表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/197

雨の降る前

店の中央付近にあるテーブル席に座る京美達一行。

デカは椅子に窮屈そうに座るが、食事が出来ると言う事でニコニコしていて不満は無さそうだ。


カウンターに座っていた中年男性はこちらを振り向いて

「この辺では見ない顔だね、旅人か?」と声を掛けてきた。


「そうなんだよ、人を探しててさ、マスターおすすめを人数分頂戴」


「はいよ! 人探しなのかい? 大変だね」

気さくなマスターは忙しなく動きながらも話を振ってくる。

盛り付けられた皿には飴色に炒められた酢豚の様な料理が乗っている、それを中年男性の目の前に「おまたせ」と置いた。


「旅人さん達、これが一番美味いんだよ」

中年男性は常連らしく、皿を少し傾け料理を見せてくれた。


「そんな紹介されちゃったら、その料理作るしかなくなるだろ」

笑いながら言うマスター。


「確かにな!」と男性は笑い返す。


居心地の良い酒場。

マスターは一人で切り盛りしているので料理が運ばれてくるのは遅いが、この店で待つ時間は悪くない。


外を見ると婦人達は既に居なくなっていて、雲行きが怪しく今にも雨が降り出しそう。


「食べ終わったらさ、どんな人探してるか教えてよ」

ありがたい事に中年男性は協力してくれるようだ。


暫く待つと料理が運ばれてきた。

「はい! 旅人さん達おまたせ」


大皿には先ほど男性が見せてくれたスパイシーな香りの料理が盛り付けられている。

『いただきます!』

パリッとした色とりどりの野菜の歯ごたえ、その後に来る甘み、肉は甘辛く味付けられ柔らかくほぐれる。

皆料理に夢中なっていてカニを食べている時のような静けさ。


大皿はあっという間に空になった。

満腹満足とお腹を擦るデカ

アリナは感動しているのか空の皿を見つめている。


マスターは嬉しそうに言う

「そんなに美味そうに食べてくれて作り甲斐があったよ」


「マスター、あんた凄いな」

感銘を受けたシロウ。


「本当、美味しかった! 弁当の具に提案したら今度こそ部長に評価してもらえるかも……」

もう一つの世界での仕事を思い出した京美だった。




カウンター席の中年男性はこちらを振り向くと


「だろぉ? ここの『プミミンの甘辛焼き』は半端ないんだ」

と得意げに言った。


「な……なんだって? プミミン? あのプミミン?」


「ほらね! 京美姉貴、プミミン美味しいんだって!」

デカはなんだか得意げだ。


「見た目は不気味だけど、頭を落として滑りのある皮は取っちゃうんだよ、そうすると食べやすくなる」

レシピを惜しげなく教えてくれる。


アリナは自分のポーチからメモを取り出し熱心に話を聞いている。


「それで、あんた達が探してる人ってどういう人なの?」

マスターはニコニコとしている。


「デイビーズ家のグレースと言う女性なんですがご存知ありませんか?」


「デイビーズ、デイビーズ? 聞かないなぁこの辺の家なのかい?」




参った。

歴史のある店のマスターでさえわからないというデイビーズ家、ポールの言っていた事に間違いがあったのではないか?



依頼が疑惑に変わり始めた時


壁によりかかりうたた寝していた老人がいつの間にか目覚め喋りかけてきた。


「デイビーズ家はこの村の北にある湖の向こう側にある」




─外はとうとう雨が降り、遠くの空には稲光が走リ始めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ