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プティ

あの後、直ぐにデカは目を覚ましトボけた声で


「あれ御頭? おはよう御座います」

と言ってみんなを沸かせた。



焚き火を囲み、デカの快気祝い。

ヤーシャ族は生肉でも、調理済みの肉でもいけるらしく

枝に丸々肉を突き刺し火に当てている。

溢れ出る肉汁が火に落ちるとジュウジュウ音を立てた。


大きな樽に入った果実酒、中に入っている果実は見たこともない形であったが、香りは甘くまろやか

それを浴びるように皆で飲んでいる。


ティムやアリナは聖獣に寄りかかり小さな串に通した肉を頬張っている。傍らには果実を絞ったジュース。



「世話になったな、ガンガンいってくれ」

白の一角は片手に木で出来たカップを持って京美に渡した。


「お、頂くよ」と受け取りグイッと口に含む。

ほんのりとした甘さ、その後にライチの様なフルーティな香りが鼻を抜ける。


「美味しいねこれはー」


白の一角はその言葉には答えなかったが

「俺はシロウ、お前はなんて言うんだ?」と言ってきた。


京美は一瞬なんの事かと思ったが、白の一角は名前を名乗ったのだとわかった。

「私は京美、しかしヤーシャ族の名前って覚えやすいね」と笑った。


「本当は長い名前があるんだが、自分達で呼びやすいあだ名を付けているんだ」


京美は「へぇー」となって

「じゃあ、デカのほんとうの名前はなんなの?」

と聞いた。


二人の視線の先にはデカが肉にがぶりつこうとしていて、噛み付いた直後は熱かったらしく唇を触りハフハフさせている。


シロウはクッと笑いながら

「ピエール ド プティ」


「プティ!? 全然イメージじゃないよデカでいいわ」


シロウは「だろ?」と言った。


「治癒草見つかったし、お父さんの疑惑晴らせそうじゃん」


「その件なんだが……」


「なんかまだあるの?」


「俺達は城に近づけない、なにせ王を病にした犯人一味だと思われてるからな……」


「うーん、シロウ達イメージ悪いもんね、何かあった時、悪者扱いされるのは仕方ないっていうか…まぁ私もそうだけどさ」


シロウは納得いかないようで

「どういう事だ?」と聞いてきた。


「見た目とか態度がイキってるというか、周りを萎縮させてるんだよ無自覚に。私も怖がられる事が多くてさ何でなんだろうと思ってたんだけど、シロウ達見てたら納得できた」


シロウはちょっとイライラした様子で

「それと、俺達が城に入れないのと何が関係ある?」

と言った。


まぁまぁと落ち着かせる京美。

「シロウ達が悪さをしない人達だと評価してもらうしかない、向こうに『是非城に来てほしい』って言わせる、それしか無いね」


「どうすれば……?」


「私に考えがあるよ」

京美はニヤリとした。


「教えてくれ!」


京美は手に持ったカップをクルクル回し

「今日はとりあえず楽しもう、明日、みんなに伝えるよ」

と言った。

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