何をすれば?
レナを怒鳴った男は天族だった。
金髪の巻毛、背は高く、顔立ちは彫刻の様でその表情は自信に溢れている。
「レナ、こっちに戻れ!」
「アダム、お客様よ」
レナはアダムを窘める。
アダムは苛立った様子でこちらに近づいて来て
「お客様だってぇ……? ハッ」
京美達をジロリと見渡し鼻で笑った。
フィリップ団長は声を荒げる。
「アダム! この方達は今度の生誕祭のゲストだよ」
「団長、オレ、新技思いつきました。 だからゲストなんて必要ありませんよ」
「いいから、戻りなさい」
アダムはチッと舌打ちし、レナの肩を抱きながら踵を返す。レナは申し訳無さそうに京美達に軽く会釈をした。
団長はこちらを振り返り謝る。
「うちのアダムが大変失礼な態度……申し訳ありません」
「団長も大変だねぇ」
「いやぁ……、あのアダムはうちのエースなのですが、見ての通りあの様な性格で程々手を焼いております」
「何処にでもいるよそういう人。だから気にしないで」
京美は悟ったように言うが、実際には自分の若い頃を思い出しての発言だった。
「そう言って頂けると有り難いですね、では案内を続けさせて下さい」
どうやら放浪サーカス団は天族の演者がメインのようで、他の種族は殆ど見当たらない。
「さ、こちらが私の住居になります、どうぞこちらへ」
サーカスの裏手には簡易的に組立てられた居住スペースがあり、そこで団長達は生活しているようだ。
内部はランプが吊るされ、大きな円形のテーブルセット、ちょっとした調理スペースがあり、生活するには不便は無さそう。
居住スペースには赤髪で”努力して得た品”の女性が居た。
「ブレンダ、皆様がいらしてくださったよ」
ブレンダは微笑み
「歓迎いたしますわ、”シロウのなんでもお助け団”の皆様」
「どうぞ、お座りください。ブレンダの淹れるティーはどんな店よりも美味しいですよ」
団長は冗談めかしたように言った。
「貴方、やめてくださいな、手が震えてしまうわ」
椅子に座り京美は団長に質問をする。
サーカスのゲストになる事は決めたが、具体的に何をすればいいのか確認しなくてはならない。
「フィリップさん、うちらは具体的に何をすればいいの?」
団長はワハハと笑い
「皆様の出来る事で良いのです!」と言い切った。
「それでは、困っちゃうんだけど……芸の素人だしさ」
「…聞けば、屋台村では聖獣に芸をさせていたとか?」
フィリップの表情は笑顔のままであったが、細めた目の奥はこちらを伺うような動き、時が止まっているように感じる。
京美はフィリップの瞳から目を離せない。
「あぁ、ダイマルね…。 そうだけど?」
フィリップはパッと表情を変え
「そうです! そのダイマルちゃんがいれば何だって成功しますよ!」
京美はそうフィリップに言われた直後、無性に腹が立ち、何か言い返してやろうかと思った。しかし実際に”芸”と言う事に関して自分達は何も出来ないと思い我慢した。




