める?

それだとローズさんに悪いよな…


うーん、正解はティムを褒めるかな?


そもそもうちらは仕立て代を払ってないし、

ティムの性格なら直ぐに立ち直るだろう。

それに、ちゃんと着替えてると言う事は披露するつもりでいたんだろうし。


「に、似合ってるじゃん……」


「お、おう、似合ってるな……」


ヤーシャ族達は気を使い、パチパチ…とぬるい拍手が起こった。


アリナは目を輝かせていて

「兄さん!……あ、姉さん? お揃いだね」と喜んだ。


「アリナ、呼び直さなくてもいいから……」


空気を変える為に京美はローズに明るくお礼を言う。

「ローズさん、素敵な服をありがとうございます」


「いいのよ、また何かあったらうちに来なさい」

ローズはいい仕事をした!と満足そうだ。



─仕立て屋を出て城へ向かう、体格の良い男性陣が礼服姿、可憐な女性陣+男性1名がドレス姿で歩いている。

必然的に街の人達の視線を集めてしまう。


『ドレス素敵ねぇ、スタイル良いから似合うわよね』


『格好いいね!この前のサーカスの人達じゃない?』


『きっとお城に行くんだ』


格式高い服の効果は抜群でミャラッカ街の人達の評価はかなり良い。

屋台村を訪れた時の厄介者の扱いから

今はまるでスターのような扱い。

周りの反応にヤーシャ族達も自然と笑顔になる。

ティムだけは普段の笑顔が消え真顔になっているが……。


ミャラッカの若い兄ちゃん達が、こちらを見ながらアレコレ言ってるのが聞こえる。


「やっぱピンクの子が良いよ」


「ありきたりだなー、俺は赤のお姉さんだね、グイグイ引っ張ってくれそうじゃん」


どうやら、私達の噂の様だね。

よっしゃ、一票入った!


『うわ! 緑の子見て、あの憂いを帯びた表情』

ティムを見て兄ちゃん達が騒ぎ出した。


『緑の子いいわー!』

満場一致。


(嘘でしょ! ティムに負けた!)

チラリとティムに目をやると、何時もの爽やかな笑顔に戻っている。

兄ちゃん達の評判で自信を取り戻した様だ。


ティムは小指に付けている指輪をキラリと光らせると、ホホホホ!と得意げに笑い出した。

「皆様、お城へ急ぎますわよ! アリナ行きましょ!」


「はい、姉さん」



ティムにはもう少し落ち込んでて欲しかったと京美は思った。


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