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リハーサル前

 舞台の中心、枯れかかった大樹の麓には、純白の華やかな衣装に見を包んだ天族達がレナを中心にして集まっていた。

パッと見た感じは打ち合わせをしている様にも見えた。しかし、そこに居る天族達の表情は固い。

『公演の時間が近づいてきている』その緊張から顔が強張っている訳では()()()()()


()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

だから強張った表情をしているのだ。


レナは何処かへ行こうとする天族の男を引き止めている。

「待って。今探しに行ったらリハーサルに間に合わない」


「しかし……! 本番の時にフィリップ団長が居ないなんて事、今迄無かっただろう? 何かあったのかもしれん……! 探しに行った方ががいいだろう? 俺は端役だ。いても居なくても、そう変わらん」


「いいえ。一人でも人数が欠けたらフォーメーションが崩れてしまう……それではリハーサルの意味が無いわ。本番の時間も近い……完全な状態で行うべきよ」


「しかし……!」


「きっと……団長がここに居たら『公演を……お客様を大事にしなさい』と仰るはずよ」


どうやら、今からフィリップを探しに行くかどうかで揉めているようだ。

京美は天族達に歩み寄りながら、心中で『自分が探しに行けばいい』と既に決めていた。


「ねぇ! 私が……探しに」

今まさに天族達に向かって声を掛けようとした瞬間。背後から何者かに肩を叩かれた。


「えっ!?」

咄嗟に後ろを振り向くと、そこには見覚えのある男の翼と後頭部。京美が何か言う前より先に深々と頭を下げていた。


「ねぇ……ちょっと……」


「こんな大事な日に遅刻してスンマセンでしたぁっ!!」


「ちょっと……アダム……」


「昨日、遅くまで大きな仕事があり! どぉーーーーしても朝起きれませんでしたぁっ!!!」


この間、アダムは頭を下げっぱなし。

本気で申し訳無いと思っているのか、それともこれから()()()()()()()に備え身を屈めているだけだろうか。


──いや、悩むまでも無くきっと後者だろう。

絶対に間違いない。


「オレは遅刻しないつもりだったんです!! 許して下さい!! 絶対に怒らないでください!!」


やっぱり思った通り。

自分可愛さに身を屈めていただけの様だ。


京美は下がりっばなしの金髪巻き毛の後頭部を”よしよし”と撫でた。


「へっ?」

アダムは京美の予想外の行動に驚き、何が起きたのか?と思わず顔を上げる。


そこには女神の様な微笑みを称える()()がいた。

優しく微笑んではいるが、触れてはいけない凄味がある。


しかし、アダムはその凄みには気が付かない。

気づく事が出来ない。


「きょうみ! 許してくれるんだな!?」

パァァァ〜

御目出度い男アダムは、オモチャを与えられた子供のように笑った。


「いいえ」


「……へっ!?」


京美はガッシリとアダムの翼を両手で掴むと思いっきり引っ張った!


「ギャーーーー!!」

ブチブチブチと音がして、風に乗った数枚の羽が客席にまでフワフワと漂い、公演を待つ一人の国民の手のひらに落ちた。


「お? 何だコレ……羽?」


「天族のじゃないか? きっとリハーサルが始まったんだろう」


「そうか、楽しみだな」

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