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雨の日の噂

本格的に雨が降り出した。

雨粒が石畳に当たりピチャピチャと音をたてる。


白髭の老人は長い眉毛で目を開けているかどうかはよくわからない。


「村の北の湖にデイビーズさんの屋敷があるんですか?」

確認の為、老人の言葉を繰り返してみる。


長く下がった眉が少し動いて老人は語る。

「そうだ……、湖の向こう側の立派な屋敷だ、デイビーズは収集癖のある男でな、世界中の変わった物を集めておった」


老人は雨音を気にして窓外を見つめながら話を続ける。

「何時だったか……?大切にしていた”羽飾り”が無くなったと嘆いておったな、ハハ……ワシは商いをしていてな、上客だったなデイビーズは……」


京美達は顔を見合わせ間違いないと頷いた。


「知らなかった、あの屋敷がそのデイビーズ家なのかい?ウィルソンさん」

マスターが話しかけた白髭の老人は、どうやらウィルソンというらしい。


中年の男は話を静かに聞いていたが「あ!」と反応した。

「俺の友達が言ってた屋敷かな……?」


「どんなお話ですか? 教えて下さい」

ティムは身を乗り出す。


男は唸りながら考え込み

「旅人さん達、今からそこに行くつもりだよな?」

と聞いてきた。


「もちろん! その為にウチラはここに来たんだよ、知ってる事があるなら教えてほしいよ」


男は宙に視線を泳がし言うか言うまいか悩んでいる様だったが、覚悟を決めたようにこちらを向いた。

「……あんたら、強そうだから大丈夫だと思うんだけど……ちょっと不気味な話でさ……あの屋敷には”女”が閉じこめられてるって話…」


「女が閉じ込められてる? どうしてそんな話が?」


「俺の友達はあの湖で釣りをするのが好きなんだ、嵐の日は決まって二階の窓際に女が立ち竦んでいるらしい、なんでも髪の長い女だとか……」


髪の長い女。

グレースの特徴と当て嵌まる。

やはり髪飾りを無くした事でデイビーズの怒りに触れ閉じ込められているのだろうか。


「そう、こんな雷の日には女は決まって窓際に姿を現す……」


中年の男の話を聞き終えない内に京美達は席を慌てて立つ、シロウはデカが背負っていた荷物から人数分の毛皮のフードを取り出すと皆に配りだした。

いそいそとティムとデカはフードを被り始める。


「マスター美味しかったよ、また来るね」

京美は店の客に軽く会釈をしながら言った。


アリナはお代をテーブルの上に置き

「ご馳走様でした、今度お料理教えて下さい」とマスターに言った。


「あぁ、いいとも教えるよ、また来てくださいね」


「では、また!」

京美達は毛皮を目深に被り、雨の中を走ってデイビーズ家に向かった。




──余りの速さに呆気にとられる酒場の男達。


マスターは聞く。

「ウィルソンさん、商いをしていたっていつの話?」




ウィルソンは窓外を見つめながら

「もう…30年以上は前になるか……デイビーズは胸の病で亡くなったよ」と呟いた。

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