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ポール

暗がりから現れた男。

顔がぼんやりと白く浮かんで見える。

少しずつこちらに近寄ってきているのか徐々に男の容貌がハッキリしてきた。


肌は白く痩せ型。

髪はピッチリと整えられており

クルンとした小さな髭を鼻の下に貯えている。

服装はきちんとネクタイを締め、

体にフィットした銀色のベストを着用している。

紳士の男性。


「…すみません、お願いがあるのです」


京美は急に声を掛けられてかなり驚いたが男に返答した。

「あ……ごめん今日はもう休む時間なんだよ、明日また来てくれる?」と伝えた。


「はい……」

男は返事をすると、森の暗がりに戻っていった。




──朝になり鳥のさえずりが森に響く、慣れ始めたフタツ面での朝だった。ティムとアリナは家に戻ったが、狭いベッドが腰に負担になるので毛皮を敷き森で寝起きする事にした。

地面の上に直に寝るなんて、絶対に寝苦しいと思っていが、意外にも快適で、敷いている毛皮は分厚く何枚も重ねているおかげか、地面の硬さやジメジメ感などは全く感じない。

なので、ついつい寝過ぎてしまう京美だった。



「…………せん」



「す…………せん」



京美は「うーん」と寝返りをうつ。



「すみません……」 



ハッと目覚める京美。

目の前にはコチラを覗き込む様に見つめている男の顔。


「ちょっと!」ガバッと起き上がり怒る京美。

「あんたね、非常識だよ!」

 

「すみません……」

特に表情は変えず、謝る男。


ハァと溜息を付き、ヤーシャ族の為と怒りを抑える。

「あんたはそれ程困ってるって事だよね……」


京美の声に気づき、シロウが「どうした?」と寄って来た。


「この人、相当困ってるみたい」


シロウは男を見つめ「どんな相談だ?」と聞いた。


男は顔をシロウに向け話し始めた。

「……私はポールと申します、探して欲しい女性が居るのです」


「人探しね、もうちょっと詳しく教えて」


ポールは「はい」と返事をし話を続ける。

「私と彼女は国境の屋敷、デイビーズ家に仕えています」


「ミャラッカとバンガの国境だな?ダド湿地の辺りか?」


「はい、そうです、彼女はデイビーズ様が大事にされていた羽飾りを無くしてしまい、責任を感じて居なくなってしまいました」


京美は更に質問する。

「デイビーズが怒って彼女を追い出したの?」


ポールは静かに首振り答える。

「いえ、デイビーズ様はそれはそれは落ち込んでらっしゃいました……しかし彼女を責める事はしていません」


「彼女の名前と特徴を教えてくれる?」


「名はグレース、肌の色は褐色で長い黒髪、瞳は深いブラウンです、性格は責任感が強く、もしかしたら羽飾りを探しに行ったのかもしれません。」


シロウは髪をかきあげると「やってみよう」と言った。


「とりあえず…ダド湿地だっけ? その付近の村の聞き込みとかしてみようか?」

京美の提案に頷くシロウ。


「ポール、任せて早速探してみるよ」


京美のその言葉に、無表情だった男の顔は安心したのか微かに柔らかくなった。


京美とシロウは立ち上がり早速グレース探しの準備を始めた。


忙しく動く二人にポールは話しかけてきた。

「もし、彼女を見つけることができましたら、屋敷を報酬に受け取ってほしいのですが」


「「え!?」」驚く二人。


京美は手を左右に仰ぐように振り

「いやいや、それデイビーズさんの家でしょ? それに報酬はいらないのよ、ウチラ」


「デイビーズ様は別のところにいらっしゃいます、私は屋敷を全て任されていますが、正直一人では管理しきれないのです、もしグレースが見つかりましたらささやかに二人で暮らしたいと思っています」


京美はどうしようか?と悩む。

「とりあえずその話は保留で……今はグレースさんを見つける事に集中するよ」


ポールは頭を下げ

「すみません……お願い致します」と言った。

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