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レナの様子

サーカステントに着くと、前来た時の様にフィリップが入口を開けてくれる、中に入ると演者の天族達が練習をしているのが目に入った。

以前来た時と同じ光景の筈だが、少し違和感を感じる。

何かが違う。


「さっ、皆様こちらへ」

フィリップは居住テントに案内してくれた。


天族の横を通り過ぎる時、演者達はフレンドリーに手を振ってくれた。初めて会った時の対応とは大違いだ。


(そういえば、はじめてここに来た時”レナ”が一番に挨拶に来てくれたな)

そんな事を思い出しレナを探してみる。


集団の中にいるレナを見つける事は出来たが、なんだか様子がおかしい。

京美達が真横を通り過ぎても、その事に気づいていないようだ。

壁に寄りかかり宙を虚ろに見上げている。


「レナ頑張ってねー!」

気付いてもらえる様に声をかけてみる。


レナはその声でようやく京美達に気づいた様子、瞳に輝きを戻しにっこりと笑い返してくれた。


(レナ元気ないね……そういえば、あの嫌味な奴が居ないじゃん……アダムだっけ?)

京美は違和感に気付く事が出来た。



──居住テントに入ると

直ぐに丸テーブルに花の香のお茶が運ばれてきた。

ブレンダーの手作りクッキーも一緒だ。


「わ! 美味しそうですね! いただきます」

ティムはクッキーに一番に手を伸ばす。

それにみんな続き、あっという間にクッキーは無くなってしまった。


「まあ、嬉しいわ」

空になったお皿を見てニコニコとブレンダはしている。


「ねぇ、フィリップさん、新しい構成のサーカスってもう考えたの?」

京美は場を持たせる為に話を振った。


「はい! 次の公演は全く違うものを考えてあるんですよ、ミャラッカ国との調和を考え、テントで行うのでははなくフタツ面の森で自然と一体感を表現しようと思いまして!」


「え!? 森の中でサーカスをするの?」

驚きの余り持っていたカップを思わずソーサーに戻す。


「ワハハ! アイデア女王の京美さんも驚かれましたね? そうです、フタツ面の森で公演するのです!」


「彼処には魔物がいるぞ、普通の国民は恐れて来ないんじゃないか?」

ちょっと前までフタツ面の森に住んでいたシロウのリアルな問い。


「警備団を雇い、万全な体制で行うのです! 人を寄せ付けないフタツ面の森のイメージを払拭するのです!」


「壮大な計画だねぇ……木が沢山あるから飛ぶのは大変だろうね、天族が怪我しないように注意してあげてね、まぁあの”アダム”は自信満々でやり遂げちゃうんだろうけどさ」


フィリップの笑い細めている目の動きが止まる。

「今度の公演は”レナ”を主役にしました」


「え!? レナを?」


「フタツ面の森の公演は確かに難易度が高い……ですので今度の大風の日の一回限りの特別公演にしようと考えているのです」


京美はティムに顔を向ける。

「大風の日って?」


「月の形が一回りする間に一回だけ風が強く吹く日があるんです、それが”大風の日” 天族にとって風がある事はとても優位で公演の難易度が下がります」


「へぇー、フィリップさん、ちゃんと演者の事を考えてるんだね」


「はい! もちろんですよワハハ!」


「でもさ、主役変えちゃったら”アダム”がヘソ曲げるんじゃない?」京美はカップに口を付ける。



少しの沈黙の後



「アイツは”クビ”にしました ワハハ!」とフィリップは笑い飛ばした。

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