歌声
長い夜はいつの間にか終わりを告げていた、
そして─フタツ面の森に光が差し込み始める。
京美は協力するとは言ったもの
持っている情報は
実際に見た治癒草の形とその効果位しかなく
役に立つのだろうか?と不安になった
しかし、今はデカイアイツを助けたい。
このままじゃ夢見が悪い。
「私は治癒草に助けられてる、そこの子も助かってる」
ティムは腕組みをしてウンウンと頷く。
「実際に存在するのは確かって事か…俺達は虱潰しに森を探してたんだが、残る場所は聖獣の住処位と目星をつけていた」
「それで、この服の模様を気にしてた訳ね……」
「あぁ……実際に聖獣はどこからか現れてくれたが、それでは場所は絞り込めない…治癒草の場所は宛が外れたな。」
「この子から向かってきちゃったらからね……治癒草の形は何処にでもある、こういうギザギザした草だった」
京美は落ちていた枝を拾い地面にカリカリと描いてみる。
「これじゃあ見つからねぇ筈だ、何処にでもある形じゃねぇか」
頭を抱える白の一角。
「ティム何か知ってる事はない?」
首を振るティム
「すみません……僕は助けてもらっただけで、わかる事は無さそうです……お役に立てず申し訳ないです」
『………。』
─重い空気どん詰まり、皆が押し黙ってしまった。
「〜♪〜♪」
突如、京美のポケットから渋い男の歌声が流れる。
「あ、ごめん…こんな時に」
IZAWAアラームをサッと止める。
『!!』
みんな京美の方を向いて驚愕の表情。
「え!? 京美さんその四角くて黒いのなんですか?中に男性を閉じ込めていたりします?京美さんならやり兼ねないですよね」
あーん?と眉間に縦ジワを作りながら京美は答える
「何ってケータイだよ? あ、そっかこっちの世界には無さそうだね……」
あっ!!!京美は思い出した。
あの時、記念に撮った写真、
ホタルもどきの光つまり治癒草の光そして轢き逃げ現場。
もしかしてと……タップしスクロールする。
「ここにあったよ!手掛かり!!」
小さい画面をみんなで覗き込む。
「これは! 凄い精巧。凄腕の芸術家が描いた作品ですか?」
「違う違う!これは写真と言って……あーもう、面倒くさい!」
京美はその場で立ち上がると。
パシャ!っと撮影した。
しゃがみ込んでこちらをポカンと見ている
白の一角、ティム、アリナの写真
携帯画面を3人に見せる。
「わあ!」
アリナが珍しく声をあげて驚いた。
「これは? 今の俺達の姿?」
「そう、ここに場面を記憶出来るんだよ。さっき見せたのは私が収めた治癒草の姿」
「もう一度見せてください!」
3人は立ち上がり京美の携帯を覗き込む。
治癒草、轢き逃げ現場と思い込んでいた時の写真
交互にスワイプして見比べる。
「おい……わかったぞ!」
白の一角は嬉しそうに言った。




